実践“低気圧のうねり”特集(サーファー的気象学⑦)

サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。

本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。


サーファー的気象学

最初に

今回は実践的な低気圧のうねりについて説明します。

冬の天気図では“西高東低”の冬型の気圧配置が多くなりますが、この“東低”すなわち東海上に進む低気圧により、北東うねりに反応するサーフポイントにうねりが入る機会が増えます。

東海上に進んだ低気圧からのうねりがどんな時に入るのか?
エリア的にはどのエリアにうねりが入るのか?
それらをどうやって見抜くのか?についてお伝えします。

冬はどの季節よりも安定してうねりが供給される

西高東低の気圧配置は、温かい南海上の空気を高緯度へ伝播させるために地球自身が作り出す気圧配置です。

台風は進路が一定でなく、発生が年によって多い/少ないがありますが、西高東低は冬に必ずこの気圧配置になり、長い期間持続するのが特徴です。この西高東低の気圧配置の“東低”、すなわち“東海上の低気圧”により、千葉以北の太平洋側のサーフポイントに安定したうねりが供給されます。

出展:気象庁HP

うねりの流入原理

太平洋側へのうねりの流入という前提で説明します。
もっとも基本なのは低気圧の傾圧帯と呼ばれる等圧線が混んでいるところで強風が吹いていて、南~西向きのこの強風ゾーン(下図の赤色のエリア)が存在するということです。

ただし低気圧によってはこの南~西向きの強風ゾーンが存在しないケースもあります。
これは有効なうねりを見分けるのにとても重要な基本事項なので、覚えておくと便利です。

低気圧の移動速度が重要

次にとても大切な要素がもう一つあります。
それは、この低気圧の移動速度です。下の図では15KT≒時速30kmで東に進んでいます。

この図を見てわかる通り、東への移動速度は西向きの強風をかき消しているのがわかるでしょうか?
相殺されているようなイメージです。仮に強風ゾーンで西向きの50KTの風が吹いていても、実質は35KTの風になってしまいます。
遠くまで伝わるうねりを生成するには、出来るだけ速度が遅いか、速度が関係無いくらい風速が強いかのどちらかが重要です。
これもとても重要なことで、しかも見慣れていないと判別できません。

あまり期待できないケース

東海上に大きな低気圧が抜けていても、期待できないケースもあります。
例えば下図のように、低気圧北側の等圧線の間隔が広い(=風が弱い)ため、南~西向きのうねりを発生させる強風域が存在しないケースなどです。

こんな理由で?うねりの向きが変化する

少し難しい話をします。
例えばバスタブなどでお湯の面をフゥーーっと息を吹くと波紋が放射状に広がります。
これは一見一方向に吹いている息が、やや外側にも弱く吹き出していて、これが波に現れたものになります。
これが実際の気象でも発生します。

下記の図のように風が同じ方向に吹いていても風速に違いがある場合、外側向きのうねり(下の図の青矢印)が発生します。
風が強ければ強いほど、長い時間吹き続けているほど、このうねりも強くなり、遠くまで伝わるする傾向があります。

「風向き的にはうねり来ないはずなんだけどな、、、なんでこんなに波があるんだろ?」という場合が多いのもこのケースです。

今回のポイント

今回は冬に多くなる西高東低の冬型の気圧配置でのうねりの読み方の基本を実践的に説明しました。
下記のポイントはとても重要な事なので是非覚えてください。

●東海上に抜けた低気圧の傾圧帯(等圧線が混んでいるところ)を常に見つけるようにする。
●東海上に抜けた低気圧の勢力(風速)と速度を常に観察する。
●西高東低の気圧配置で北西風が長期間続く時は風速の違いだけでうねりの向きが変わることがあることを意識する。

次回は意外と知られていない台風のお話し「台風の嘘ホント」をお届けします。

(Kazy)


【サーファー的気象学】
第1回:数値予報資料のトリセツ
第2回:大気の立体構造をイメージする
第3回:高気圧からのうねりを見抜く
第4回:うねりが入りやすい高気圧の位置
第5回:停滞前線上のメソ低気圧のうねり
第6回:低気圧の位置ごとの波予測
第7回:実践“低気圧のうねり”特集
第8回:台風の嘘ホント
第9回:教科書では教えてくれない台風のうねり
第10回:自然で波を読むって楽しい

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