数値予報資料のトリセツ(サーファー的気象学①)

サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。

本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。


サーファー的気象学

最初に

サーファーが“波を予想する”うえで、参考となる情報は多数ありますが、一般的な波予想で最も手軽に使用されているのは「数値予報」ではないでしょうか。

今後の波高や風力は何メートルなのか、その数値を時系列で見るものもあれば、地図上の各地点に色を付け、分かりやすいビジュアルで表現されているものなど、数値予報は様々な形で利用されています。

しかし、ひとことに「数値予報」といっても、我が国が誇る『日本の気象庁版GSM』を筆頭に、現在はとても有名なWindyが使用している『ECMWF』など、世界には公式非公式含めてたくさんの数値予報モデルがあります。

今回はサーファー的視点でこれらの数値予報モデルを整理し、どんな付き合い方をして行くことがオススメかを説明したいと思います。

なお、本記事は私が過去に5000日以上サーファー向けの波の予報をしてきて、その統計的にどうであったかという“数字に基づいた結果”を掲載しています。

この記事を閲覧されているたくさんの方々、それぞれの思いがあると思いますが、この記事は“私個人の思い”ではなく、上記の“数字に基づいた結果”を掲載していますことをご了承ください。

数値予報モデルの種類

世界中にはたくさんの数値予報モデルが存在し、さらにそれぞれの数値予報モデルが様々な出力インターフェース(画面)で利用者に提供されています。

公式として公開されているだけで、少なくとも下記の数値予報モデルがあります。この他にも公式/非公式(実証検証中)含めてたくさんの数値予報モデルが存在します。
※予報期間や内容、メッシュ(最も細かい区切り)の細かさにも違いがあります。

サーファー向け波予報観点で見る各モデル

まず前置きとしてですが、すべての数値予報モデルは、平均的な波/うねりの推移は精度が高いです。ですが、
・遠方からのうねり
・弱まりつつあるうねり
・強まりつつあるうねり
・速度が速い擾乱による波/うねり
・遠方からのうねりの経路上に別の擾乱がある時の波うねり
といったケースでは極端に精度が下がります
その前提でそれぞれの特徴について触れます。

どれを見ればよいのか?

では、サーファー的視点でどれを見ればよいか?
サーファー的視点=『うねり、波浪、局地的な風予報』の3つに特化した観点で回答します。

結論から申し上げると、上記の表のとおり各モデルの特徴はそれぞれあるものの、「精度」、「うねり、波浪、局地的な風」に特化した情報は、はっきり言って各数値予報モデルに差が無いと言えます。

上記表の内容を要約するならば、気象アプリWindyのECMWFモードではECMWF-IFSをもとに世界中の波予報を10日先まで出しています。
また、波浪の予報としては16日先までという予報期間を誇るのはNCEP-GFS(WAVEWATCHⅢ)ですが、他のモデルが出していない期間の精度は極端に下がります(一定の目安にはなるため、私もデータは参照しています)。

UKMO-UM(Global Wave Model)も独自ロジックで世界中の波予報を出していて、北大西洋~北欧エリアの予報では特に、独自のロジックが生かされていているように見えますが、CMC-GEMモデルとこのUKMO-UMは他のモデルと比較して波浪予報期間が5日先と短いです。
(FNMOC-NAVGEMは元になっているモデルはWAVEWATCHⅢです)

そして気象庁では、全球波浪数値予報モデルGPVという世界中の波予報を10日(最長11日)先まで予報しています。
予報期間という意味では、ECMWF-IFSやWAVEWATCHⅢよりも短いですが、精度は他のモデルと変わりません。

長期(6日以上先)の波予報を見る場合は、
・欧州中期予報センターのECMWF
・US NOAAのNCEP-GFS(WAVEWATCHⅢ)
・気象庁(沿岸波浪数値予報モデルGPV)
が向いていますが、データの精度という点においては、各モデルに大きな差はないといえます。

また、天気図の書き方自体が異なる海外のデータを見ることで、日本の天気図にはまだ表れていない台風のたまご(熱帯低気圧)をイチ早く見つけたり、台風の進路予想として、気象庁とは異なるコースの可能性を探ることなどはできますが、どのモデルも外すときは外し、当てる時は当てます。

実際に数値予報モデルを評価する方法もありますが、日ごとの精度を1年間検証しても、平均すると各数値予報モデルの差が無く、甲乙つけられずといった状況のため、私の経験上は気象庁の数値予報モデルのみを使用することをオススメします。

気象庁の数値予報モデルを推奨する理由

気象庁の数値予報モデルを推奨する理由は、“数値予報モデル以外の情報が豊富で、大気の立体構造をイメージしやすい” ためです。

世界中および日本近海の波浪については、気象庁ならではの下記の要素を出力しています。

【世界中】
全球波浪数値予報モデル風浪・うねりGPV
波浪アンサンブルモデルGPV

【日本近海】
沿岸波浪実況格子点資料
沿岸波浪24時間予想格子点資料
沿岸波浪数値予報モデルGPV
沿岸波浪数値予報モデル風浪・うねりGPV

最近はUI(画面)ばかりが目立ってきて、いかに斬新で見やすくするかを競っているようにすら感じます。
しかし、サーファー的視点を養うには、数値予報モデルを見るだけでは足りなくて大気の立体構造(三次元構造)を理解しなくてはなりません。

例えば衛星画像を見慣れてくると台風や低気圧および高気圧といった擾乱(じょうらん)がどのくらいの勢力なのかを見抜けたりします。
それと観測値(アメダス)や数値予報資料を脳内で照らし合わせると大気の立体構造が理解できるようになります。
これができるかできないかで波を予測する技術に極端に差が出ます。
難しいと感じるかもですが、続けていると身につきます。

日本の気象庁には世界に誇る衛星画像や観測技術/観測データ、およびそれに基づく数値予報の補正技術があります。他の数値予報モデル提供団体よりも大気の立体構造をイメージするための材料が揃っているので、私は気象庁の数値予報モデルと、その他の気象庁が提供しているコンテンツを見ることを推奨します。

今回のポイント

●どの数値予報モデルが当たる/当たらないは無い。
●数値予報資料は単に見るだけでは足りない。
●サーファー的波予報視点では、脳内で大気の立体構造をイメージできるようになることが大切。

次回は「大気の立体構造をイメージする」をお届けします。

(Kazy)

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