Photo: THE SURF NEWS

日本の波を追い続けた3年。松岡慧斗が描く『852 DOWN THE LINE – JAPAN -』の世界

世界に名を馳せるウェイブハンター、松岡慧斗のシグネチャームービー『852 DOWN THE LINE – JAPAN -』が10月30日、都内シアターで上映された。

唯一無二のスタイルを貫くプロサーファー・松岡慧斗が挑み続けた3年間の軌跡と、日本の波のポテンシャルを凝縮した20分。会場に集まった観客の目に、その情熱が焼き付けられた夜となった。

3年の製作期間、撮り溜めたフッテージはすべて日本

当日は、公開を心待ちにしていた多くのファンが会場に詰めかけ、満席のシアターには期待と熱気が満ちていた。
上映時間はわずか20分ながら、その中には日本国内とは思えないほどのスケールの波と、圧倒的なサーフィンの世界観が凝縮。スクリーンに映し出される一本一本のライディングに、観客からは自然と歓声が上がった。

また、上映後には、主演の松岡慧斗と本作の監督・青木肇氏が登壇し、作品に込めた想いや撮影の裏側、制作にかけた思いが語られた。


撮影期間について

松岡慧斗:やっぱり日本は、みんなもわかってると思うんですけど、海外に比べると波には恵まれていないというか、なかなかチャンスが少ないので。やっぱり時間がかかってしまって、今回の作品も約3年ぐらいですかね、撮り溜めをして作らせてもらった感じです。

ロケーションについて

松岡慧斗:結構日本全国ですよ。東北も入ってるし、日本海も入ってるし、四国の方とか。でも本当に、日本にはまだまだ自分も知らないスペシャルな波がいっぱい隠れているので。自分の映像を見て、日本がかっこいいなって思ってもらいたいし、自分もそれを誇りに思ってやっているので。サーフィンはいろんなジャンルがあるし、僕みたいなスタイルだけじゃないんで。みんなも日本をフォーカスして、じゃないですけど、みんなも日本をもっと誇りに思って、これから活動してほしいなって思います。

「みんなも日本を誇りに思ってほしい」松岡慧斗 Photo: THE SURF NEWS

制作時の強烈なエピソードは

青木肇:強烈なエピソードで言うと、みんなもう知ってるんですけど、最初の方に入っていた北海道のあるポイントで、撮影中にヒグマに遭遇して。その時は(脇田)泰地と慧斗がいたんですけど、自分は普段はこう、ローアングルで撮影するのが好きなんですけど、ヒグマが出たんで・・。コンテナの上に登って、急にヒグマに押されても大丈夫なようにハイアングルから撮ったとか、そういったエピソードはあります。

「普通の撮影では経験できないことを、経験させてもらってます」青木肇 Photo: THE SURF NEWS

日本中をウェーブハントする中での配慮や、編集・構成で意識していることは

青木肇:(撮影をする中で)テトラが映ってるとか、後ろのバックグラウンドが映っちゃってる、とかがあるんですよね。でもそこは慧斗と編集を進めていく上で、これ見えちゃまずいよねとか、これちょっと分かっちゃうよね、みたいな。分かっちゃってもいいポイントもあるんですけど、その中でも一応配慮して、ここは見せないで、ちょっと拡大して、テトラは見えないようにしようとか、堤防は見えないようにしようなどの配慮はしています。

松岡慧斗:自分も海外によく行ってきたんですけど、バリにしてもハワイにしても、やっぱり色々な国の人が入って、これはいい意味でもあるけど、元々あったものじゃなくなっちゃったという姿を見ていると、日本にはこういうスペシャルなものがまだこんなに残ってるんだなって。そう思うと、やっぱり大事にしたいなと思うし。そういうところですかね。
それとやっぱりローカリズムも色々あるし、その土地の人はリスペクトしているので、そこを邪魔しちゃいけないじゃないですか。そういう意味も込めて、うまくやってます。

松岡慧斗がシェイプする梵才(bornpsy) サーフボード Photo: THE SURF NEWS

ハワイやタヒチ、メキシコなどのヘビーブレイクも経験した今、日本の波に思うこと

松岡慧斗:本当に数も少ないし、チャンスも少ないし。そもそもやっぱりその波をスコアするっていうことを、自分も10年以上、15年とか、すごいフォーカスしてやってきて、やっと答え合わせをして。自分の頭の中に方程式を作って、外してもめげずに行って。でもその中に、やった、当たったっていうのをインプットして。自分の頭の中のネタ帳じゃないですけど、そうやってきたから。本当に1回1回がスペシャルだし、そのスペシャルになった時は、「世界に誇れる」と堂々と言っていいんじゃないかなって思う波も見てるし、実際に自分たちがお手上げになってる波もあります。
だから最後に “to be continued” て書きましたけど、僕らは本当にまだまだ全然納得いってないし、もっともっと出来ると思ってるし、波にも魅せられてるし。それをこう、俺らが先陣を切って、打ち破っていけたらなというか、戦っていけたらなとは思ってます。だから、もっと良いもの見せたいんで、これで終わらないです。

コロナ禍を経てスノーボードの世界に入った。その魅力は

松岡慧斗:自分がサーフィンでやってたことと同じ動きだから、ただそれだけで。コロナ禍になった時に、海外へ行くにも制限があったし、じゃあ新しいことをしたいなって思った時に。毎年ずっとノースショアに通って、20年近くやってきて、ここで新しいことにチャレンジするのはいいんじゃないかなって思った時に山と出会って。で、本当にその3~4年ですけど、すごく集中して、色々な仲間もいたおかげで、凄い経験をさせてもらって。
なんだろう、感覚が一緒なんですよね。良い波をスコアして、凄いチューブをメイクできて、わあってなってるアドレナリンと、ああいうパウダーの雪。そういうのも自分の感覚で行くわけじゃないですか。行って、そこで悪い時もあるし、それも波と一緒で。スコアできた時のこのアドレナリンというか、感動するものが凄く共通したんで。これはやった方がいいな、じゃないですけど。自分にとってはもうライフスタイルの1つになったなって思ってます。

本作品のタイトル『852 DOWN THE LINE – JAPAN -』に込めた意味

松岡慧斗:そうですね、長くなってしまうので、簡単に言えば「感覚を研ぎ澄まして、サーフィンで波をスコアすることも、雪をスコアすることも、凄く絶妙な気付きじゃないですけど、そういうのが全部大事で、自分のそういう感覚と、自然との調和という意味を込めて、852と付けました。

肇さんも、いつもいつも熱いエディットありがとうございます。
そして一緒に出てくれたライダーたちもありがとうございます。
みんな最高なんで、これからもっとやばいの作っていくので期待していてください。
松岡慧斗

本作品の上映は、今後また別イベントでも企画される予定だ。

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