約200人が訪れた稲葉玲王の五輪壮行会 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

稲葉玲王、故・小川直久のヘルメットでパリ五輪タヒチへ!「力をもらって金メダルを」

パリ五輪サーフィンの日本代表、稲葉玲王(26)の壮行会が23日、生まれ育った千葉県一宮町で開かれた。会場のホテル一宮シーサイドオーツカに町民やスポンサー関係者ら約200人が詰めかける中、稲葉は、昨年亡くなった小川直久の遺志を継ぎ、同じ柄のヘルメットをタヒチに持参すると声を詰まらせながら宣言。会場は涙と感動に包まれた。

パリ五輪のサーフィンはフランス領タヒチのチョープーで開催。世界屈指の巨大なチューブで知られる。壮行会の参加者は、稲葉がチョープーのチューブを抜ける写真をプリントした揃いのTシャツを着用し、会場入りした。

揃いのTシャツを着た人々で盛り上がった壮行会 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada
日本代表コーチの田中樹プロもチョープーTシャツを着用 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

大原洋人と連続で一宮町から五輪代表

激励に訪れた一宮町の馬淵昌也町長は「重量級の稲葉さんであれば、あのチョープーの恐ろしい波を十分に乗りこなしていただけると思う。大原(洋人)さんは(東京五輪で)あの荒れ狂った釣ケ崎の波で頑張った。今度は玲王さんがあのチョープーの波に乗る。一宮町は12000人しかいない。サーフィンが盛んだと言っても、この町から同級生の2人が引き続いてオリンピックの代表になるのは素晴らしいこと。町長として、この歴史的な瞬間をみなさんとご一緒でき、うれしく思う」とあいさつした。

また、稲葉のメインスポンサーで、アパレルブランド「GOTCHA」を展開する株式会社ピートの赤池順一社長は「コロナで会社として厳しかったが、オリンピックの夢を捨てきれず、会社として一生懸命支えた。必ずやゴールドメダルを取ると確信している」と激励した。

「チューブは一番気持ちいい瞬間」

膝を曲げ、子供たちとの記念撮影に応じる稲葉 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

壮行会には、未来のサーフィン界を担う地元の小中学生も多く駆け付けた。質疑応答タイムでは、期待のジュニア田中志門が、「最も気持ちよかったチューブは?」と質問。稲葉は「まだないんで、このタヒチでオリンピックの時に決めたい」と回答。さらに「チューブの中は言葉で表せない気持ちよさ。生きてて一番気持ちいい瞬間」と答え、会場を盛り上げた。

地元の先輩プロサーファーとして、登壇した田中英義は「オリンピックのプレッシャーはあると思うけど、余計なことを考えないで稲葉玲王を貫いてほしい。悔いなくオリンピックを楽しんで」とはっぱをかけ、花束を贈呈した。

田中英義プロ(右)から激励を受ける稲葉 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

「小川さんのヘルメットと一緒にタヒチへ」

最後にあいさつに立った稲葉は、来場者に感謝を述べ「メダルを日本に持ち帰り、結果で恩返ししたい」と明言。子供たちに対しては「サーフィンをやっていく上で、いろんな理不尽な思いをすると思うが、諦めず、しっかり夢や目標に向かっていれば、人生で1、2回は大きなチャンスがみんな平等に来るので、あきらめないでほしい」と呼び掛けた。

壮行会の最後にあいさつに立った稲葉 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

そして、背後にあるボードにひっかけたヘルメットを指した。

「小川直久さんのヘルメットをタヒチに一緒に持っていかせてもらえることになりました。直さんが現役をずっと最後まで貫いていく姿勢(を見てきた)。世界に日本人が大会で出ていけるようにレールを引いてくれた1人だと思う。オリンピックにも一番行きたかったと思うので、その遺志を継いでというわけではないんですけど、力をもらえたらなと思って。この件に関してはご家族のご理解があってのことなので、本当に感謝しています」

シルバー・バレット(銀色の弾丸)

稲葉のボードに掛けられた「シルバー・バレット」のヘルメット Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

稲葉が言葉を詰まらせると、一瞬の静寂の後、大きな拍手に包まれ、稲葉は「みなさんに金メダルを見せられるようにがんばるので、応援よろしくお願いします」と声を震わせた。

小川は昨年、がんのため51歳の若さで逝去。パイプラインで10ポイントライドを決めるなど、世界にその名をとどろかせた。トレードマークは銀色に赤い筋が入ったヘルメットで「シルバー・バレット(銀色の弾丸)」と呼ばれた。

2001年パイプラインマスターズのインビテーショナルイベントでは日本人初の10点満点をマークした小川直久 Photo:snowy
小川のヘルメットについて語った後、壇上を後にする稲葉 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

一瞬で死が待っている波

壮行会終了後、稲葉は報道陣に対し「(壇上から小川の)ご家族が目の前で泣かれているのが見えて、泣いてしまった」と吐露。ヘルメットは「オーダーで同じ柄をつけてもらって、自分のサイズにした」という。「チョープーは危険で、一瞬で死が待ってる波。ヘルメットをかぶることで、命が守られる。できるだけかぶりたい」「(小川は)同じ千葉県で、プロサーファーのリーダーというか、みんなを引っ張ってくれた存在。オリンピック側が出すヘルメット(をかぶる)という話もあって、ちょっとわからないけど、現地に持っていくことでパワーがもらえたらと思う」と、静かに闘志を燃やした。

小川モデルのヘルメットを手にする稲葉 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

チョープーは15歳で初めて挑み、巨大な波に恐怖ですくみ、乗れなかった思い出がある。昨年、今年と計7回練習に訪れた。「今でも怖い」と思うことがあるが、経験を積み、手ごたえを感じている。

「思った波にだいぶ乗れるようになったので、チャンスはけっこうあると思う。技術的なことは今からどうしようもない。普通の大会と違って、技というより、1本の波で一気にひっくり返せる大会なので、そこは誰にも負けないチャンスがあると思う。波によるけど、練習に行ってる間にポジショニングとかも見つけられているんで、それをしっかり忘れずにいい波に乗りたい一心です」

稲葉の五輪までの軌跡を描いた映像も会場で流された Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

パンチパーマで気合!?

初戦の対戦相手は、いずれもCT選手で、インドネシアの和井田理央とイタリアのレオナルド・フィオラバンティ。稲葉は「対戦相手は関係ない。自分がその波に乗れるか乗れないかが一番。誰と当たっても、全員世界チャンピオンレベル。そこは気にせず、自分の演技に集中したい」と意気込む。

五輪前には気合を入れるため、頭髪にパンチパーマをかける可能性もにおわせ「壮行会で大勢に支えられているんだなと実感した。自分が生まれ育った一宮が町をあげて応援してくれるので、自分の結果で町にも恩返しできたら」と笑顔で話した。

壮行会後に取材に応じる稲葉 Photo:THE SURF NEWS/Chiaki Sawada

(沢田千秋)

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