福島県 南相馬市がPRモニターツアーを開催。プロサーファー宮内謙至、川畑友吾らが参加

昨年、サーフツーリズムとしての再始動(RESTART)を掲げていた、福島県南相馬市の「北泉海岸」。

この取り組みの一環として、南相馬市が「サーフタウン・PRモニターツアー」を開催し、プロサーファーの宮内謙至や川畑友吾らが参加。サーフタウンを掲げる南相馬市の魅力を体験し、意見交換等を行った。


RESTARTを掲げる北泉海岸。波はコンスタントで北寄りの風を軽減する

福島県を代表するサーフポイントのひとつ「北泉海岸」はコンスタントに波があることで知られ、かつてはWSL(旧ASP)の世界大会開催地としても定着。
かねてより、サーフィンを軸に街の活性化を図る「サーフツーリズム」にも力を入れ、その結果が出始めた矢先で震災に見舞われた。

しかし、すでに街の復興は進んでおり、再始動(RESTART)の取り組みを打ち出したのが昨年。次に、ここ北泉に来てもらう、通ってもらうには何が必要か。そのための意見交換とPR活動を兼ねたモニターツアーが実施された。

6月27日~28日の2日間で実施された今回のモニターツアー。参加者は、日本を代表するプロロングボーダー “ショーロク” こと宮内謙至、自身のサーフスクールを主宰しYouTubeでも活躍する川畑友吾、そして様々なフィールドで活躍する女性活動家たちのコミュニティ “Sea flowers shonan” のメンバー。現地では南相馬市出身のプロロングボーダー佐藤広も合流した。

左から、川畑友吾、佐藤広、宮内謙至、Sea flowers shonan

ツアー初日はサーフセッションを予定しており、メンバーは北泉海岸に集合。しかし、これが自然相手のサーフィンの難しいところ。この日の波はあいにくのスモールで、南寄りの風も強くやや厳しめのコンディション。

そこで一行は、火力発電所を挟んで北側に位置する烏崎に移動。ここは面がクリーンでなんとかサーフィンは楽しめる状態だ。

この日、北泉は風が合わずイマイチなコンディション
隣りの烏崎 “坂下ポイント” の面はクリーン。波さえあれば、風向きに合わせたポイントセレクトも可能。

この日は全国的に波が小さかったものの、南相馬ではなんとかサーフィンができるサイズをキープ。波さえあれば風向きで場所移動ができるのも、北泉海岸の強みのひとつと言えるだろう。サイズは小さいながらも貸し切り状態の海でファンサーフを楽しむことができた。

佐藤広&川畑友吾
宮内謙至
佐藤広
Sea flowers shonan
「今日は水が綺麗で気持ち良かったです」NHKの取材に応える宮内謙至

甲冑着付けに市内見学。南相馬の魅力も体験

サーフセッション終了後は宿泊施設にチェックイン。北泉海岸は国道や高速道路も近くアクセスも良好。海から街まで車で10分程度の立地は、トリップサーファーには嬉しいポイントだ。

そして夜の懇親会を前に、一千有余年の歴史を持つ伝統の祭り「相馬野馬追」にちなんでの甲冑着付け体験を行った。

宮内プロは「武将甲冑」、川畑プロは「足軽甲冑」。日常ではあまり体験できない甲冑着付けだが、これは南相馬市観光協会が実施しているサービス(有料)。事前申込みをすれば誰でも体験できるので、興味ある方はぜひ試してみて欲しい。

鎧をまとって戦国時代を体感できる

そしてスケジュール2日目は、専用バスに乗り込んで市内を見学。

まず訪れたのは「南相馬市消防・防災センター」。ここには、東日本大震災からの教訓を後世に残すため、当時の被害状況や災害対応等の情報などが展示されている。当時の様子や現在の取り組みなども紹介され、メンバーも真剣に耳を傾けていた。

ドキュメントとして展示されている「東日本大震災から15日間の記録」。川畑友吾プロは、震災直後に自ら現地ボランティア活動に参加していた

続く「南相馬市博物館」では、国指定重要無形民俗文化財に指定される「相馬野馬追」をはじめ周辺地域の自然や歴史、民俗をテーマにした様々展示物を観覧できる。

その後も、福島ロボットテストフィールドや、雲雀ヶ原祭場地などを巡って市内見学を終えた。

南相馬市博物館で「相馬野馬追」の歴史に触れた

意見交換会「来てもらう、通ってもらう北泉」

モニターツアーの締めくくりとして、最後は参加メンバー同士で意見交換会を行った。テーマは「来てもらう、通ってもらう北泉」。

北泉海岸サーフタウン推進事業のロードマップでは、これまでは(現状を)「知ってもらう」フェーズ。これからは「来てもらう」、将来的には「通ってもらう」を目標に、今後は様々な取り組みを行っていく予定だ。

