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ガブリエル・メディナ&キャロライン・マークスが優勝!『リップカール ノースナラビーン クラシック』

90年代に多くのWSLイベントが開催されていたNSW州にCTイベントが回帰。

そんなキャッチコピーで開催された『リップカール ノースナラビーン クラシック』
4戦開催されるCTオーストラリアレッグの2戦目となるこのイベントは、シドニー近郊、ノーザンビーチと呼ばれるクオリティの高い多くのビーチブレイクの中でも有数のスポットであり、2xワールドチャンピオン、ダミアン・ハードマンを始め多くのCTサーファーを輩出しているノースナラビーンが舞台。
4月17日から4日連続で進行して20日に終了した。

マーク・リチャーズのお膝元であるニューキャッスルで開催された『リップカール ニューキャッスルカップ』から一週間。

ノースナビーンにはコンスタントに南ウネリが入り、オフショアでこの時期にしてはグッドコンディション。
例年ならばスナッパーロックス、ベルズと世界を代表するポイントブレイクが舞台になっていることを考えると物足りなかったが、90年代のツアーはこのような波が普通であり、そこからドリームツアーと呼ばれるまでに改革が行われたのだ。

ミック・ファニング vs イタロ・フェレイラ

(久々にジャージを着たミック)
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ナラビーンでの一つの目玉、ファンサービスの一環にもなったのがミック・ファニングのワイルドカード獲得だろう。

長年のスポンサーのイベントであり、コロナで状況が厳しくなっているサーフィンコンテストを活気づける意味でもミックの参加は大きかった。
シード的にも計算されたかのように引退試合となった2018年のベルズでファイナルを戦ったイタロ・フェレイラとRound of 32でマンオンマン勝負。
イタロのエアーショーに完敗だったものの、このようなビーチブレイクでなければまだCTレベルで戦えることを示していた。

ちなみにミックは試合前にデュランバーでどんな波でも相当数の練習をこなしていたとのこと。
今年の6月で40歳。今後もワイルドカードでの出場は数回あるかもしれない。

都筑有夢路 vs キャロライン・マークス

(都筑有夢路)
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腰痛で急遽イベントを欠場したレイキー・ピーターソンのリプレイスメントとして出場した都筑有夢路はRound of 16)でオリンピックのアメリカ代表でもあるキャロライン・マークスと対戦。

日本で良くあるようなビーチブレイクでの勝負。
ヒートの戦略やスコアのまとめ方など19歳にしてすでに数年のキャリアを持つキャロラインが一枚上手だったことは否めないが、経験で埋められる範囲だった印象。
まだこのイベントでは楽しむことが目標だとコメントしていた彼女が次のマーガレットリバーでどれだけ成長するかに注目したい。

五十嵐カノアはWSLファイナルに残れるのか?

(五十嵐カノア)
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今イベントではコナー・コフィンとのQFで波数が少ないヒートに重なってしまい、プライオリティの判定などでミスをしてしまった五十嵐カノアだったが、今シーズン2度目の5位を獲得してランキング4位を維持。

今シーズンはトップ5が「WSLファイナル」と呼ばれるプレーオフのようなシステムでワールドタイトルを決めるため、シーズン最後に5位以内に入っていればチャンスがある。
発表されたばかりのオーストラリア以降のスケジュールを見るとカノアが過去にコンスタントに結果を残してきたサーフランチ、ブラジルがあり、ルーキーイヤーから年々ランキングを上げて直近の2019年が6位ということなどを考慮すると「WSLファイナル」に残る可能性は十分にある。

キャロラインが優勝 トップはカリッサが維持

(優勝したキャロライン)
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メンズサイドよりもクロスゲームが多かったウィメンズは前日まで活躍してウィメンズで唯一8ポイント台を3本も出していたジョアン・ディファイ(FRA)をQFで倒したキャロラインが流れに乗り、SFでコートニー・コンローグをラスト3分で逆転。

