(オーストラリア) Photo by snowy

「育成と金(後編):ドアを開ける勇気と、壁を越えるという信念」 – F+コラム

F+(エフプラス)

前回、問題は金銭的援助がないことではない、と書いたけど、日本の子供たち、一部のスーパーキッズと言われる子供たちのように、小中学生からスポンサーのステッカーでボードがいっぱいなんて、どこの国にもないことなのだ。例えばオーストラリアなら、小中学生で日本のそういう子のレベルのサーフィンであれば、ようやく近所のサーフショップから物品がもらえるかもらえないかみたいなレベルだ。遠征費の足しとしてではあってもお金をもらえるようになるのは、QSの上のほうにいてCS入りをうかがう頃からなのかと思う。まぁ、今やCT選手でも物品だけの契約とかある不況の時代なので、いかに日本の子供たちが恵まれているのかということをもう一度考えてみてほしい。

世界に出るというのはワールドスタンダードでの実力の比較だ。国内でどれだけ飛び抜けていようが、世界に出ればまるで通用しないのであれば、経済的ヘルプもへったくれもないわけで、それは仕方のないことなんだと思う。世界との差がお金で解決できるなら、それがいくらであっても安いもんだとは思うけど、根本的な問題はお金ではなくて実力不足なので、すぐには解決できそうにない。

(Jベイ) Photo by snowy

世界に出ていろいろなものを見るようになって約40年になるけど、その間ずっと、日本に、日本人に何が足りないのか、何があれば世界で戦えるのかをずっと考え模索してきた。たくさんのものが足りないんだけど、最近またひとつ発見したのは、そしてそれが致命的欠落だと思うのは、世界のトップレベルで求められているサーフィンを、日常的に練習できるクオリティの波がない、ということだ。同じ身体能力とやる気のあるサーファーを、日本で練習させるのか、バリで練習させるのかで、結果は大きく変わると思う。だからと言って、外国に住めばうまくなる(そう思ってる人がたくさんいるけど、違います(笑))わけでもないんだな、これが。

例えばオーストラリアに住んで、あのレベルの高いゴールドコースト、スナッパーロックス周辺のお手本ばかりがうじゃうじゃいるポイントで練習しても、世界が確約されるわけではないし、逆に世界の壁の高さをいやというほどわからされるはずだ。挫折に次ぐ挫折、故郷に錦を飾るなんて夢のまた夢で、何とか理由を考えて帰国するのがオチだ。現実に海外に拠点を置いて世界を目指した選手も何人もいるわけだけど、現状ではそれが功を奏した例は考えつかない。

この高い壁にぶつかったときに、自分がそれを超える、超えられると信じて進めるかどうか、その立ちはだかる壁の中に突っ込んでいけるかどうか、だと思う。
私は選手としてではないけど、世界に出た。どうやったら世界のメディアの中でみんなと同じ土俵に立てるのかをものすごく考えたし、オーストラリアやアメリカのメディア人のように選手たちとの距離を縮められるかを考えた。そしてそのための努力もした。
ただ、今になって思えばそんなことはどうでもよくて、シンプルに鍵の開いているドアを勇気を出して開けばよかっただけだ。中に入ってみてみんなに言われた。ドアはいつだってワイドオープンなんだよ、って。でもね、日本人としての日本の常識を捨て去るのは勇気のいることだったし時間もかかった。今思えばそんなことは必要ではなかったわけだけど。

この日本人特有の日本人としての呪縛のようなものの正体が何なのかはわからないけど、簡単にドアを開けられないのが日本人だ。ここは選手にも共通するんだと思う。日本で生まれ、日本で日本人として育った選手が世界に出る大きな足かせのひとつであることは確かだ。

F+編集長つのだゆき

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