シングル・ツイン・トライは、こうイメージすればよく解る(第三章)

分かっているようで分かっていないフィンとフィンセットアップを徹底的に考えてみよう。

第三章: トライフィンはオールラウンドなフィンセットアップ

短い3本の尻尾の『凧』がトライフィンのイメージです。左右にもクイックに反応し、強い風にも安定しているために急旋回で墜落ということもありません。

もしサーフボードを一本だけ持って旅へ、となれば筆者はトライフィンを選びます。その理由は大波小波どんなコンデションにも対応するオールラウンドなフィンセットアップだからです。サーフボードの進化において最も重要なデザインの1つであるトライフィンは、サイモン・アンダーソンが「スラスター」という名前で1981年に発表し、あっという間に世界中に普及しました。

その性能の良さはプロサーファー のほとんどがこのトライフィンを愛用していることでも理解できます。現代のサーフィンはトライフィンを無くしては語れず、他のフィンセットアップを圧倒し、80年代から90年代にかけて「トライフィンは世界を制した」といえるほど普及しました。

https://www.surfline.com/surf-news/happy-birthday-thomas-roland-curren_111592/
トライフィンのマスターと言えばこの人、元世界チャンピオン、トム・カレン

トライフィンは、サイドとセンターのフィンが波のフェイスをがっちりととらえるために、サーフボードが短くても高速安定性が得られ、さらにターンのときには、センターフィンとサイドフィンのコンビネーションによって回転をスームスにします。仮に1枚のフィンが波のフェイスから外れても2枚のフィンがホールドしていますから、オーバースライドやスピンアウトの心配がいらないのです。

トライフィンはシングルフィンとツインフィンの良さを組み合わせたセットアップ。スモールウェイブだけでなくビッグウェイブでも性能が証明されて普及した

ツインフィンもトライフィンも、サイドフィンのトーインによる効果でターンが容易になりますが、トライフィンはセンターフィンがあるために凧の中心の尻尾のようにターンを安定させてくれます。
一方ツインフィンはサイドフィンしかありませんから、ターンのときに不安定な要素が常につきまといます。シングルフィンの安定性とツインフィンの回転性の良いところを兼ね備えたトライフィンは、ライダーの意思に最も忠実に反応してくれると言えるでしょう。

このトライフィンを発明したサイモン・アンダーソンは、身体が大きく下半身のバネが強かったためにツインフィンではオーバーパワーになってしまいシングルフィンに乗りつづけていました。しかしある日フランク・ウイリアムズという友人がツインフィンの中心に小さなセンターフィンを付けているのを見てアイデアが湧いたといわれています。

https://www.surfresearch.com.au/1981_Simon_Anderson.html 1981年のベルズの大波で勝ったサイモン・アンダーソンは、パイプラインでも勝利しメディアの注目を集めた。このドラマチックな結果がトライフィン普及の大きな引き金となった

トライフィンはシンプルなアイデアですが、まだ誰も考えつかなかったセットアップでした。シングルフィンとスタビライザーや、ボンザーなどのセットアップはすでに存在していましたが、3枚の同じ大きさのフィンというセットアップはこのスラスターが最初だったのです。しかし当時はMRのツインフィンが大流行していた時代であったために、サイモンは、このトライフィンを人に見られるのが恥ずかしかったと後にコメントしています。

トライフィンが登場するまでのハワイでは、ビッグウェーブはシングルフィンでサーフィンをするものという考えが圧倒的でしたが、トライフィンによって劇的な変化が訪れました。ツインフィンが大流行していたときでさえマーク・リチャーズもハワイのビッグウェーブではシングルフィンを使っていました。しかしサイモン・アンダーソンがパイプラインでトライフィンを使用し優勝。ノースショアーのコンテストで、シングルフィン以外のサーフボードで初めて勝ったサーファーとなったのです。

フィンの角度の違いからわずかな抵抗が発生する。通常のサーフィンではライダーはほとんど感じないが、とくにエキストリームなサーフィンでは、波のトップでスタックすることがあると言われている。

トライフィンの弱点

トライフィンの唯一の弱点は、複数のフィンによる抵抗が発生することです。サイドフィンはツインフィンと同じように内側にトーインしています。その効果で、安定が得られる代わりに抵抗が発生します。さらにサイドフィンのセンターフィンとの間にも抵抗が発生します。ただし、いずれもそのわずかな抵抗を利用して、直進性や回転性を補っているので欠点とまでは言えませんが、波のパワーポケットから外れると失速しやすいのです。そのためにライダーは常にターンを繰り返してスピードを維持しなくてはなりません。(注、抵抗はフィンだけでなく、サーフボード本体と波のフェイスとの間にも生じていることを覚えておこう)

この弱点は、通常のサーフィンでライダーが感じることはほとんどありませんが、エクストリームなコンデションではそのデメリットが大きく現れると言われます。ワイメアのようなビッグウェーブをドロップするときに、急激に大きな水流による負荷がトライフィンに掛かるために、そのわずかな抵抗でドロップが遅れサーフボードが一瞬スタックすることがあるとハワイのシェーパーから筆者は聞いたことがあります。現代のエクストリームサーフィンではクアッドフィンが主流ですが、おそらくトーインの角度を変えて抵抗が発生しないように調整してあると思われます。

トライフィンのチューンナップ

初期のトライフィンは、オンフィンと呼ばれサーフボードに樹脂で固定されていました。しかしサーフトリップのときに梱包しにくく、しかも壊れてしまうトラブルが多発しました。そこでフィンプラグが誕生し、さまざまな個性をもったフィンが登場するようになりました。それぞれのフィンは材質によるフレックスの違い、さらに流体力学に基づいたカービングとバリエーションは豊富です。フィンを変えるだけでサーフボードのレスポンスが大きく変化します。加速性が高まったりボードを回しやすくなったりと、いろいろなフィンを試してみることをお勧めします。

裏技としてはセンターフィンだけをサイドより少し小さいフィンに付け替えるというのがあります。そうすることにより回転性が向上します。特に体重の軽い人や、非力な女性でターンができないと悩んでいる人は、センターフィンをサイドフィンの半分くらいに小さくするのも1つの方法です。驚くほどターンが簡単になりますよ。

センターフィンを小さくすると回転性が向上する。樹脂性の安価なフィンでも十分に効果はある。futuresfins.com

(李リョウ)

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