トラッセルズはハイパフォーマンスサーフィンを象徴するサーフポイントでかつてはCT会場にもなっていた Photo: WSL / Sean Rowland

米トラッセルズ、道路開発から守る15年間の戦いに勝利宣言

南カリフォルニア屈指のサーフポイント「トラッセルズ」を含むサン・オノフレ州立ビーチを6車線の有料高速道路開発の影響から守る15年間の戦いがついに報われた。ニューサム州知事が議会法案AB1426に署名したことでサン・オノフレ州立ビーチまたそこに流れる河川の流域内の新たな道路建設ができなくなり、絶滅危惧種を含む豊かな自然と世界的に有名なサーフポイントへの影響が回避できた。

未開発の豊かな自然が残るトラッセルズ Photo: THE SURF NEWS

1971年に当時の州知事ロナルド・レーガンによって設立されたサン・オノフレ州立ビーチはサーフィン以外にもハイキングやキャンピングで人気が高く、年間おおよそ250万人が訪れ、サンクレメンテ市に年間800万ドルの収入をもたらす。サーフィンは1930年代から行われていたと言われている。

2005年、トラッスルズに流れるサン・オノフレ川などの流域を横切る6車線の有料高速道路の建設計画に反対して、サーフライダー・ファンデーションを含む12の団体で構成される同盟「Save San Onofre Coalition」(SSOC)が設立された。
サン・オノフレ州立ビーチは南カリフォルニアに残る未開発の河川流域として最も自然豊かな場所で道路が建設されれば、11の絶滅危惧動物への影響のほか、先住民の聖地が汚染されてしまう。また、トラッスルズなどサーフポイントに砂利を供給する川の流れが邪魔されてしまうと、サーフポイント自体への影響も懸念される。

貴重な生態系へのダメージをおさえるため、トラッセルズは通常は車両の乗り入れが禁止されていて、プロでも自転車か徒歩でビーチへ Photo: WSL / Steve Sherman

多くの市民を動員、多方面で働きかけた長期の攻防戦が遂に終結

SSOCが開発に関する公聴会などに多くのサーファーの参加を呼びかけ、懸念の声を行政に届けた。水面下で進めていた準備や根回しを明かし、パドルアウトなどでサーフィン界へ危機感を広めた。州議会議員にも働きかけ、様々な方向から戦略的な戦いを展開した。

その結果、2016年に開発を諦める和解契約が結ばれ、SSOCの多額の裁判費用の一部が保証され、戦いがついに終わったと思われた。ところが、翌年には和解契約の解除を求める訴訟が始まり、開発者が何度も計画を変え、議論が何度も法廷まで持ち込まれ、長期にわたる複雑な戦いとなった。

今回の法案で永久的にサン・オノフレ州立ビーチ流域内の道路開発ができなくなり、市民が組織的に立ち上がり大切なものを自分たちで守った成功例として歴史に記録される結果となった。

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▲トラッセルズを守ろうとSNSで広く呼びかけられた

新しい法律を祝福すると共に、カリフォルニアの海岸保護を目的とするカリフォルニア・コースタル・コミッションの前取締役ピーター・ダグラスはこう話す。

「海岸は一度守ればいいわけではない。常に守り続けなければならないのだ。」

(ケン・ロウズ)

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