ツアー内で感じたことを、メンバー同士でディスカッション

震災後の福島に初めて訪れた宮内謙至プロは、以前まではサーフキャンプをしながらの福島トリップが定番だったという。

これまでは、あまり現地の情報を把握していませんでした。サーフトリップで気軽に行って良いものか、現地の受け入れ体制はどうなのか。今回はそれを知ることができる良いチャンスと思い参加しましたが、前向きな話しが聞けました。
福島には縁もあり、応援したいという想いもあります。たまたま波は小さかったけど、地形が決まっている場所もあり、ポテンシャルを感じることもできました。
宮内謙至

震災直後の現地ボランティアにも参加していた川畑友吾プロ。震災後のサーフィンは今回が初となるが、以前は大会出場のために北泉を訪れていた。

過去、自分が北泉に来ていたのは、大会への参加が理由でしたが、来てからの満足度は高いと思います。なので選手目線になってしまうけど、大会で皆が良い波に乗って、それがメディアで発信されて。そんな盛り上がりが、一般サーファーの皆さんが“来たいと思える理由になってくるのではと思いました。
川畑友吾

意見交換会には、福島県サーフィン連盟理事長の室原慎二氏も参加

また、湘南茅ヶ崎を拠点に “Sea flowers shonan” を主宰する西川優美氏は、今から1年ほど前に初めて福島を訪れた。その際は波が良く、最初のイメージの重要性なども語られた。

今回のツアーでは海以外でも復興の様子が見れたのは良かったと思っています。現在の拠点になっている湘南には、まだ県外でサーフィンをしたことが無いという方も多いので、何か福島に来るキッカケがあると良いなと感じました。
カフェスペースや、ゲストハウスなどが充実すると、地元の人とのつながりもできて嬉しいです。ローカルの方からの発信だけでなく、その良さを知っている人が伝えていくことも大事だと思います。
西川優美

Sea flowers shonanには今回が初の来県となったメンバーも

ちなみに1年前に初めて福島を訪れた際は、現地の不安もあり自身で色々と調べたが、情報収集には苦労もあったという。
今回のツアー参加にあたっては、知人から「福島に行って大丈夫なの?」と聞かれたメンバーもいた。

現地の情報発信と、これからの取り組み

現地を知るための情報が少ない、分かりにくいという点はメンバー共通の意見で、主要波情報サイトに情報が掲載されていない点も課題のひとつ。

そこで、現地の海の安全面や、南相馬市・北泉海岸の魅力を発信するサーフ情報WEBサイト『えぶなみ北泉』が公開された。
原発事故に起因する風評も払拭するため、今後も様々なコンテンツを展開する予定だ。

えぶなみ北泉
https://funq.jp/evnami_kitaizumi/

また、サーファーが「北泉海岸に行きたい」思えるよう、今後は現地でも様々なイベントが開催される予定。

8月には『はじめてのサーフィン』体験と題し、小中学生を対象とした体験交流イベントを開催。

9月には『Surf in MUSIC in KITAZUMI』と題した音楽フェスイベントが開催され、国内外のトップサーファーを招待するエキジビジョンマッチなども同時開催される予定。詳細はえぶなみ北泉をチェックして欲しい。

今回ツアーを企画した南相馬市観光交流課の齋藤太郎主査「活気あふれるビーチにしていきたい」

首都圏から少し足を延ばせば、良い波が余っている福島。
今年、アルプス処理水の問題など重要な局面を迎えるが、海の安全面は、科学的根拠に基づく情報が公開されており、それらの情報をどのように伝えていけるかも重要な鍵となりそうだ。

北泉海岸を盛り上げるべく活動する南相馬市の、今後の取り組みに引き続き注目したい。

(THE SURF NEWS編集部)


【参加者プロフィール】

宮内謙至

日本を代表するプロロングボーダー。14歳でサーフィンを始め、アマチュアタイトルを総なめにしてプロ転向。JPSAでは1995年から6年連続グランドチャンピオンという日本記録を保持。そのスタイリッシュなサーフィンは、数多くのメディアに掲載されている。
instagram: @shoroku

川畑友吾

千葉一宮をホームとし、父と兄もプロサーファーのサーフファミリーで育った。自身のサーフスクール運営やカフェ経営などの傍ら、自身のYouTubeチャンネル「川畑友吾チャンネル」で様々な情報を配信中。
instagram: @yugokawabata

Sea flowers shonan(左からmami、ayami、yumi)

湘南エリアからみんなの『スキ』を満開にしていこう!というコンセプトで、様々なフィールドで活躍する女性活動家が集まるコミュニティ。可能性と個性溢れるメンバーが様々な情報を発信。
instagram: @seaflowers_shonan

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