自分で波を読むって楽しい(サーファー的気象学⑩)

サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。

本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。


サーファー的気象学

最初に

これまで9回に渡り、波の予想に関する説明を展開してきました。
どの回も、とても基本的で大切な内容が大半を占めていましたが、波に対する考えが少しでも変わりましたか?

今回は、自分で波を読むことによってどんな変化があるのかを、私の経験ベースではありますが具体的に説明します。
大きく分けると、以下の変化がありました。

1.気象に詳しくなる。
2.それまで単調だった “波を見る” という行為が、“予想した結果の答え合わせ” になる。
3.予報資料 + 実際の波 + 波に乗る足裏の感覚という3点セットのデータベースが脳内に蓄積されていく。
4.自然のリズムを知る。
5.いい波を今までよりも当てられるようになる。

1.気象に詳しくなる

サーフィンのための波を予想するには、一定の気象の知識が必要な事は前回までで説明済みですが “気象を勉強しなきゃいけない” や “気象に詳しくないと波の予想ができない” と考えるのは正しくありません。

正しくは、“自分がサーフィンを楽しむために波の予想を始めたら、気が付いたら気象に詳しくなっていた” が正解です。

私はサーフィンを始めて3年目くらいの頃、当時まだ初心者だったので他より波が小さい、安全だけどサーフィンに向いている波を予想したい一心で自分向けに波予報を始めました。
最初から道具(知識)をそろえてから挑む!といった意識は無く、小さくて安全な波を予想して当てるのが楽しくて楽しくて、気が付いたらその3年後に気象予報士という資格を取得していました(笑)。
波を当てる楽しさを、他の初心者・初級者の方の役に立てられればという思いが途中から湧いてきたこともこの頃でした。

「この風はなぜ吹いているのか?」
「この風は今後どうなるのか?」
「このうねりはどこから来て、いつまで続くのか?」
といったありがちな疑問を自身で即答できるようになる。それが波を読む醍醐味の一つです。

出展:気象庁HP

2.それまで単調だった”波を見る”という行為が、“予想した結果の答え合わせ”になる

現時点で多くのサーファーがそうであるように、“波を見る” という行為は単なる波チェックであり、どんな状況かの確認や今そこでサーフィンするかの判断基準になります。
波を予想している立場ではそれが少し変わり、自分が予想した結果の答え合わせになります。予想通りだった場合はその予想したストーリーを記録し、予想とはかけ離れていたらその理由が知りたくなります。このサイクルをなんとなく繰り返していると、波を読むために大切な基盤が知らず知らずのうちに構築されます。いつも気が付けるわけではないのですが、あるタイミングで明らかに変化した自分に気が付きます。

3.予報資料 + 実際の波 + 波に乗る足裏の感覚という3点セットのデータベースが脳内に蓄積されていく。

上記の、“波を読むために大切な基盤” がまさにこれです。
予報資料 + 実際の波 + 波に乗る足裏の感覚という3点セットが無限に皆さんの脳内に蓄えられて行きます。
昨今有名なAIなどの機械分析基盤も母数となるデータが必要ですが、この3点セットを蓄えられた量が波を読む精度に直結します。

4.自然のリズムを知る

サーフィン歴が長い方は、
・ 海水温度の季節変化
・ 季節ごとの波の特性
・ 各サーフポイントやサーフエリアの良い年とそうでない年
など、すでに海のリズムは身についていると思います。

波を読むための知識が加わると、その背後にある気象のリズムの知識も加わり、海のリズムをより深く理解できるようになります。
当然のことながら、このリズムは大小さまざまなものが複雑に絡み合っていますが、ほぼ全てのリズムに共通しているのは、“地球自身が造り出している” ということです。
時に人の想像が追いつかないリズムや、今までのリズムを大きく覆すリズムもあります。
でも、そんなことも含めてリズムと思えるようになると、より楽しい波予想が待っています。

出典:気象庁(オブジェクトを重ねて加工)

5.いい波を今までよりも当てられるようになる

最後の変化はこれです。
気象に詳しくなり、どんどんデータベースが蓄積され、自然のリズムを理解できるようになると波を読む技術が向上し、いつものホームポイントに限らず、良く行くエリアや海外なども応用できるようになります。

自分が論理的かつ統計的に予想した “良い波” に自分が乗る・・・、これ以上の幸せは無いんじゃないかというくらいハッピーになれます。

これは私の体験談ですが、一人でも多くのサーファーのハッピーに貢献したく、いくつかのポイントを記事にしてみました。

今回のポイント(終わりに)

今回はポイントというよりも、体験談です。

●波を読む技術はサーフィンを変えてくれました。
●波を読む技術はサーフィンをより楽しくしてくれました。
●波を読む技術は少しだけ幸せにしてくれました。

波予想に興味をお持ちの方は、ぜひ参考としてみてください。ありがとうございました。

(Kazy)


【サーファー的気象学】
第1回:数値予報資料のトリセツ
第2回:大気の立体構造をイメージする
第3回:高気圧からのうねりを見抜く
第4回:うねりが入りやすい高気圧の位置
第5回:停滞前線上のメソ低気圧のうねり
第6回:低気圧の位置ごとの波予測
第7回:実践“低気圧のうねり”特集
第8回:台風の嘘ホント
第9回:教科書では教えてくれない台風のうねり
第10回:自然で波を読むって楽しい

この記事に 関連するタグ

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。