2015年のワールドタイトルを獲得したスーザ Photo: WSL/ Kirstin Scholtz

「今季引退のエイドリアーノ・デ・スーザがブラジルサーフィン史に残した功績」-F+

F+(エフプラス)

リムーアのサーフランチではみんながスーザの名前を付けたゼッケンを着て、スーザのラストイヤーに敬意を表してトリビュートしてたけど、エイドリアーノ・デ・スーザという選手はブラジルのサーフィン史にとって非常に重要な役割を果たした人といえる。もちろん後輩の面倒見のいい人であることは確かだけど、今のガブ、イタロ、フィリッペ、につながるブラジリアンストームの陰の原動力というか、そのストームは現実に起こるんだ、ということをブラジリアンたちに実感させたのがスーザだと思う。

ファビオ・ゴウベイア、フラビオ・パダラッツのブラジリアン創成期から、ネコ、ギリアミ、へナンらへと世代交代していくんだけど、当時はとてもじゃないけどワールドタイトルがブラジルに行く、という感じではなかった。それを初めて「もしかしたら」、と感じさせたのがスーザだった。ブラジルに初のワールドタイトルをもたらすとしたら、スーザだろうとずっと思われていた。結局それはガブリエル・メディーナが2014年に果たすわけだけど、スーザも翌2015年にタイトルを取っている。ブラジルにタイトルが行く、という出来事はサーフィン史上とても大きな出来事だった。何しろサーフシーンは長いことオーストラリアとアメリカのものだったから。

そして一度そこにブラジルが割り込んだらもう止まらない感じで、今はブラジル主導のシーン。過去6年間のうち4回はブラジルにタイトルが行っているし、おそらく今シーズンもそうだろう。ブラジルのサーフィン界全体が協力して世界のシーンを取りに行く、という彼らの20年以上にわたる努力が今満開なわけだ。

ツアーにジャッジを送り込む、運営サイドにもブラジル人を入れる、QSのスケジュールをブラジル人に有利に組む……選手の努力ももちろんだけど、そういうサイドワーク的なことにも彼らは熱心だった。もちろんそれで反感を買い、出る杭は何度も打たれてきた。私は時にブラジルの選手や運営の人たちの思惑も聞きながら、その一部始終をずっと見てきた。彼らのジャンルを飛び越えた徹底した戦略は見事だった。

日本じゃ無理だろうな、と思う。団体は団体、運営は運営、メディアはメディア、選手は選手、スポンサーはスポンサー……それぞれのジャンル内での利害ばかりが横行して、それらを飛び越えての全体の意見交換みたいな場がないし、少なくとも私はそういう場には呼ばれていない。日本で一番CTを知ってると思うので、呼んでくれないのはさみしい(笑)。まぁその前に、それら関係各位をまとめるパワフルで人望のある人材がいないし、日本のノーが言えない縦割り社会をぶち壊すのに20年以上かかるか(笑)。

団体はこう、選手はこう、メディアはこう、スポンサーとしては……そういうそれぞれの立場での理想を意見交換して、その中で国全体のシーンをワールドタイトル獲得に向けて突き進めていく、みたいな壮大なことを20年以上やって初めてガブのタイトルに行きつく。だからこそ、ガブが初タイトルを取ったときのブラジル人全体の感極まった感じはすごいものだった。そしてそれを絵空事ではなく、現実に手が届くものなんだと感じさせたのがスーザだったのだ。

ではディベート第23回行きましょうか。今回はストライダー・ワズルスキーとカイポ・グレロ。おなじみWSLのライブ放送のスタッフふたりだから、そんなに道は外さないけど、ストライダーがけっこう頑固で表情が面白い。ラストのトップ5に残るのに、本当に1番が有利なのか、実は2番なのか、ってのは、私もずっと考えていたところ。

1:モーガン・シビリックは今のランキング通り、オーストラリアで最強の選手といえるのか?

カイポ:そうだと思う。ルーキーイヤーであれだけ仕事するのはとても難しいことだし、プレッシャーをはねのけて大物を倒すのはすごいと思う。フリーサーフィンとかを含めての評価とかじゃなくて、試合でのサーフィンに限れば彼がべストオーストラリアンサーファーだ。

ストライダー:オッケー。ランキングは嘘じゃないと思うけど、彼がベストオーストラリアンサーファーだとは思わない。けっこう運も味方してるよね。タイのカウントバックをモノにしたり、イタロのエアーのインコンプリートで助かったり、ほかにもいろいろある。僕は彼がこのままトップ5に残るとは思わない。ジュリアンだって終盤あがってくるだろうし、オウエンやライアン・カリナンもイーサン・ユーイングだって上がってくるはずだ

2:コアなサーフファンはオリンピックのサーフィン競技を追うかどうか?

