2017年ウィメンズのワールドチャンピオンはタイラー・ライト!

ワールドタイトルを連続で獲得することはとても難しいとケリー・スレーターが言っていたが、それはウィメンズでも同様だ。

例外はステファニー・ギルモアの4年連続。
その彼女でさえ2010年以降は連続でタイトルを手に入れたことはない。

カリッサ・ムーアは2011年の初タイトルから綺麗に一年置きに通算3度タイトルを獲得している。
だからこそ、マウイ島のホノルアベイで開催された最終戦『Maui Women’s Pro』で2年連続のチャンピオンに輝いたタイラー・ライトは大きく評価するべきだろう。

昨年、兄オーウェンの選手生命を脅かすような事故を始め、プライベートな困難を克服。
更にマイクロというスーパーコーチを手に入れて初のワールドタイトルを獲得した彼女。
スモールコンディションだった昨年とは一転して豊富なウネリに恵まれた今年のホノルアベイ。

マウイ島を代表するポイントであり、ベストシーズンの冬は他の島から波を求めて訪れることも多い極上のライトブレイクは波が良ければ混雑が必至。
下手なビジターに余る波はないほどで、イベント開催中も奥のピークでは多くのフリーサーファーがラインナップに並んでいた。

PHOTO:© WSL/Poullenot

今シーズンのタイラーは昨年と比べると決して良いとは言えなかった。
その一方でオーストラリアレッグでは開幕戦を制したステファニー、無冠の女王と呼ばれているサリー・フィッツギボンズやコートニー・コンローグが強かった。

ブラジル戦でようやく1勝目を上げたタイラーは、ここでステファ二ーと同率トップになる。
フィジー、ハンティントンと上位に入るが、トラッセルズでは1年以上ぶりにR4で敗退の9位。
更にポルトガル戦の2日前に右膝の肉離れ。コンテストには出場したが、最下位の13位に…。

全10戦中、上位8戦のポイントで争われるウィメンズのワールドツアーで2戦連続で悪い結果を重ね、崖っぷちに立たされたが、次のフランス戦では超人的な回復力でSF進出の3位に入る。
怪我から約1週間、彼女を治療したメディカルチームがどんなマジックを使ったかは公表されていないものの、これがタイトル獲得の大きな鍵となったことは確実である。

フランス戦の成績でランキングを3位から2位に上げて最終戦へ。

PHOTO:© WSL/Cestar

最終戦のタイトルのシナリオはサリー、タイラー、コートニーの3名に有利だった。
そして、ステファニー、カリッサにも僅かなチャンスが残されていた。

イベントが始まると無冠のサリー、コートニーにとってタイトルのプレッシャーはあまりにも大きかったと言える。今シーズン全てQF以上をメイクしていたサリーがR2でワイルドカードのブリッサ・ヘネシーにあっけなく敗退。更にコートニーまでがR4でニッキ・ヴァン・ダイクに敗れてしまう。

この時点で数字的にタイラーが非常に有利になり、タイトルの条件だったQFの勝利を難なくクリアする。
パーフェクトなホノルアベイでバレルに包まれ、姿を現してからのレイバックハック。
彼女の強さを象徴するようなウィニングライドだった。

勝負の相手はサリーを倒したブリッサ。ワイルドカードの彼女にタイトル争いは関係なく、ヒート終了後のホーンと共に水しぶきを上げてタイラーを讃えていた。

PHOTO:© WSL/Cestari

タイラーの2年連続のワールドタイトル獲得にはマイクロ(グレン・ホール)の存在が大きい。
アイルランド人として初めてワールドツアーの一員となったマイクロは選手としては大成したと言えなかったが、コーチとしては超一流。
メンズでもウィルコをタイトルコンテンダーに育て、特に昨シーズンの前半は選手よりも注目を浴びていた時期がある。

今回の最終戦でもラインナップで常にタイラーの側にいて指示を与えていたことが想像出来る。
タイトル獲得後はこれからヒートに向かうカリッサや、ヒートが終わって水着姿になっていたステファニーなどの良きライバルにも讃えられ、タイラーの応援Tシャツを着たRipCurlのサポートクルーからのシャンペン攻撃を思う存分に楽しんでいた。

PHOTO:© WSL/Cestari

タイトルが確定した翌日、SFから先が残っていたイベントでタイラーはステファニーと対戦する。
良きライバルであり、親友でもある二人の関係。
それはフリーサーフィンのようであり、真剣勝負でもあった。

ホノルアベイでルーキーイヤーから3年連続で優勝経験があるステファニーはここでの戦い方を最も知っている一人。マニューバーだけで9.77、トータルスコアでもタイラーを上回り、この勝負を勝つとファイナルでもマリア・マニュエルを抑えて優勝。初めて優勝した2007年から彼女のスタイルは変わらず、ファイナルデーの主役となった。

来年は初めて南アフリカのジェフリーズベイが会場になるウィメンズツアー。
ステファニーがあの大きなキャンバスでどんなラインを描くのか、タイラーがどのように波を破壊していくのか、楽しみで仕方ない。

PHOTO:© WSL/Poullenot

『Maui Women’s Pro』

1位 ステファニー・ギルモア(AUS)
2位 マリア・マニュエル(HAW)
3位 タイラー・ライト(AUS)、ブロンテ・マコーレー(AUS)
5位 シルヴァナ・リマ(BRA)、ブリッサ・ヘネシー(HAW)、ニッキ・ヴァン・ダイク(AUS)、カリッサ・ムーア(HAW)

2017 Women’s Championship Tour

1位 タイラー・ライト(AUS) 52,900pt
2位 ステファニー・ギルモア(AUS) 53,400pt
3位 サリー・フィッツギボンズ(AUS) 52,900pt
4位 コートニー・コンローグ(USA) 50,000pt
5位 カリッサ・ムーア(HAW) 49,200pt

WSL公式サイト

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