建設中止の可能性大?!千葉・木更津の人工サーフィン施設「サーフランチ東京」

WSLがプロ向けの巨大ウェーブプールを日本に作ろうとしたのは、もちろん、五輪会場としての採用や、それに付随するプロモーション効果を狙ってのことだろう。

それを裏付けるかのように、親会社WSLのCEOソフィー・ゴールドシュミッド氏は、国際サーフィン連盟のフェルナンド・アギーレ会長が昨年5月に「五輪はプールでなく海」発言をした後も、オリンピック会場として人工サーフィン施設利用を目指していることを公言していた。

業界内では、昨年夏頃の建設許可遅延、昨年秋以降の着工遅延など、2020年東京五輪会場としての採用可能性が低くなるにつれ、建設中止を憂う声が徐々に大きくなってきていた。現時点では、多くの業界人が「建設中止だろう」との意見に至っている。

さらに追い討ちをかけるかのように、今月12日、英スポーツメディアにより2024年パリ五輪でもウェーブプール不採用と報じられた。ソフィーは、今年2月のインタビューで、パリもターゲットとしていることを明言しているが、今月に入り2024年パリ五輪組織委員会のトップが以下のコメントを発表したのだ。

「サーフィン競技で人工波施設は使用しません。フランス国内にはサーフィンの試合にも十分に使える自然の海の会場がいくつかあります。自然の海で開催するための専門知識はあるので、人工波施設へのインフラ投資をする気はありません。」2024年パリ五輪組織委員会 トニー・エスタンゲ委員長

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サーフランチは採算性が課題?

建設中止の根本的な理由の一つとして「採算性が課題」だと見る者もいる。

そもそも、このサーフランチ建設はかなり大規模なもので、総工費は数十億円、ランニングコストの面でも波一本あたり数万円とも言われている。

既に一般利用向けに施設公開されているWavegarden社の「スノードニア(イギリス)」や、American Wave Machine社の「BSRサーフリゾート(アメリカ)」の利用料は、どれも大人1人あたり数千円。

それに比べても、サーフランチは一般人が到底利用できるような金額ではなく、木更津が完成した後も原則一般公開はせず、プロ向けのトレーニング施設または試合会場として使用される予定だった。

木更津とおなじくプロジェクト進行中と報じられていたフロリダのサーフランチは、当初一般公開予定だった。しかし、今月に入り、WSLは公式サイト上で建設中止を発表。理由は地下水位の問題が解決できなかったこととしているが、一般公開できるまで採算の見通しが立たなかったのでは、と推測もできる。

フロリダについては単なる憶測にすぎないが、それでもサーフランチビジネスのターゲットとしては、やはりBtoBかBtoGとみるのが妥当なところだろう。ビッグスポンサーが付きそうなCTレベル以上のイベント会場として運営するか、五輪をはじめとする国レベルのイベントやトレーニング施設としての運営を目指すか、といった選択肢にならざるを得ないのではないだろうか。

木更津についてはまだ確定情報はないが、このまま建設中止となり、パリも望みがないとすれば、次の建設地はどこになるのだろうか。先述のWSLのソフィーCEOは、東京・パリ以外の候補地としてオーストラリア・ブラジル・ロサンゼルスを挙げているが、すでにあるカリフォルニア・Lemooreのサーフランチ以外に、本当に普及していくのだろうか。

余談になるが、千葉県内においては、木更津よりさらに都心に近いエリアでサーフランチの競合他社による建設計画があり、先日の報道のとおりグレッグ・ウェバーの人工リーフ建設の噂もある。 ここ数年で世界的に人工サーフィン施設の建設ラッシュを迎えているが、日本も例外ではないのだ。

加熱するウェーブプール市場争いで、WSLはどのようなポジションにたどり着くのか?日本に本格的なウェーブプールが誕生する日は、いつくるのだろうか?今後の動向についても追いかけていく。

(THE SURF NEWS編集部)

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