ローカルサーファーらのビーチクリーン

「サーファー達が町を支える」糸魚川市のビーチクリーンと行政との連携(新潟県糸魚川市)

シリーズ「サーファー達が町を支える」全国ローカリズム事情⑤


サーフポイントという自然豊かなローカルな場所だからこそ抱える、過疎化や津波などの災害対策、観光復興などの様々な課題に対して、地元のサーファー達が地域と連携し、海岸周辺の課題解決に一役買っているケースも少なくない。

しかし地元サーファーの活躍や功績は、これまで大きく取り上げられることはなくあまり認知されていない現状がある。
この企画は、それら地元サーファーの活動を訪れるサーファーにも改めて伝えたい、そんな思いから始まった。

シリーズ第5回は新潟県の最西端に位置する「糸魚川市」。各地のサーファー達の活動を紹介したい。


サーファー達のビーチクリーンは全国で行われているが、新潟県糸魚川市のビーチクリーン活動は、自治体の評価を受け地域美化活動のボランティア制度「環境美化パートナー」として継続される中、地元ローカルサーファーばかりではなく、県外サーファーや地元漁師の参加も得て、2022年度より糸魚川市の「環境審議会」メンバーに加わることが決定。

今後は市内のクリーン活動全体の問題点や、参加団体の課題解決などにも積極的に関わっていく立場となり、ビーチクリーンを行う傍ら、サーファーとしての意見を届けやすい環境を作り上げてきた。

糸魚川市は海岸線にして約51km。決してサーファーが多いエリアとは言えないが、一つの参考事例として、その過程を紹介したい。

ローカル/ビジターが連携するビーチクリーン。地元漁師も一緒に活動

糸魚川市におけるローカルサーファーのビーチクリーン活動は、10年以上の歴史がある。主な実施期間は4月~11月、当初は地元サーファーら数名の規模でスタートした。
その土地柄、積雪がある時期のビーチクリーンは難しいが、冬場は海水浴場のトイレ清掃を行うなど地道な活動を続けていた。

そのような地元サーファーの活動に賛同し、数年前より共にビーチクリーンを行っているのが、NSA(日本サーフィン連盟)長野支部である。

NSA長野支部の登録メンバーは主に長野県在住者でビジターという立場になるが、共に活動することで地元サーファーらとコミュニケーションを取ることができる。
また、支部としては各メンバーに地域のルールやマナーを啓蒙できるため、地元サーファーらもこれを受け入れている関係だ。

現在、糸魚川市のビーチクリーン活動は、地元サーファーらとNSA長野支部とで、主な担当ビーチが分かれているが、毎月の清掃は時刻をずらして開催されており、両方の活動に参加するメンバーも増えているという。ローカル/ビジター問わずサーファー同士が交流し、情報交換もできる、そんな役割も果しているのだ。

サーファー同士のコミュニケーションが取れるビーチクリーン

また、日ごろ回収するゴミには漁具も多く見られることから、地元漁師の皆さんにも声掛けを行ったところ快く賛同を得られたという。

2022年3月に実施した清掃活動には、漁協組合青年部に所属するサーファーが橋渡し役となり、悪天候の中でサーフィンをしない漁師の皆さんも多数参加。

清掃活動はもとより、普段はあまり接点がないサーファーと漁師の皆さんとの交流もまた大きな意味があり、お互いの意見交換も含め良いコミュニケーションとなった。

悪天候の中、サーフィンをしない漁師の方々も清掃活動に参加。
サーファーの枠を越えてまた交流が広がっている。

個人の集まりではなく正式団体からの声を。糸魚川サーフユニオンの発足

糸魚川市のビーチクリーン活動がここまで広がりを見せたのは「糸魚川サーフユニオン」の発足も大きな要因といえる。

ユニオンの発足は2014年。当時問題となっていた百川海岸への消波ブロック投入問題に対して声を挙げるために発足した。

このとき、この海岸整備事業はすでに認可が降りていて予算も確定済み、実際に工事が始まっていた段階でありながら、ユニオンの取り組みにより約1ヶ月間で7,000名以上の署名を集めることに成功。

その内容は、やみくもな反対運動ではなく、ビーチを守るための特殊工法へ変更を求めるもの。サーファー個人の集まりではなく、正式団体として方針見直しの声を挙げることができた。

糸魚川サーフユニオンとして集めた署名と嘆願書を市役所に提出。代表の高松氏より直接手渡した。(写真は当時の市議会議員である古畑浩一氏のブログより)

結果的に、この計画の全てを止めることはできなかったが、当初想定よりも消波ブロックの投入数は少なくなり、その後もまだ大きな動きは出ていない。

当時の活動について「サーファーの声が届いた」「最悪の状態に至らずに済んだ」など安堵の声もある一方で、初動が遅れたことを悔やむ声もある。

糸魚川サーフユニオン代表の高松氏は「もっと早く情報が掴めていれば、地域住民や行政にとっても良い提案ができた可能性はある。」と悔しさをにじませ、行政側との連携は課題と感じていた。

新たに設置された消波ブロック。ユニオンとしては人工リーフ工法(潜堤)への計画変更を求めていた。

環境美化パートナーとしての活動~行政とのつながり

その後も定期開催していたビーチクリーンは、糸魚川サーフユニオンで主導し、糸魚川市の「環境美化パートナー」として活動することとなる。

「環境美化パートナー」とは、糸魚川市が推進する地域美化活動のボランティア制度で、その活動計画等を提出することで、清掃活動に必要な(ゴミ袋などの)物品提供や、集めたゴミの収集業務など行政支援が受けられるもの。

本制度には一般企業から自治会まで複数の団体が参加しているが、糸魚川サーフユニオンのビーチクリーンは年間の活動回数も多く、高い評価を受けていた。

そうした実績が認められ、2022年度よりサーフユニオンが糸魚川市の「環境審議会」メンバーに加わることが決定。今後は市内のクリーン活動全体の問題点や、参加団体の課題解決などにも積極的に関わっていく立場となる。

パートナー団体としてビーチクリーンを行う傍ら、サーファーとしての意見を届けやすい環境となるのだ。

クリーンアップメンバーも徐々に拡大、県外在住のサーファーも多く参加
1回の清掃活動でかなりのゴミが集まることも

広がりを見せるビーチクリーンと、その活動が評価され生まれた行政とのつながり。

サーファーが市民権を得て、行政と身近な関係になることで、様々な現状を知ることができ、またサーファー達の声を届けやすくなる。

「現在の活動で感じている課題や問題点は、ぜひ積極的に声を上げていきたい。」とする糸魚川サーフユニオンの動向に要注目。

今後も様々なエリアで行われている地元サーファーの活動と、行政や地域住民との関わり合いを紹介していきたい。

取材協力・写真提供:糸魚川サーフユニオン/NSA長野支部

(THE SURF NEWS編集部)

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