7月31日に発売された「ザ・サーファーズ・ジャーナル」日本版16.2号の読みどころを同誌のコントリビューティング・エディターも務める李リョウが紹介。

Lingua Franca(共通言語)
英語圏のサーフエリアを旅すれば、日常的に耳にする「Stoked(ストーク)」や「Gnarly(ナーリー)」といったサーフスラング。今号の巻頭エッセイは、そのような「言葉」とサーフ コミュニティにフォーカスする話。
日本語の「良い波」は、インドネシアなら「Ombak Bagus(オンバック・バグース)」、ブラジルでは「Boas Ondas(ボアス・オンダス)」。さらに、ハワイのピジン英語「Da Kine(ダ・カイン)」に至っては、ひと言では言い尽くせない独特のニュアンスが含まれる。旅先でこうした言葉に触れるたび、国や文化が違えどサーファーの根底にある感覚は皆同じなのだと実感させられる。
著者はオーストラリアのサーフジャーナリスト、ティム・ベーカー氏。本誌の巻頭エッセイといえば、ときに知的で内省的な深さに圧倒されることもあるが、彼自身の瑞々しい旅の記憶を交えた今回のテキストは実に小気味よく、すんなりと胸に染み入る。世界のサーファー言語を味わいながら、肩の力を抜いてページをめくってほしい。

The Art of Beach Life(佐久間 浩の世界)
鎌倉の奥座敷とも言える葉山。シークレットポイントにパドルアウトし振り返れば、フクロウの類が息づく深い山々が間近に迫る。
葉山のローカルサーファー、佐久間 浩。そう聞いてもピンとこない読者は少なくないかもしれない。早逝した孤高のビッグウェイバー・佐久間洋之介の父、と言えば合点がいくサーファーも多いはずだ。
わたしが鎌倉へ移住したばかりのころ、洋之介との縁から、見開きを飾る「佐久間小屋」へと誘われた。洋之介から「サーフィンの写真を撮っている」と紹介されると、佐久間氏は「水中でも撮るのか」と鋭い眼差しで問いかけてきた。自身もニコノスを手に海へ泳ぎ出し、波を切り取ってきたのだという。小屋の中で見せてもらった葉山や逗子の波の写真群は、濃密な海の気配を漂わせていた。
全国的な知名度はなくとも、その海を知り尽くし、ローカルから絶大な敬意を集める存在がある。佐久間 浩とは、まさにそうした人物である。
(追記 巻末に佐久間洋之介の写真が公開されています)

Portfolio: Nick Green(ポートフォリオ:ニック・グリーン)
個人的に強く心惹かれる作品群だ。サーフフォトグラファーという種族は、被写体へ極限まで肉薄したがる習性があり、それが高じて魚眼レンズを手にサーファーとともにバレルへ飛び込む者も少なくない。しかし、彼の写真を見ていると、それだけが表現のすべてではないと思い知らされる。
スーパーヘビーな「シップスターンズ」でレンズを構えているだけに、凄まじいテイクオフや壮絶なワイプアウトのカットも数多くあるはずだが、今回掲載されているのはわずか一枚。声高に自己を誇示することのないその静かなスタンスこそが、観る者の目を引きつけて離さないのだろう。

Dust for Life 吉川拓哉(Tappy)
チャッピーではなくタッピー。吉川拓哉とは、いつの間にか旧知の仲になっていた。彼はいつも予兆なく、ふらりと現れる。数年前も唐突に鎌倉へ現れてリーフでセッションを共にしたが、そのとき連れていた少年が、いまや世界のCTで戦う和井田理央(リオ・ワイダ)だった。そういえば、デーン・ピーターソンをして「世界一調子のいいノーズライダー」と言わしめたロングボードをシェイプしたのも彼だ。のちにデーン・ピーターソンモデルとして世に出たそのボードは、実のところタッピーのアイデアと美意識が凝縮された傑作だった。さらに彼の才能はサーフィン界に留まらない。あのバートンがリリースしたシグネチャーモデルのスノーボードでも、アートワークを担当した実績を持つ。
Tappyが世界的な存在へと駆け上がる前に知り合えていて本当によかったと思う。いま出会っていたら、気軽に「タッピーあのさ~」などと声をかけられなかったはず笑。
記事中には日本の名匠・YUこと植田義則氏も姿を見せる。職人同士の系譜と絆が滲み出る、実に読み応えのある特集だ。
(李リョウ)
THE SURFER’S JOURNAL(ザ・サーファーズ・ジャーナル)

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