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波の『グッドセット』が生まれるメカニズムを知ろう

天気図から波を予測、これもサーフィンの楽しみの一つ。サーフライン創立者シーン・コリンズが、波の性質を解き明かす


なぜ波はセットでやってくるか?これはなかなか手強い質問だ。私も30年近くその研究を続けているが、まだ結論には至っていない。したがって、これまで私が理解できたことだけを話そうと思う。

サーフ可能なスウェルを生むのは低気圧による風だ。風と言ってもさまざまで、ストーム(低気圧)の中心で吹く風は一定ではなく、断続的に吹いている。それを我々は突風と呼ぶ。だが、スウェルを生む大きな要因になるのは、絶え間のない風だ。だから実際にスウェルを生むのは、広いエリアに絶え間なく吹き続ける低速の風だ。もちろん、強い風が瞬間的にでも吹けばそのエネルギーは海に伝わる。

スウェルが、スウェルを生み出す風の吹くエリアから離れると、スウェルのエネルギーは結束しあいグループとなって洋上を進む。それをサーファーはセットと呼ぶ。セットの波はそれぞれが同じリズムで、相互に影響し合いながらエネルギーを無駄にしないように進み続ける。

さて、15分間隔でやってくる大きなセットもあれば、5分おきに絶え間なくやってくる波もあるのはなぜだろう?さらに、強い高気圧の影響によってストームが巨大に発達し、コンスタントに風が吹き続け、大きなスウェル、そして数多くのセットを生むのはなぜだろうか?

その答えの一つは、やはり風だ。低気圧は風を起こすが、しかし背後に大きな高気圧を従えていない低気圧は、強い風を吹いたとしても気まぐれで一定しない。仮に風速10~25m/sぐらいの風を生んだとしても、一定して吹かないために、コンスタントにエネルギーを海に伝えきれない。その結果、もし大きなスェウルは生み出せたとしても、セットの波の数は少なく、さらにセットの総数もそのサイクルも一定しない。

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しかし大きな高気圧を背後に従えたストーム(低気圧)は、強く発達し、しかも一定した風を生むために大きなスウェルを生み、セットの波の数も増え、またセットの総数やサイクルも多く安定する。

私は過去にハワイやメキシコへのヨットレース中に、多くのストームに遭遇してしまった苦い経験がある。そのストームを回避するのが目的で、私は波の発生を正確に予測できるようになった。

セットの波を生み出す別の要因は、風が吹くエリアの『距離と幅』だ。そこにどのくらいの一定した風が吹きつけたかでセットの波の数が決まる。サーファーならば、スウェルが生まれるには風が吹き付けるエリアの距離が重要なのは知っているだろうが、その幅もセットの数に重要な意味を持つ。

さらに、風によって生み出されたセットがどこに向かっているかということも重要だ。もしストームが南半球から北上しメキシコのメインランドの中心部に向かっていたとすれば、セットの大多数はそこへ向かう。だが、もしそのときにカリフォルニアで波が来るのを待っていたとしたら、メキシコに到達するスウェルの端っこしか得られず、遭遇できるセットの波も乏しいものになるだろう。

さらにサーフポイントの棚の水深と形質も波のセットに関係してくる。海底の形状がスウェルに影響を及ぼし、それでセットの数が変化するのだ。他よりもいつも波が大きいサーフポイントは海底の形状や水深が影響していると考えて良いだろう。

さて、波とそのセットについては、まだまだ分からないことが多いが、もしストームが発生したときは、風速とその風が吹き付けるエリアの距離と幅、そして背後に大きな高気圧が控えているか、そしてそのストームがどこに向かって進行しているかに注意して波を予測すれば、グッドウェーブをゲットする確率は増すということを覚えておこう。

<構成、李リョウ>

This article is based on “Why do waves come in sets?”
https://www.surfline.com/surf-news/why-do-waves-come-in-sets/1156

この記事はサーフラインのブログ、Why do waves come in sets? を基にしています。

(李リョウ)

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