「エルニーニョ現象」という言葉を聞いたことがある人は多いと思うが、波やうねり、サーフィンにどう関係しているのかまで意識する機会は意外と少ないのではないだろうか。
先日、NOAA(アメリカ海洋大気庁)は、これまで続いていた「ラニーニャ現象」が正式に終息し、現在はENSOニュートラル(中立状態)にあると発表。さらに、“スーパー(ゴジラ)エルニーニョ”と呼ばれ、過去140年で最強のエルニーニョ現象が、6月〜7月までに発生する可能性が60%以上あると予測している。
エルニーニョ現象とは?
「エルニーニョ現象」とは、太平洋の赤道付近、特に日付変更線から南米(ペルー沖)にかけての広い範囲で、海の表面の水温が平年より高い状態が続く現象を指す。
通常、この海域では風の流れによって暖かい海水が西側(インドネシア周辺)に集まり、東側(南米沿岸)では海の深いところから冷たい水が湧き上がることで、海の温度バランスが保たれている。
しかしエルニーニョ現象が発生すると、この風が弱まり、西側にたまっていた暖かい海水が東へと広がる。その結果、海の状態だけでなく大気の流れにも変化が起き、太平洋全体の気圧配置や風のパターンが変わっていく。これにより、上空の風の流れや低気圧の発達する場所、さらには台風の発生や進路にも影響が及び、世界各地で天候のパターンが変化する。

実際に、干ばつや冷夏、豪雨といった異常気象を引き起こすことがあり、農作物や水産資源への影響、水不足などにもつながる。こうした影響は、最終的に経済活動にも波及する。
発生はおよそ2〜7年に一度で、期間は9ヶ月から1年ほど続くことが多いが、その強さや影響の出方は毎回異なる。近年では2023年や2015年に強いエルニーニョ現象が発生し、各地で大きな影響をもたらした。
このように、発生のタイミングや規模を正確に予測するのが難しいことから、エルニーニョ現象は「読みにくい現象」とも言われている。
“El Niño”の由来
「エルニーニョ現象(El Niño)」はスペイン語で“男の子”を意味し、対して「ラニーニャ(La Niña)」は“女の子”を意味し、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象である。
この名称は、ペルーやエクアドル沿岸の漁師たちに由来する。この現象により、クリスマスの時期になると海水温が上昇し、魚が減って漁が難しくなることが知られていた。
クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う時期であり、幼子イエスは“神の子”とされる存在。そのため、この現象を「クリスマスの頃に現れる特別な子」と捉え、「El Niño(神の子=キリストの子)」と呼ぶようになったとされている。


7月頃にエルニーニョ現象、発生見込み
日本での最新の予測では、今年は「スーパー(ゴジラ)エルニーニョ現象」になる可能性があり、過去最大とも予想されている。
興味深いのは、その影響が従来のイメージと少しズレている点だ。本来、エルニーニョ現象の夏は冷夏になりやすいとされるが、今年は全国的に猛暑の予想となっている。
さらに、
- 梅雨の進行が早まる可能性
- 真夏にも豪雨リスクの上昇
- 台風の発生位置が東寄りにシフト
- 台風はゆっくり動き、勢力が強まりやすい
- 冬季の降水量減少
といった傾向も指摘されている。
サーフィンシーンには、台風うねりのサイズやパワーには期待できる一方で、進路次第でコンディションは大きく左右される。
そのため、「当たり外れの振れ幅が大きいシーズン」になる可能性が高い。
さらに、エルニーニョの現象が発生している間の台風の平均寿命は7.4日と平年(5.3日)を大きく上回り、長く発達しながら移動するケースが増加。
実際に2026年の台風4号も、その現象の影響が高いことが注目されている。さらに、4月までに4つの台風が発生するのは11年ぶり、近年で一番エルニーニョ現象が強い年だった2015年以来となる。

波への影響
一方、海外ではエルニーニョ現象は、ハワイ・ノースショアをはじめ、カリフォルニア、メキシコといった太平洋東部〜中央部に面した広いエリアで、冬のうねりを大きく左右する存在だ。
これらの地域では、エルニーニョ現象発生時に低気圧活動が増加し、その進路が南下する傾向がある。 その結果、長周期かつエネルギーの強いうねりが継続的に供給されやすくなり、「ビッグスウェル」や「当たり年」といったイメージが定着している。
2023〜24年はその典型で、ジェット気流の南下により低気圧がカリフォルニアへ直撃。西〜西南西の強いうねりが広範囲に届き、サイズとパワーのある波が目立った。特に南カリフォルニアでは、いつもは反応しにくいポイントにもサイズアップが見られた。
ただし、この強い現象による波は沿岸にも影響を与え、ビーチ侵食やインフラへの被害も発生した。
エルニーニョ現象は、波のポテンシャルを高める一方で、降水量の増加や低気圧の発達によって海のコンディションを不安定にし、自然災害のリスクも高める。
今年は過去140年で最大規模とも言われ、海外メディアではこれまで以上に注意が呼びかけられている。この現象が日本にどの程度の影響を与えるかは予測しきれないが、基本的な知識と心構えは持っておきたい。
(Mion)






















