教科書では教えてくれない台風のうねり(サーファー的気象学⑨)

サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。

本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。


サーファー的気象学

最初に

サーフィン向けの台風のうねりの知識には、台風の基本的な知識とそのうねりの特性を理解することが必要です。
今回は、
・台風の構造
・台風までの距離とうねりの特性
・台風の進路とうねりの特性
の理解にフォーカスを当てて説明します。

台風の構造(垂直)

まずは台風の垂直構造です。このように台風の垂直構造は外側に向かって空気の上昇と下降が繰り返される構造になっています。ここで最も大切なのは下層収束、上層発散です。

下層=主に海面では台風の中心に向かって風が収束しており、上層=大気上空では逆に外側に発散する方向に風が循環しています。

台風の構造(水平)

次に台風の水平の風構造です。ここでは大気下層と上層に分けて書いています。重要なのは、大気上層(衛星画像での雲の動き)です。

衛星画像ではその性質上、大気上層の雲の動きが良く見えます。その雲の動きが海面での台風の風と勘違いしてしまいがちですが、実際はほぼ逆の風が吹いています。その理由が下層収束、上層発散です。

大気下層(海面)では反時計回りの風向で風が中心に向かって集まり(収束)、中心に集まった空気は海面には潜り込めないので上昇します。それが大気の上端にぶつかり、時計回りに吹き出します(発散)。

衛星画像の雲の動きは風や台風の強さを判断するのに貴重な情報で、さらにその判断の精度を上げるためにこの原理の理解が重要です。

大気上層(衛星画像の雲の動き)
大気下層(海面と接する)

台風までの距離とうねりの間隔

例えば下記のような二つの台風がありますが、このそれぞれの台風からのうねりが届くとした場合、いったいどれくらいの時間がかかるでしょう?

※周辺海域の状況によりうねりが届く届かないも含めて変動しますので、あくまで目安としてください。

画像にある赤線の長さである房総半島から四国の足摺岬までの距離がおおむね1日と考え、台風の少し外側(風浪がうねりになるまで距離が必要なので)までの距離を測ると概ねの到達日がわかります。

上記例だと約2日
出典:気象庁(オブジェクトを重ねて加工)
上記例だと約3日半
出典:気象庁(オブジェクトを重ねて加工)

台風の進路とうねりの特性

台風の進路とうねりの特性ですが、ケースバイケース過ぎて一概にこうっていうのが実は無いんです。はっきり言えることは下記2点のみです。

① 台風中心からの離れるほどうねりの周期が長くなり、接近すればするほど風浪になる。
⇒台風がまだ遠い時は、セット間が長くアウトに出やすい。
⇒台風が接近すると、うねりというより単純に荒れた海になる。

② 色々な方向と大きさのうねりが混在していて、接近すればするほど、いろんな方向のうねりが入る
⇒台風が接近した時は、湾の奥にある普段全く波が立たないポイントでサーフィン可能になる。
⇒ある方角からのうねりにしか反応しないポイントでも台風が接近した時は大きな波が来る。

今回のポイント

●台風の距離でうねりが届くまでのおおまかな日数とうねりの間隔(セット間)が算出できる。
●うねりは台風の中心で発生して届くのではなく、風が強いところで発生して届く。
●台風にはいろいろな方向のうねりが大中小複雑に存在する。
●衛星画像に写る台風の雲の渦の動きを見るときは大気上層の雲か大気下層の雲かを見極める。

次のシリーズ最終回は「自分で波を読むって楽しい」をお届けします。

(Kazy)


【サーファー的気象学】
第1回:数値予報資料のトリセツ
第2回:大気の立体構造をイメージする
第3回:高気圧からのうねりを見抜く
第4回:うねりが入りやすい高気圧の位置
第5回:停滞前線上のメソ低気圧のうねり
第6回:低気圧の位置ごとの波予測
第7回:実践“低気圧のうねり”特集
第8回:台風の嘘ホント
第9回:教科書では教えてくれない台風のうねり
第10回:自然で波を読むって楽しい

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