7月21日18時、大きな荷物を抱えた私たちチームジャパン。
この時はまだ誰も、この遠征がハードな旅になるとは予想していない。
今回の裏側リポートの舞台はハワイ、アラモアナボウルズで2日間にわたり開催された “Honua Finals“
今年で3回目を数える本大会は、ハワイで開催さている高校生のためのコンテストで、カリフォルニアやニュージーランド、カナダなど世界中の選手がエントリー。
ここ日本からは、強矢凛太郎が招待されていたことで、同じ一宮を拠点とし全日制の高校に通っているサーファーに拘ったチームが結成された。
メンバーは同級生の16歳が5名。
青木叶歩、嶋田大洋、窪田怜、草深心虹。
そして昨年度チャンピオンの18歳平田咲帆も招待され、チームジャパンが結成された。
私は今回、保護者の皆様からの依頼により、この旅に帯同した。現地では運転手も必須となる。

チームの帯同者として”コーチ”という名目ではあったが、今回のチームは普段から私がコーチングしているメンバーではない。それぞれが普段から信頼しているコーチがいらっしゃるのも承知している。なので彼らの気持ちを優先し、私から余計なことは言わない様にした。ただ、もしも相談したいことや試合のことで話したい希望者がいる場合は、しっかり寄り添い一緒に答えを導き出すよう心がけた。
今回の遠征は大会スポンサーであるハワイアンエアライン、アウトリガーホテルのご協賛により、エアーチケットとホテルが提供された。


当初20時過ぎに飛ぶはずだった私たちのフライトは、ネクストコール21時とアナウンスされ、待ち続けた末にフライトはキャンセル。羽田空港に一泊することとなった。
ハワイアンエアラインの対応は素早く、すぐに1人3万円分の宿泊、交通費が出ると説明を受けた。






現地での貴重な練習日が減ったことでもちろん焦りもあったが、皆が前向きに切り替えていた。
将来世界を目指すのであれば、これくらいのトラブル対応は当たり前。16歳でこの経験が日本国内でできたことが羨ましいくらいだ。
翌日別便で無事にホノルル到着。ホテルに荷物を置き、オープニングセレモニーへと向かった。
場所はWaikaiというウェーブプール施設。選手、コーチはプールでのフリーセッションとディナーがプレゼントされた。


海外選手たちが積極的に声をかけてくれ、早速たくさんの交流ができた。
こうして世界中のサーファーたちと交流ができることは滅多にない。ハワイという舞台に一歩踏み出しHonua Finals出場を決めた特権だ。サーフィン人生においてとても大切な財産となるだろう。
試合会場は想像以上にサイズアップ。
選手たちは早速ボードやライディングのチェックに取り組んだが、ここで技術だけではなく、普段どんな波で練習しているのか、そういった部分で各々に差があることに気づいた。
冬のノースショア経験がある者、普段からリーフブレイクで入っている者、サイズのある波を得意とする者。
普段からステップアップボードを使用する経験があると、いつ使うべきなのか、なぜそれが必要なのかが分かる。経験して積み上げていくものだと思う。
そういった経験がないことで、今日どの板で入ればいいか、試合はなんのボードで挑むのか、まずそこから考えなくてはならなかった。
それは仕方のないことであり、初めてのトライが大会なのだから、プレッシャーもあっただろう。もちろん彼らを責めているわけではない。今このタイミングで知ることができて、よかったとさえ思う。




今後世界を目指すのであれば、もっと早くからの海外経験、サイズもパワーも桁違いな波への準備をしなくてはならない。それは今大会に出場していた皆に言っているのではない。今をときめくキッズ世代の親御さんには、今のジュニアたちの現状をしっかりと見て、是非理解していただきたい部分だ。日本の小波ばかりで練習、小波のコンテストに必死に参戦し、その先の世界がこういったパワフルな波でどう対応すればいのか、子供達には分からない。
私がジュニア時代の頃から、世界戦への代表を決める選考会は毎年小波で行われた。ランキングで代表を決める大事な試合も大体が小波。
小波でトップになった選手たちが、エクアドル、ペルー、コスタリカなどに行き、サイズのある波に苦戦していたのを今でも鮮明に覚えている。
環境を選ぶ親御さんだけでなく、本気で日本サーフィンの未来を見据えるなら、業界から変わっていかなければならない。
ハワイを拠点に活動しているサーファーはこんなコンディションが当たり前。そこから大きな差が生まれてしまう。恐怖心や判断力だって桁違いだろう。
今すぐハワイに行けというわけではない。年間を通して何十戦と大会に出ているその予算を、インドネシア、オーストラリア、ボートトリップ、様々な海外遠征に使うべきなのではないかと改めて強く思った。






