フィリッペは初のタイトル獲得を本気で狙っているのか? CT第6戦『Corona Open J-Bay』

オーストラリア、ブラジル、南アフリカ、タヒチ、カリフォルニア、フランス、ポルトガル、ハワイ。
世界中のベストスポットを回るワールドツアーの中でも豊かな自然が残っている南アフリカのJeffreys Bay、通称「J-bay」で今年もイベントが開催され、現地時間7月13日に全てのスケジュールが終了した。

少し移動すればサファリが体験出来るこの場所には当然海の大型動物も多く、毎日のようにサメが出没してヒートが中断されたり、イルカの大群が遊びに来たり、自然を舞台とするサーフィンコンテストのもう一つの魅力を感じさせていた。

今年は2000年以来、18年ぶりにウィメンズイベントが行われ、開幕戦から6戦続けてメンズとの併催。
それは彼女達のレベルアップにも繋がり、「J-bay」でも素晴らしいライディングを披露していた。

ハイエストスコアを出した直後のカノア。

ジョーディ・スミスの「J-bay」初のパーフェクトヒートを始め、合計8つの10ポイントが出た昨年と比べ、今年は10ポイントが0。 メンズのハイエストスコアは五十嵐カノアがR4でマークした9.67で、バリエーション豊かなマニューバーにフィニッシュはフィンアウトブローテールリバース。
バレルこそ無かったが、今年の「J-bay」で最も際立った一本となり、CTでは昨年の最終戦『Billabong Pipe Masters』以来のSF進出で3位。
前半戦の不調を埋め合わせ、ランキング17位まで浮上した。

そのカノアをSFで圧倒したフィリッペ・トレドがファイナルでルーキーのウェイド・カーマイケルと対戦。
WSLのコメンテーター、1989年のワールドチャンピオン、ポッツことマーティン・ポッターが「伝統的なJ-bayのラインが消え去り、フィリッペ・トレドの波になった」という言葉を残した通り、昨年同様に「J-bay」とフィリッペのサーフィンの相性は最高で、最後も多くのギャラリーの声援を受けながら2年連続で優勝。
ブラジル戦に続き、今シーズン2度目の優勝でカレントリーダーの座も手に入れた。

ブラジリアンで3人目のワールドチャンピオンに最も近くなったフィリッペの姿勢はシンプル。
ファイナルデイになるとスイッチが入り、デカイことをやるか、家に帰るか。
日本語で言えば、伸るか反るかという考えだ。
キャリア7度のファイナル進出を全て優勝している驚異的な統計結果がその姿勢の正しさを裏付けている。

優勝したフィリッペ スイッチが入ると誰にも止められない
PHOTO: © WSL/Cestari

エアーもマニューバーも自由自在のフィリッペのサーフィンは全盛期のケリーのようだという評価もある。
1977年のワールドチャンピオンで「J-bay」の解説者を務めたショーン・トムソン曰く、「人間が可能な最高のサーフィンだ」

これでフィリッペはジョーディ・スミス、パーコことジョエル・パーキンソンの「J-bay」2度のタイトル記録に並んだ。
ジョエル・パーキンソンは今シーズン限りでの引退をイベント直前に発表。
4度の最多記録を持つミックは引退、ケリーは来シーズン限りでの引退を表明しているため、フィリッペ、ジョーディが記録更新に最も近い選手になった。

個性的なトロフィー
PHOTO: © WSL/Cestari

なお、11戦中、6戦が終了した時点でフィリッペ、ジュリアン・ウィルソンが3位以下を引き離しているが、アジャスト(11戦中ベスト9戦のポイントで決まる)すると3位のガブリエル・メディナにもチャンスは十分にある。
2年連続でワールドチャンピオンに輝いたジョン・ジョン・フローレンスに関しては悪い結果に加え、バリ島の怪我からいつ復活するかも不透明なので、今シーズンは絶望的。
本人は来年以降に向けてリフレッシュの年と考えているようだ。

フィリッペは初のワールドタイトル獲得に向けて最も結果を残していないタヒチ、パイプラインの2イベントを克服する必要がある。
特にライバルのジュリアン、ガブリエルがこの2イベントを得意としているだけにタイトルレースの明暗を分ける可能性が高い。
2015年には最多の3勝をしながらもタヒチで9位、パイプラインで13位。その他にもミスをしてしまい、結果はランキング4位。
JOBことジェイミー・オブライエンのサポートで弱点を克服、パイプラインで優勝したエイドリアーノ・デ・ソウザがその年のワールドチャンピオンになった。

次のタヒチ戦までは1ヶ月もあるのでトレーニングには十分だが、5月に生まれた第二子コアと妻のためにブラジルに滞在してその後はカリフォルニア・ハンティントンビーチでのQS10,000『Vans US Open of Surfing』に参加する予定だそうだ。

家族やスポンサーとの関係とワールドタイトル獲得に必要なタヒチでのトレーニング。
どちらを優先するかで今年のタイトルの行方が変わってくるかもしれない…。

PHOTO: © WSL/Cestari

今年はハワイアンのミーガン・アブボが優勝した2000年以来、18年ぶりに「J-bay」でのウィメンズイベントが復活した。
このスケジュールが発表された時、ステファニー・ギルモアがハイラインでこの美しい波を滑走する姿を想像したファンが多かったと思う。

特に今年のステファニーは2014年以来のワールドタイトル獲得に意欲があり、すでにベルズとブラジルで2勝。
ゴールドコースト、クラマスを制したレイキー・ピーターソンと激しいタイトルレースを繰り広げている。

「J-bay」ではフロントサイドとなるこの二人がSFまで強かったバックサイドのビアンカ・ベイタンタグ、タティアナ・ウェストン・ウェブ、ブロンテ・マコーレーを振り切ってファイナルで直接対決。
試合巧者のステファニーが見事に今シーズン3勝目を決めてイエロージャージをレイキーから奪った。

ステファニー・ギルモア
PHOTO: © WSL/Tostee

「全てのことがストレスになっていたのだと思う。誰もが私のための波、私のための場所と言っていた。でも、レイキーのハイスコアを見てその言葉が打ち消された。ここは私の波ではないのかもと思ってしまったの。彼女とライバル関係に戻れて良かったわ。ライバルはこのスポーツをエキサイティングにする素晴らしいものよ。偉大なライバルにインスパイアされているわ」
ステファニー・ギルモア

ハンティントンビーチ、サーフランチ、フランス、ハワイとこれから続く変化に富んだ残り4戦。
ステファニーとレイキーの二人のタイトルレースが続くことが予想される。

『Corona Open J-Bay』結果
メンズ
1位 フィリッペ・トレド(BRA)
2位 ウェイド・カーマイケル(AUS)
3位 ジョーディ・スミス(ZAF)、五十嵐カノア(JPN)
5位 コナー・コフィン(USA)、ジュリアン・ウィルソン(AUS)、ガブリエル・メディナ(BRA)、セバスチャン・ズィーツ(HAW)

ウィメンズ
1位 ステファニー・ギルモア(AUS)
2位 レイキー・ピーターソン(USA)
3位 ビアンカ・ベイタンタグ(ZAF)、タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
5位 ココ・ホー(HAW)、ジョアン・ディファイ(FRA)、ブロンテ・マコーレー(AUS)、セージ・エリクソン(USA)

WSL公式サイト

(空海)

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