緑色のパッケージが特徴のUVタイプ「ジェリーズガード」

今夏発売のクラゲ除けクリーム「ジェリーズガード UVタイプ」苦節3年の開発秘話とは?

2015年、日本の愛媛県長浜高校の生徒が、世界で初めてクラゲの仲間である「カクレクマノミがイソギンチャクに刺されない仕組み」を解明した。この取り組みは国内外も評価され、複数の科学賞を受賞した。

その取り組みに着目した化粧品メーカー株式会社エイビイエスのサーファー社員が、彼らに共同開発の話を持ち掛け、2年の開発期間を経てクラゲ除けクリーム「ジェリーズガード」が誕生。そして今年、更に3年の開発をかけた「UVタイプ」が発売された。ジェリーズガードの特徴や、クラゲ予防の仕組み、開発秘話に迫る。

「ジェリーズガード」とは

JELLYS GUARD(ジェリーズガード)とは、サーフィンやマリンレジャー時に顔や体に塗ることでクラゲ除け効果を発揮するクリーム。

長浜高校の「水族館部」とエイビイエスが共同で開発し、クラゲの生態を利用した「クラゲ除け成分」が配合されているのが特徴だ。高校生たちが「マグネシウムイオン」と「カルシウムイオン」が最適比率で配合されることで、クラゲの毒針発射を抑える効果を発見。ジェリーズガードにはこれらの成分が黄金比で配合されている。

水色のパッケージが特徴の初代「ジェリーズガード」

「ジェリーズガード UVタイプ」の特徴

2019年に初代「クラゲ予防クリーム」が発売され、当初は技術的な難しさから日焼け止め効果はなかったが、ついに2021年「UVタイプ」が発売。クラゲ予防成分に加え、新たにサンゴに優しい設計の日焼け止め効果が追加された。

通常よく目にする日焼け止めは、オキシベンゾンやオクチノキサートという紫外線吸収剤やパラベンなどの保存料を配合しているが、これらの原料はサンゴの育成に悪影響を及ぼすと発表され、すでにハワイやパラオなどでは使用禁止となっている。

「ジェリーズガード UVタイプ」はこのような原料を使用せずに、SPF50+ PA++++という高い日焼け止め効果を実現した。

多くの日焼け止めにサンゴに悪影響のある成分が入っている

大発見の裏には珍部活「水族館部」

愛媛県立長浜高等学校には「水族館部」という部活がある。海の生物を約150種2000点を飼育し、毎月第3土曜日に一般公開しているユニークな部活だ。

同部の研究班「チーム ニモ」は3年という限られた高校生活の中で、先輩から何代も受け継がれてきた研究を少しずつ発展させ成果を上げた。

この研究は、「イソギンチャクとカクレクマノミの共生」から始まった。

チームニモが、カクレクマノミの表面の粘膜を解析したところ、普通の魚の約10倍の濃度のマグネシウムイオンが含まれることを発見。イソギンチャクの触手は、カクレクマノミのこの成分を検知して毒針を発射しないことを証明した。

その研究成果は、国内最高権威となる日本学生科学賞で最高位の内閣総理大臣賞を受賞。更に、世界最大規模のサイエンスフェアでも優秀賞を受賞した。

クラゲに刺された化粧品会社のサーファー社員が、高校生の研究に着目

先輩達の研究を、イソギンチャクと同じ刺胞動物の「クラゲ」に応用したのが次の世代だ。後輩たちは、クラゲの場合は「マグネシウムイオン」のほかにも「カルシウムイオン」も影響を与えることを発見。これがのちにジェリーズガードの基礎となる。

静岡を拠点にする化粧品会社エイビイエスに務めるサーフィン歴5年の開発担当者が、ある夏クラゲに刺されたことで、クラゲ予防になる製品は作れないかと思案。リサーチを進めるなかでこの高校生たちの研究成果を見つけ、共同開発を持ち掛けた。

高校生たちの研究成果を製品化するためには、「マグネシウムイオン」と「カルシウムイオン」の配合比を更に研究する必要があり、同社は化粧品材料として使える成分の「塩化Mgと塩化Ca」等を提供して、実験を繰り返した。

大学教授の監修のもと比較試験を実施

実験では、竹串に試作品と複数の他社製品を塗り、クラゲの触手がどの程度絡みついてくるか(刺されるか)を5段階で測定。成分配合比を調整しながら、約80匹のクラゲに対し、累計500回を超える実験を行った。

比較のためクラゲ除け成分をあえて取り除いた自社製品は絡みつく度が「4」、国内外の他社製品は「2~3」、クラゲ除け成分入りの自社製品は「1(最も刺されない)」となり、他製品に比べ圧倒的にクラゲが寄り付かない黄金比を生み出した。

苦節3年、「UVタイプ」の開発秘話

ジェリーズガードの開発当時は、日焼け止めがサンゴに与える影響についての研究が行われ、ハワイなどで「紫外線吸収剤」など使用禁止の対象となる成分が発表され始めたころ。
日本では「紫外線吸収剤」の使用は禁止されていなかったが、それでもサンゴに悪影響を及ぼす成分は使用したくないとの思いが「UVタイプ」開発の大きな壁となっていた。

日焼け止め成分は大きく分けて2種類ある。「吸収剤」と「散乱剤」があり、吸収剤は日焼け止めに含まれる成分の化学変化によって紫外線を吸収することで肌を守り、散乱剤は紫外線を鏡のように反射させて肌を守る仕組みだ。
「吸収剤」は少ない配合量で高い効果があり、原料自体が透明なため、非常に使いやすい。日本で売られている日焼け止めの8割はこの吸収剤が配合されている。

一方で、「散乱剤」は白い粉状の原料で、たくさん配合しなければUV効果を引き出せない。更に、ジェリーズガードのクラゲ除け成分は水溶性であるのに対し、この散乱剤は油溶性。字のごとく「水と油」の関係だ。

クラゲ除け成分が多ければUVカット効果は発揮されず、UVカット成分が多ければクラゲ除け効果はなくなる。この水と油の配合を0.01g単位で調整していき、初代「ジェリーズガード」から更に3年の開発期間を費やし、絶妙なバランスを実現した。ちなみに、「UVタイプ」を塗ったときに白くなるのは、このサンゴに優しい処方の結果だ。

散乱剤は酸化チタン・酸化亜鉛が主流原料で、安定している成分として、店頭で「ノンケミカル処方」の日焼け止めとして、販売されている。

「ジェリーズ UVタイプ」完成

約50個以上の試作品を経て完成した「UVタイプ」は、クラゲに刺されにくい成分を黄金比で配合しながら、サンゴに優しい設計の日焼け止め効果も実現。もちろんウォータープルーフ効果もあり、海遊びの心強い味方の日焼け止めが誕生した。

発売から一夏を経て、「塗るとかなり白くなるが、今のところ刺されていない」「のびがよく肌になじむ」「塗りが甘かったところだけ刺された」といった口コミが集まっている。バニラの匂いは好き嫌いが分かれる模様だ。

同社の開発担当は「塗った時に白くなるのは紫外線吸収剤を使用していないためなので、サンゴや海のためと思って使っていただけたら嬉しいです。また、バニラの匂いは、クラゲ除け効果の目安としてあえて強めに付けています。海に入っていて匂いがなくなってきたら、効果が薄れているサインなので、重ね塗りしてください」とコメントを寄せた。

同社は、商品売上の一部を高校の研究の為に還元して若い人材支援をするとともに、地元静岡でビーチクリーンなどの活動を通して海洋環境保護のための活動を続けていくとしている。

(THE SURF NEWS編集部)

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