地元サーファーらの有志で始まったビーチの砂入れ作業 Photo:大磯サーフィン協会

「地元サーファーが町を支える」西湘エリアの“津波避難訓練とサンドリサイクル”(神奈川県大磯町)

シリーズ「地元サーファーが町を支える」全国ローカリズム事情


サーフポイントと言えば、一般的な生活圏とは異なる自然豊かなローカルな場所が多い。
地方では過疎化の問題や、海近くであれば津波を含む災害対策など様々な問題をかかえているのも現実と言えるだろう。

一方で、こうした様々な問題に対し、地元のサーファーが地域住民や自治体と連携し、海岸周辺の様々な課題解決に一役買っているケースも少なくない。
しかし、地元サーファーの活躍や功績は、これまで大きく取り上げられることはなく、あまり認知されていないが、今やサーフィンが盛んな地域にとって、サーファーは町づくりにも必要不可欠な存在となっていると言える。

この企画は、普段はあまり表に現れない地元サーファーの活動を、訪れるサーファーにも改めて伝えたい、そんな思いから始まった。本企画の第2弾は神奈川県「大磯町」。各地のサーファー達の活動をシリーズ化して紹介したい。


西湘エリアで定期開催される津波避難訓練とサンドリサイクル

前回の田原市に続く第二弾は神奈川県の相模湾、湘南地域の西側に位置する西湘エリア。
海水浴場の発祥の地としても知られる「北浜海岸(大磯海水浴場)」には、年間を通して多くのサーファーが訪れる場所でもあり、サーフポイントとしての歴史も古い。

また、大磯町では地元サーファーの中心となる「大磯サーフィン協会」が存在し、地域の各団体や行政機関とも連携。昨年11月には、神奈川県と大磯町が主催する大規模な津波対策訓練が実施され、地元サーファーらの協力のもと本番さながらの訓練が行われたのは、記憶に新しいところ。

サーファーが参加した大規模な津波避難訓練

令和元年11月9日、大規模な地震発生時の津波対応力を高めるとともに、関係機関の連携体制を検証、沿岸住民や行楽客への普及啓発も目的とする、大規模な津波対策訓練が実施された。

この訓練には、大磯サーフィン協会もボランティアとして協力。 訓練当日は当サイトTHE SURF NEWSも取材にあたったが、津波警報発令時に、実際に海に入ってサーフィンをしている場合はどのように避難するのか、小さな子供とビーチで遊んでいる場合などはどうか、いくつかのシチュエーションを想定したサーファー達が訓練に参加。
避難経路や、避難にかかる具体的な時間などを検証した。

2019年6月に完成した避難タワー。大津波警報発令の合図 “オレンジフラッグ” をかかげ、ここに避難するまでの時間なども検証 Photo:THE SURF NEWS
陸上自衛隊や海上保安庁などの国機関、警察、消防などが一同に集まり、その連携体制も検証  Photo:THE SURF NEWS

海岸浸食問題の現実

また近年は、大磯港をはさんだ西側を中心に海岸の浸食問題が深刻化。現在は専門家を交えての対策が実施されており、数年をかけて「幅30mの砂浜をつくる」独自のプロジェクトが進行中、その効果が期待されている。

しかしこの浸食問題は、大磯港をはさんだ東側、大磯海水浴場(北浜海岸)付近も例外ではなく、海岸付近の砂は年々減少傾向。特に台風が通過した後はビーチに沢山の砂が溜まり地形が深くなりやすい。
サーファーにとっての波がブレイクしづらい状況となるばかりか、浅瀬が少なく水深が急に深くなる地形は、夏の海水浴客にとっても危険な状態となっていた。

地元サーファーの有志で始まったビーチの砂戻し作業

台風通過の影響等で溜まるビーチの砂は、これまで大磯海水浴場とは異なるビーチまで運ばれ使用されていた。
そこで地元サーファーらが立ち上がり「大磯の砂は大磯に戻す」という活動を開始。溜まった砂を集めてはまた海に戻す、地道な作業ながらも使用する重機のレンタル代やガソリン代など、1回の作業にかかる費用は数十万円。これを地元サーファー達の有志で負担し、定期的に行われていたという。

ビーチに大量の砂が溜まり、波打ち際はどんどん深くなり高低差が生まれている状態。Photo:大磯サーフィン協会
Photo:集めた砂をビーチの最西に投入、あとは自然の海流で波打ち際に砂をつけていく。Photo:大磯サーフィン協会

このような地道な取り組みが行政に認められ、その後この活動は神奈川県が引継ぐこととなる。現在、砂入れの工事は平塚土木事務所が請け負い、大磯サーフィン協会は代わりにビーチの水深測定を年に2回実施。これはサーファーと行政の信頼関係で実現されており、お互いに情報の共有ができているという。

サーファーと自治体のコミュニケーション

また、大磯には港の資源を最大限に活用し、魅力的で活力のある町づくりを推進する「大磯港まちづくり協議会」というものが存在する。
地元の町内会や観光協会、漁業共同組合や土木管理事務所など様々な団体が所属し、大磯サーフィン協会も参加。定期的な意見交換が行われている中、サーファー目線による様々な提案も行なっているという。

例えば、大磯港に隣接する「港公園」には、町民に人気のプール施設(ポートハウスてるがさき)があるが、この営業期間はGW~9月末まで。
しかしサーファーは年間を通して訪れるため、大磯サーフィン協会はプールの営業期間外でも温水シャワー施設の開放を提案。
有料施設ではあるが、遠方から訪れるサーファーにとってはとてもありがたい施設といえるだろう。

「ポートハウスてるがさき」のシャワー施設 Photo:大磯町 産業環境部 産業観光課 みなと推進係
温水シャワー&更衣室は冬場のサーファーにとてもありがたい施設 Photo:大磯町 産業環境部 産業観光課 みなと推進係

現在の課題とこれから

大磯サーフィン協会の柏原氏は、今後の課題の1つとして、海や施設を利用する方のマナー向上を挙げた。
具体的には、大磯のメインビーチに設けられているシャワー施設はサーファーも気軽に利用できるが、乱暴な扱いも目立っており蛇口などは毎年すぐに壊されてしまうという。

また、サーファーばかりが対象の話しではないが、ビーチや高架下でのBBQ(※)問題が尽きないことやゴミ問題もしかり、地域や行政がサーファーに協力的だからこそ、さらなるマナー向上を促し今後も来場者の意識を変えていく必要がある。
※大磯海水浴場は全域でBBQは禁止

さらにもうひとつの夢として、将来的には地元小学校の教育の一環としてサーフィンを取り入れる仕組みを作りたいとも語ってくれた。
そのような環境を実現するため、まずはサーファーがお手本となり良い環境を作っていかなければならない。

大磯在住、ミー・イシイ氏のイラストが描かれた町営シャワー。残念ながら毎年のように蛇口が壊されるなどの問題があるという。Photo:THE SURF NEWS

海や港を中心とした町づくりにサーファーが積極的に関わり、海岸環境のさらなる改善や海の利用者のマナー向上を呼びかけている大磯町。

今後も様々なエリアで行われている地元サーファーの活動、行政や地域住民との関わり合いを紹介していきたいと思う。

取材協力:大磯サーフィン協会

(THE SURF NEWS編集部)

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