Honua Finalsに話しを戻そう。
チームジャパン最高位は準優勝の平田咲帆。
咲帆は昨年優勝した経験から、ボウルズの波、流れ、環境など、チームの中で一番よく分かっていた。
試合前の練習も大混雑している海に無理に入らず、じっくり波を観察してから短期集中サーフィン。周りが長く海に入ろうが、それに流されることはない。自分がやるべきこと、何がベストなのかを理解し試合に挑む姿がとても印象的だった。
終始好調だった窪田怜はあと一歩のところでファイナル進出を逃した。敗退後、落ち着いてから声をかけようかと思っていたが、ゼッケンを返した直後に自ら私の隣に座り反省点を話してくれた。
怜のパワフルなバックサイドターンは高く評価され、大会主催者側から “チームジャパンのあの子、すごくサーフィンがうまい!大会を盛り上げてくれてありがとう!“ と声をかけられたほどだ。怜は9月にISA世界選手権でも日本代表に選ばれている。今回のハワイでの経験を存分に活かしてほしい。
草深心虹はヒート中、かなりヘビーなワイプアウトで足を2箇所骨折。
練習では人が多すぎてセットの波には乗れなかったが、ヒートではどの波に乗るべきなのか、じっくりと見極めることができていた。その甲斐あってかなり掘れている波にテイクオフをし、挑戦した姿には拍手。
真面目な性格の心虹のことなので、次はどんな練習をしなければならないのか、どうすればあの波をメイクできるのかはもうすでに考えていることだろう。この怪我から復帰後、心虹はもっとパワーアップして帰ってくるに違いない。起こることには全て意味がある。焦らず、しっかり治して笑顔で海に戻って来るのが楽しみだ。




波数の少なさやポジションが2択ある中で、迷いなく自分のやるべきことを明確に理解していた強矢凛太郎。ヒートでは波まわりが悪くタイミングが中々合わない、悔しい敗退となった。昨年の冬は松岡慧斗のノースショアキャンプに一ヶ月参加した凛太郎。明日の波予想から使用するボードのことまで悩む姿は一度も見なかった。左ハンドルに不慣れな私の運転中も助手席でたくさんサポートしてくれたり、英語も話せるので頼りになる存在だった。国内のコンテストシーンにおいても思ったような結果が出せず悔しい思いをしているのを見かけるが、こういった経験が身を結ぶのもそう遠くないだろう。
普段あまりコンテストには出場せず、サイズのある波を得意とする嶋田大洋。あまり多くを語らないタイプで、時には何を考えているのか分からないが(笑)私の機嫌を察知する力はピカイチ(笑)
周りがステップアップボードを使うべきか否かの話をしている時には、凛太郎と一緒に静かに頷いて意思を示してくれたり、大洋もまた普段の経験から余裕を感じられた。今日板折りそうだなあって呟いたと思ったら本当に折ってきたり、ヒートでいきなり濃いメンバーに当たるんだよなあと気につつ大洋がしっかり1位通過したり、意外な一面も知ることができた。ハワイ帰国後は早速インドネシアへ渡航。彼好みの波をハントしに行った。
ハワイ出発直前に足首を怪我した青木叶歩。万全な状態ではなかったが、コンテストに向けてできることを精一杯やっていた。皆が海に入っている時間もサーフィンしたい気持ちをグッと堪えて、1人砂浜をウォーキング。出発前に医者から言われたことを守り、できる限りの準備をした。
今回の遠征で叶歩にとって一番大きかったのは結果だけではないはずだ。思い通りにならない状況の中で、どう準備するか。今の自分にできることをどう積み重ねるか、それもまた選手として大切な経験になっただろう。まずは足をしっかり治療し、またパワーアップした叶歩に会えるのを楽しみに待ちたい。



最もアロハの心持ちで参加したチームに贈られる”Aloha Spirit Award“
なんとチームジャパンが受賞。
とても光栄な賞をいただき、毎日ハプニングだらけだったことを思い出し、頑張ってよかったなぁって心から思えた瞬間だった。
Honua Finalsに携わるすべてのスタッフの皆様、心あたたまる素敵な大会にご招待いただき本当にありがとうございました。


記事の途中で、海外経験をもっとするべきなのではという私の意見を書いたが、そもそも頼る先がないのも現実。そんな状況を変えられるのなら、今年やたらと海外帯同が多い私が、何か協力できることはないかと検討している。普段英語を勉強しているのはこういうためだったのか?という気さえしてきた。
そういった気づきが生まれたのもHonua Finalsに参加したからこそ。
改めて私を選んでくださった保護者の皆様に感謝したい。
そしてチームジャパンのみんな。
結果は違えど各々思うことがたくさんあった旅になっただろう。
このハワイで過ごした時間が、これから先の彼らの力になっていくことを願っている。







帰りのフライトもまたもやトラブル。
もう一泊ハワイになるのかと羽田空港一泊したことを思い出しドキドキしたが、大遅延の末、無事夜中に帰国。自宅についたのは午前3時。
行きも帰りもイレギュラー、毎日何かしらのハプニングが起こったハワイ遠征、これを乗り越えたみんなを誇りに思う。みんなはこの先、何があっても大丈夫。
今大会に参加するにあたりスポンサーしてくださった企業様や個人の方、そして現地でたくさん助けてくれた皆様への感謝の気持ちを忘れずに、今後の皆の活躍を心から応援しています。

(高橋みなと)























