TSJJ 16-3

ザ・ナビゲーター、腰添健&岡田修平インタビューほか、TSJJ16.3号の読みどころ

9月30日に発売された「ザ・サーファーズ・ジャーナル」日本版16.3号の読みどころを同誌のコントリビューティング・エディターも務める李リョウが紹介。


ザ・ナビゲーター

TSJJ16-2より

この記事の主人公ニック・ベックは、内科医だった父親の患者にデューク・カハナモクがいたという縁から、サーフィンと出会いました。時代は1950年代初頭のハワイです。

その頃のハワイって、一体どんな光景だったのでしょうか。ノースショアはまだ深いジャングルで、カメハメハ・ハイウェイもココナッツの森を抜ける一本の林道のようだったかもしれません。当時はサーフブレイクに名前すらついていなかったと、ニック氏も振り返っています。

家柄の良さもあり高い教養を身につけた彼ですが、ドロップアウトすることなく教員免許を取得し、確固たる社会的地位を保ちながらサーフィンライフを謳歌し続けました。まさにハナレイ・ベイの開拓者であり、名高いモロカイ・オアフ間パドルボードレースの礎を築いた人物でもあります。サーフィンのみならずカヌーやセーリングをも愛する、真の「ウォーターマン」。『ザ・サーファーズ・ジャーナル』でしか読めない贅沢な読み物です。

キャプテン・ファン

TSJJ16-3より

サーフィン界の生ける伝説トム・カレン。彼を伝説たらしめた名作映画『ザ・サーチ』や『サーチング・フォー・トム・カレン』を手がけたフィルムメーカー、ソニー・ミラーの回想録です。サーフ映画の世界において、彼自身もまた紛れもない伝説のひとりでした。惜しくも2014年に急逝したソニーの、これまであまり語られることのなかった知られざる素顔に光をあてています。読み終えて驚かされたのは、わたしが勝手に抱いていたイメージとのギャップでした。夜の東京でサーファーたちを引き連れてどんちゃん騒ぎを繰り広げ、ミラーの缶ビールを掲げて「ミラータイムだ!」と叫んだという痛快なエピソードなど、思わず頬が緩みます。ちなみに冒頭の見開きページは、トム・カレンが初めてJベイを訪れた際のスナップですが、そこにドロップインしているのはなんとミキ・ドラ。よくぞ残っていたと唸らされる一枚です。

ビッグ・ガイ

TSJJ16-3より

ロン・デリューというオランダ人の自称サーフジャーナリストが綴った、日本をめぐる旅の手記です。日本の海や街が舞台だからこそありありと情景が浮かび、その珍道中ぶりはまるで「小学生の遠足の作文」を読んでいるかのような無邪気な楽しさにあふれています。

インタビュー:腰添健/岡田修平

TSJJ16-3より

サーフィン業界の重鎮にして、誰もが親しみを込めて呼ぶ「ケンちゃん」と「シューヘーさん」の登場です。自分のことは棚に上げますが、年長者の「昔語り」はどうしても敬遠したくなるもの。しかし、このお二人はまったくの例外です。とにかく引き出しが豊富で、説教臭さが微塵もありません。岡田修平さんが古典落語のような見事なオチで笑わせてくれる一方で、腰添健さんからは別れた後になって「ああ、そういうことだったのか……」と深い気づきをいただいた経験が何度もあります。「どうせ業界の内輪話だろう」と食わず嫌いにならず、まずは気軽に読んで笑ってみてください。サーファーという奇妙で愛すべき種族の持つ“何か”が、きっと胸の奥に届くはずです。

ステージネーム

TSJJ16-3より

WSLの解説席に座るかと思えば、5フィート台のフィッシュから9’6のログまで乗りこなし、ヘビーな波にも臆せず突っ込んでいく――異色のフリーサーファー、マット・チョナッキー(通称ワックスヘッド)の特集です。彼はまさに「歩くサーフィン百科事典」。小学生の頃にはすでに図書館でサーフィンの歴史資料を読み漁り、14歳でボブ・マクタビッシュのファクトリーに乗り込んでデザイン談義をふっかけたという逸話には、思わず笑ってしまいます。しかし、単なるボードオタクで終わらないのが彼の凄み。過去の遺産を余すところなく自らの血肉とし、現代において最も洗練されたスタイルで波を滑っているのです。「歴史を知るからこそ、サーフィンはもっと面白くなる」。オールドスクールなギアやカルチャーを愛するサーファーなら、間違いなく深く頷いてしまうはずです。

ザ・ライド(ジョン・ミリアス)

TSJJ16-3より

映画『ビッグ・ウェンズデー』の監督として知られるジョン・ミリアスが手がけた短編「ザ・ライド」です。舞台となるのは、彼自身のルーツでもあるカリフォルニアのマリブやベンチュラです。

あのミリアスによる小説と聞けば、思わず前のめりになってしまう読者も多いのではないでしょうか。しかし本作には、いわゆる劇的な事件や起伏はほとんどありません。全編を通して描かれるのはサーファーの重苦しい独白であり、物語としてのエンタメ性は極めて控えめです。外国語の翻訳ということもあって、原文が持つ英語独特のビート感や空気感が伝わりづらく、集中して読み進めるには少々退屈さを覚えるかもしれません。

ただ、その乾いたハードボイルド調の筆致からは、メルヴィルの『白鯨』を下敷きにした大自然への畏怖や、都会生活に馴染めず波の狂気に救いを求める男たちの独特な飢餓感がじんわりと滲み出ています。光に満ちた『ビッグ・ウェンズデー』のきらめく青春の影にある、もうひとつの質感と言えるでしょう。

ストーリーの起伏を追うというよりは、一人きりのサーフトリップの夜、潮騒に耳を傾けながら車中でぼんやりこの世界に浸る――それくらいの間合いで向き合うのが、ちょうどいい作品かもしれません。

(李リョウ)


THE SURFER’S JOURNAL(ザ・サーファーズ・ジャーナル)

●世界でも選りすぐりのフォトグラファーによって捉えられた、サーフィンの美しく迫力に満ちた瞬間。
●新旧様々なライターたちに綴られる、本質的でバラエティに富んだストーリー。
最も信頼されるサーフィン誌として世界中のサーファーたちから愛され、書店では買うことができないライフスタイル・マガジン。

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