ファイナルでは先行したタティアナ・ウェストン・ウェブを中盤に追い抜き、最後はバックアップスコアを伸ばして彼女らしい堅実な勝利を収めた。
レフトオンリーとなったファイナルで見せたパワフルなフロントサイドは今までバックサイドのイメージが強かった彼女を払拭させるような威力があった。

ここに至るまでの全ての経緯を考えると、感無量よ。最高の勝利、今までで一番嬉しい。ナラビーンは素晴らしい場所で、最高のレフトだった。この場所を1週間貸してくれた地元の皆んなに感謝する。支えてくれた家族、スタッフ、WSLにも感謝しているわ。最高よ」
キャロライン・マークス

まだ19歳の彼女にとってCT通算3勝目は序章でしかなく、ランキング2位に浮上。
早くもワールドタイトルが見えてきたようなイベントだった。

なお、カレントリーダーは今回3位に入ったカリッサ・ムーアが維持している。

(フロトンサイドも強かったキャロライン)
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ナラビーンで見せたギャビーの逆襲

(全てがナンバー1となった一日)
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2014年の開幕戦の優勝を除くとギャビーことガブリエル・メディナはオーストラリアレッグが最大の弱点と言われていた。
2014年から2019年までランキング3位以上を維持という驚異的な成績もシーズン後半にエンジンがかかり、ヨーロッパで追い上げるというパターンが多いのだ。

しかし、継父チャーリーのコーチから離れてミック・ファニングのワールドタイトルに貢献したアンディ・キングという新コーチを得た今年は流れが変わった。

もちろん、彼の超人的な才能と’Gab 2.0’と称された進化もあるが、2021年シーズンのCTで3戦連続ファイナル進出、2019年のパイプも含めると4戦連続という異常な確率でファイナルに進み、ナラビーンではファイナルにピークを持ってくることに成功して9ポイント2本の文句なしの優勝。

(ギャビーの強さが際立った)
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フロントサイド、バックサイド両方でのフルローテーションエアーはもしこの場所にイタロがいても歯が立たないパフォーマンスだった。
カリフォルニアのコナー・コフィンを相手に僅か10分程度で決着をつけてしまい、ライバルのイタロ、ジョン・ジョンを抑えてカレントリーダーの座を手に入れた。

「こんな感じの優勝は久々だね。最高さ。ファイナルのあのパフォーマンスには満足している。エアーを決め、ギャラリーの声援が飛ぶ。これ以上の喜びはないよ。続けてファイナルに進んでいる直近、全てミスで台無しにしていたけど、今回はそれを修復できた。楽しい一週間、今までこんなにオーストラリアで良い時間を過ごしたことはないよ。食べ物もビーチも人々もみんな素晴らしいノーザンビーチとサポートしてくれた皆んなに感謝したい」
ガブリエル・メディナ

ギャビーとコナー、そして2戦連続でジョン・ジョンを倒したモーガン・シビリックはリップカールのチームメイトでもある。
きっとこの晩はコロナの制限もないバーで祝杯を挙げたことだろう。

ツアー一行はNSW州から西オーストラリア州に飛び、5月2日〜12日にCT第4戦『Boost Mobile Margaret River Pro』がマーガレットリバーで開催される。

CT第3戦『リップカール ノースナラビーン クラシック』結果

メンズ
1位 ガブリエル・メディナ(BRA)
2位 コナー・コフィン(USA)
3位 フレデリコ・モライス(PRT)、グリフィン・コラピント(USA)
5位 イーサン・ユーイング(AUS)、モーガン・シビリック(AUS)、五十嵐カノア(JPN)、ヤゴ・ドラ(BRA)

ウィメンズ
1位 キャロライン・マークス(USA)
2位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
3位 カリッサ・ムーア(HAW)、コートニー・コンローグ(USA)
5位 キーリー・アンドリュー(AUS)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)、ジョアン・ディファイ(FRA)、ステファニー・ギルモア(AUS)

WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/

(空海)

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