ストライダー:100%イエス。すでに彼らはもっとこうしたらいい、とかああしたらいい、とかWSLの試合についてコアに話してるし、それが初めてのオリンピックとなればなおさらだ。国対国ってなれば、みんなテレビに向かって叫ぶさ。

カイポ:結果に関してはみんな興味を持つと思うけど、会場でのサーフィンに関しては正直言って「?」かな。コアなサーファーにとっては波そのものも、パイプやチョープーみたいなものじゃないし、スナッパーでもない。そしてフォーマットも違う。みんな誰がメダルを取ったかは追うだろうし、世界の注目を集めるだろうけど、サーフィンそのものを楽しむかといえば疑問だ。僕はサーフイベントたくさん見るけど、オリンピックでは水泳とかトラック競技とか見たい。だって、それがオリンピックの伝統的な競技だから。サーフィンがオリンピックに入ったのはボーナスみたいなもんだと思う。誰かが金メダルを取って、それは巨大な価値のあるモノになるけど、WSLよりずっといいイベントにできるのかな?

ココ:どっちもどっちって証拠があるわ。うちのお父さんは楽しみにしてる、メイソンは興味なし(笑)

3:サーフボードはプールで見た多くのカーボンファイバーのように、新しい素材に変わっていくか?

Photo: WSL

カイポ:ダークカラーのカーボンファイバーの板を使ってた選手に聞くと、みんな調子がいいっていう。耐久性のある素材はボードの寿命も長くするし、それはサステナブル(持続可能)な商品といえる。近年はその辺も大事だ。だから変わっていくんだと思う。

ストライダー:サステナビリティという部分では共感するけど、プールみたいに淡水ではダークカラーボード(カーボンファイバーボード)は機能するけど、海でってことになると別の話だ。海では従来のPU(ポリウレタン)のように機能するものは他にない。しなりや反発力、ストリンガーの感触で自分がセンターにいる感覚とか、寿命は短いかもしれないけど、変わるものがない。新しい素材はこの先出てくるかもしれないけど、今年じゃないよ。

カイポ:寿命は問題ないっていうこと?サンクレメンテにピックアップトラックで行って板をどっさり持って帰ってくるサーファーじゃない、世界の99.9%のサーファー、自分でボードを買わなくちゃならないサーファーにとって、耐久性は大きな問題だと思う。たぶんプロだってマジックボードの寿命は長いほうがいいはずだ。

ストライダー:一般のサーファーの話をしてるんじゃないよ。1日に4回も5回もセッションしてる、ツアーの選手たちがこの先の試合で使う板の話をしてるんだよ。彼らが新しい素材の板を使うようになるのはまだまだ先って話だ。エポキシ、カーボンファイバー、その他の板も特定の場所で特定の目的のために使われるけど、気に入ってるわけじゃないと思う。

※この後多くは語らないけど、ケリーのファイヤーワイヤーも、う~ん、なストライダーは、ほかの多くの周囲の人が思ってるのと同じように、ケリーも普通の板に乗ればもっと勝てるのに、的なニュアンスが見え見えで笑えた。

4:最終のトップ5に残るにあたって、何位が有利かって戦略はあるか?

ストライダー:やっぱり1位でいるのがいいかなと思う。ほかのヒートをゆっくり見てられるし、誰がどんな調子かとか、ジャッジの傾向も見れる。1位の場合一度負けてもセカンドチャンスがあるからね。最後に上がってきたサーファーと3ヒートやって2勝すればいい。勝つパーセンテージで計算すると、やはり1位の選手が最も高いんだ。

カイポ:そうだね。1位は有利だ。でももしかしたら最後のタヒチをスキップするサーファーも出てくるかも。とにかくタヒチからトラッスルズまでは時間がない。ボードや波に準備する期間が1週間無いんだ。トップ5の決まってるサーファーはタヒチをスキップしてロウワーに向けて準備する時間に使うかも。
いろんな戦略があると思うよ。2番手ってのは悪くないと思う。ほかの試合も見れるし、1ヒート勝てば1位の選手と勝負だから。

THE SURFNEWSさんからのご依頼を受けて、久しぶりにシャーマンにコンタクト。F+は休刊中だけど、ビハインド・ザ・カーテンのシャーマン節が久しぶりにうなってるので、そちらも合わせてお楽しみください。やっぱ臨場感があってとてもいいなぁ、と思う。

Steve Shermanが捉えた『Surf Ranch Pro』の舞台裏」からの一枚
PHOTO: THE SURF NEWS / Steve Sherman

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F+編集長つのだゆき

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