PHOTO: © WSL/JEREMIAH KLEIN

トラッセルズの保護が重要な理由とは?

カリフォルニアにサーフトリップに行くなら一度は訪れたいトップ3に入るサーフスポット、トラッセルズ。

玉石の上で割れる規則的でA-framesの波はスケートボードパークのようだと称されるほどのマシンブレイクで、駐車場からは結構な距離があるのにも関わらず、波が良い時は常に混雑している。

サーフブランドのヘッドクオーターが集まるサンクレメンテにあるこの波はすでにウェイティングピリオドに入っている「WSLファイナル」の開催地でもある。

トラッセルズが特別なのは、波だけではなく、未開発の豊かな自然が残されているところだ。
また、目の前を通るアムトラック(鉄道)もトラッセルズの雰囲気を盛り上げるのに一役買っている。

この15年間は6車線の有料高速道路開発の問題で揺れ動いていたが、2020年秋に15年間の戦いに勝利宣言をした。

地元民と先住民族が愛する場所

WSL PUREが主導してWSLが支援している環境保護のための『We Are One Ocean』のメンバーであり、別の環境保護団体「WILDCOAST」のエグゼクティブ・ディレクターでもあるセルジュ・デディナ氏はこのトラッセルズへの思いをWSLに投稿した。

NSSAの高校生コンテストに出場するために南カリフォルニアのサンオノフレ・ステート・ビーチの西端にあるアッパー・トレッセルズのトレイルを初めて歩いたときのことを今でも覚えているよ。

42年前、1979年。15歳だったあの日に掴んだ波の記憶は薄れたけど、サンマテオ・クリークの緑の天蓋や、列車の線路の向こうに見える砂丘や砕け散る波を初めて目にしたときのことは、今でも鮮明に覚えている。
まるで魔法のようだった…。

魔法?

そう感じているサーファーは私だけではないんだ。

トレッセルズのAフレームの波に乗って育ち、プロのビッグウェーブサーファーとしてのキャリアをスタートさせたグレッグ・ロングは、サンオノフレ・ステート・ビーチを「本当の宝物」と呼んでいるよ。

「サンマテオ・クリークは南カリフォルニアでも数少ない自然のままの水路のある流域のひとつ。複数の絶滅危惧種が生息し、Acjachemen族(ネイティブアメリカン)の文化的歴史もあるこの場所は、開発が進む前の南カリフォルニア沿岸の様子を垣間見ることができるんだ」
グレッグ・ロング

トレッセルズは考古学者の間で少なくとも9,600年前のものであると言われるパンエと呼ばれる村の遺跡にある。
パンエは「水辺の場所」という意味で、サンマテオ渓谷からトレッスルズのビーチまで続くネイティブアメリカンの聖地であり、Acjachemen族の最大の村があった。

PHOTO: © WSL/Danny Hardesty

守るべき場所

この公園とサンマテオ・クリーク流域の保護に尽力してきた「Endangered Habitats League」のCEOであるダン・シルバー氏も、グレッグと同じような思いを抱いている。

「サンオノフレ・ステート・ビーチとトレッスルズは文化的、生物学的、レクリエーション的な価値が融合した稀有な場所として重要である。河口、小川、高地には驚くべき11の絶滅危惧種が生息しているんだ」
ダン・シルバー氏

現在もこの部族はパンエを最も神聖な場所と考えている。
この村は現在のキャンプ・ペンドルトン海兵隊基地、サンオノフレ・ステート・ビーチ、そしてサンクレメンテの町の大部分を占める谷全体に広がっていた。
今でもサンマテオ・キャンプ場内の指定された場所で儀式と祖先の散歩を行っており、そこは部族の埋葬場所でもある。

(2008年2月7日、デルマー・フェアグラウンドで開催されたTCA有料道路案に関するカリフォルニア沿岸委員会の公聴会に出席したグレッグ・ロングとインペリアルビーチの子供達。数千人の参加者を集めたこの公聴会は、カリフォルニア州の沿岸委員会の歴史の中で最大の一般市民の集まりだった)
PHOTO: © WSL/WILDCOAST

Save Trestles

Acjachemen族が残した自然とサンオノフレ・ステート・ビーチ、トレイルやキャンブ場は年間250万人以上の観光客を集める。
この象徴的な景観がかけがえのないものであることは明らかだ。

サンオノフレ・ステート・ビーチ、特にトレッスルズが一般市民、特にサーファーに愛されているにもかかわらず、TCA(Transport Corridor Agency)が公園の真ん中に有料道路を建設するという大胆な提案をしたというのは、驚くべきことだった。

2005年から何千人ものサーファーがTCAの提案したカリフォルニアで最も愛されている州立公園のひとつを引き裂いてしまう高速道路プロジェクトに”Save Trestles “を掲げて抗議した。

