2023年パラサーフィン世界選手権で金メダルを獲得した池上凪選手 Photo:ISA / Sean Evans

パラサーフィンへNSAが本腰 4年後ロス五輪での初採用に機運高まる

日本サーフィン連盟(NSA)は13日、横浜市西区のパシフィコ横浜で会見を開き、2024年のパラサーフィン事業について、独自のクラス分けを設定し、全日本選手権の開催と世界選手権への日本チーム派遣を目指すと発表した。

パラサーフィンは2028年ロサンゼルス五輪で初採用される機運が高まっており、NSAは国内の競技人口の増加と認知度の向上を図りたい考え。

会見の冒頭、NSAの酒井厚志理事長は「日本のパラサーフィンは世界レベルに近づいてきた。スポンサーなどのバックアップがまだ少ないので、増やしていきたい」と呼び掛けた。

「パラサーフィンのスポンサーを増やしたい」と話すNSAの酒井理事長 Photo:THE SURF NEWS

障がいに応じて9クラス

パラサーフィンの障がい特性に応じたクラス分け「クラシフィケーション」はNSAが暫定的に設定し、全日本選手権の実施と世界選手権への派遣の基準とする。

クラスは9つに分かれる。腕や膝下、膝上など障がいの部位で分かれるスタンドや、膝立ちや座った姿勢で乗るニールやシット、うつ伏せで乗るプローン、視覚障害クラスなどがあり、自分でパドルができるか、ボードに乗れるかによって、さらに細かく分類される。

国際的なクラス分けとは別に、NSA独自のクラス分けを設ける理由について、NSAの清水雅裕事務局次長は「サーフィンに挑戦してみたいけど、クラス分けが分からない人が国内に多くいると思う。そのような方々を発掘したい」と話す。

昨年の世界選手権に出場した選手たち Photo:THE SURF NEWS

全日本選手権ではオープンクラスも実施

クラス分け希望者はNSAに会員登録の上、主治医が書いた診断書やレントゲン写真などの医療的書類を提出。医師がそれらの資料を検討し、全日本選手権前にクラス分けを決定する。

全日本選手権で優秀な成績を収めた選手について、NSA強化委員会、医科委員会、パラ競技部会が協議の上、世界選手権への派遣を決定。国際的なクラス分けは多少、基準が異なる可能性があり、世界選手権前に再度、適格性が審査されるという。

今年第2回となる全日本選手権の日時、場所は未定だが、初開催の昨年は9月に千葉県白子町の剃金海岸で実施し、26人が参加した。昨年に続き、今年も規定のクラスとは別に、特別開催としてオープンクラスの試合も行う。NSAは「障がいの度合いをきっちり分けられない人に参加してほしい」としている。

2023年の世界戦で6個のメダル

2023年の世界選手権オープニングセレモニーの様子 Photo:ISA

世界選手権は2015年に始まり、日本チームは翌2016年から参加してきた。日本の出場選手数は2016年の初派遣で2人だったのが、昨年は10人に増え、過去最高となる6個のメダルを獲得。国別順位は27の国、地域の中で7位だった。

会見に出席した池上凪選手(32)は昨年の世界選手権で、スタンド1クラスの金メダリスト。12年前、交通事故で腕に障がいを負い、計11回の手術を経て、5年前に始めたサーフィンで栄冠をつかんだ。

世界選手権で優勝した池上凪選手 Photo:ISA / Sean Evans

「主治医の先生が、私の体について『おれの大作を邪険にするなよ』と言ってくれ、これを守る使命があると思ってチャレンジしてきました。その気持ちが運を運んでくれて優勝できました。自分に起きたことを愛して振舞っていきたい」

会見で思いを語る池上凪選手 Photo:THE SURF NEWS

昨年の世界選手権プローン2クラスで銅メダルに輝いた藤原智貴選手(49)はサーフィン中の事故で首を粉砕骨折し、胸半分から下が動かなくなった。介助犬ダイキチと会見に出席し、「プローン2は、沖に向かうバディと岸で待つバディと3人で行うチーム戦。世界選手権は5回中4回が4位と3位なので、もっといい色のメダルがほしい」と意気込みを語った。

藤原智貴選手 Photo:THE SURF NEWS

同じく4位でカッパーメダルを獲得した勝倉直道選手(59)は30年前のオートバイ事故で全身にやけどを負い足首や膝が動かせない。スタンド3クラスに出場し「上半身だけを曲げてバランスを取っている。今度は金メダルを目指したい」と話した。

昨年の世界選手権4位となった勝倉直道選手は金メダルを目指す Photo:THE SURF NEWS

また、プローン2クラスで22位だった生方亮馬選手は「川で飛び込み、首を粉砕骨折し藤原さんと同じ症状。障がいを負ってからサーフィンを始めてまだ数年。昨年はビリだったので、今年は上がるだけ」と自らを奮い立たせた。

昨年からの飛躍を誓う生方亮馬選手 Photo:THE SURF NEWS

今年の世界選手権は12月ごろ、米カリフォルニア州のハンティントンビーチでの開催が有力視されている。

(沢田千秋)

この記事に 関連するタグ

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。