この”Save Trestles “という言葉は南カリフォルニアのサーファーや環境保護活動家たちの叫びとして大きな抗議運動に発展したのだ。

2008年2月7日に開催されたたTCA有料道路案に関するカリフォルニア沿岸委員会の公聴会では、サンクレメンテに住むAcjachemen族のレベッカ・ロブレス氏が「カリフォルニア州沿岸法を守るよう、あなた方に提案します。パンヘは、私たちが精神的な個性を楽しむことのできる残された場所のひとつです。この神聖な場所を守っていただきたいのです」と述べた。

PHOTO: © WSL/JEREMIAH KLEIN

セルジュ・デディナ氏は米国内外でさまざまな環境保護キャンペーンに携わってきた自然保護主義者として、カリフォルニア州の歴史上、最も画期的で包括的な海岸保護運動のひとつである「Save Trestle」の創意工夫、創造性、多様性、そしてエネルギーに圧倒され続けたと話す。

また、米国サーフライダー・ファウンデーションのCEOであるチャド・ネルセン氏は、「何十年にもわたるSave Trestleキャンペーンは、私たちの愛する海岸の場所を誰もが、そして永遠に守るための教訓の宝庫です。最初の教訓は忍耐が報われるということです。私たちは何十年も諦めず、勝利しました。
第二に人々の力が重要です。100対1の割合で資金が不足していましたが、重要な時に現れた何千人もの人々が私たちの味方であり、それが功を奏したのです。
最後には、’村’が必要だということです。私たちサーファーの草の根的な組織化により、政治的・法的な戦略などでそれぞれの強みに集中できる。強力で統率のとれた連合体を持っていました。
勝つためには、すべてが必要だったのです」
と語っている。

このキャンペーンは、カリフォルニア先住民遺産委員会(California Native Heritage Commission)によるAcjachemen族のための訴訟や、サンオノフレ保護連合(Save San Onofre Coalition)による訴訟などを含み、最終的には2020年にカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムがターシャ・ボアナー・ホーバス下院議員の議会法案AB1426に署名することでサンオノフレ・ステート・ビーチ、そこに流れる河川の流域内の新たな道路建設ができなくなり、絶滅危惧種を含む豊かな自然と世界的に有名なサーフポイントへの影響が回避できた。

PHOTO: © WSL/JEREMIAH KLEIN

恒久的に海岸を守り続けるために

「海岸は一度守ればいいわけではない。常に守り続けなければならないのだ」という言葉通り、現在サンオノフレ・ステート・ビーチの長期的な保護・管理に不可欠なリース契約の更新に向けた取り組みが行われている。

サンオノフレ・ステート・ビーチは1971年にロナルド・レーガン知事とリチャード・ニクソン大統領の間で合意されたアメリカ海軍との50年間のリース契約により誕生。
その契約が今年で終了したのだ。

長年トラッセルズでサーフィンをしてサンオノフレ・パークス財団の創立者でもあるボブ・ミニョグナ氏は「スティーブ・ロングとサンオノフレ・パークス財団がサンオノフレ・ステート・ビーチのリース更新に6年間取り組んだ結果、2021年8月31日、同日深夜に期限切れとなる50年リースの3年延長が海軍とカリフォルニア州立公園によって署名された。サンオノフレ・パークス財団は海軍とカリフォルニア州と協力して、50年間のリース契約を手頃な価格で更新した。これによってローワー・トレッスルズを含む公園内の自然のままのサーフブレイクが何世代にも渡って一般に開放されるようにすることを約束する。
今回の3年間の延長は、すべての関係者にその契約を熟慮して準備する機会を与えるものさ」
話している。

「もし、新型コロナウイルスから学んだことがあるとすれば、私達はアウトドアが好きだということだね。カリフォルニアのサーフスポットや海岸沿いの州立公園は、今まで以上に人気のあるレクリエーションの宝庫だよ。私たちは今日も明日も未来の世代のために、この素晴らしい資源を守らなければいけないんだ」
サーフライダー・ファウンデーション チャド・ネルセンCEO

なお、WILDCOAST、WSL、その他90以上のNGOと企業の連合は、2021年の国連生物多様性条約において、2030年までに国際水域を含む全世界の海の少なくとも30%を保護・保全するという目標を採択するよう世界の指導者に呼びかけている。

私達は科学によって推進され、すべての利害関係者のコミュニティを受け入れ、すべての国の人々にとっての海洋の価値を考慮した包括的なプロセスによって導かれることを世界の指導者に強く求める。

参考記事:Why Saving Trestles Still Matters


サンオノフレを代表するアンディ・ニブラスもAcjachemen族だ。

(空海)

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