Image from Lost Track Atlantic. Credit: Ishka Folkwell / needessentials

スコットランドからセネガルまで夢の旅、トレン・マーティンが魅せる映画『Lost Track Atlantic』

コロナで国境が閉ざし始めてから早1年半。緊急事態宣言が繰り返し発表され、旅行に行く希望さえ心の奥にしまい込んでしまった人もいるかもしれない。そんななか、サーフトリップの夢を思い出させてくれる動画が、フリーサーファーのトレン・マーティンからドロップされた。

ニュージーランド編のバイク旅に続き、今回は中古バンを改造して、3か月かけて真冬のスコットランドからヨーロッパの西海岸を経由して熱帯のアフリカ西岸へ。大西洋の恵を味わうサーフトリップを収めた4部作の『Lost Track Atlantic』最終エピソードがリリースされた。

撮影担当の親友イシュカ・フォークウェルと、トレン・マーティン2人の冒険は視聴者を引き込み、一緒に旅をしている気分にさせてくれる。ミッドレングスのツインフィンをスタイリッシュに乗りこなすトレンと、アーティスティックに収めるイシュカの撮影、そして現地で出会った音楽を採用したオリジナルのサントラが最高にマッチし、旅のハプニングや最高の波、出会いそして絶景を届けてくれる。

Episode 1:旅の始まり

旅の始まりはトレンとイシュカが住むオーストラリア東海岸。2人はイギリスへと旅立ち、2000ポンド(約30万円)で入手したフォードトランジットのバンを自分たちの手でキャンピングカーに改造。完成したところで点検に行く途中にいきなりクラッチ故障というハプニング!何とか点検を終え、旅が本格的にスタートした。

最初に向かったのは最高の波が待ち構えるアイルランド。オールタイムのソロセッションで早速お気に入りのボード2本折るも、真冬のアイルランドと北スコットランドを堪能する。

Episode 2:モロッコへ急行

大西洋に大嵐が出現し、北アフリカに歴史的なスウェルが入る予報を受けて急きょ予定を変更。ヨーロッパは歴史も景色も、もちろん波も最高なのはわかりつつ、このスウェルは逃せないと、モロッコまでの5,000キロを一気に南下することにした。

しかし、その嵐のせいでジブラルタル海峡を渡るフェリーが欠航して、またもやピンチ。諦めかけたところで知り合いから別の港からの船は運行していることを聞きつけ、何とかスウェルの到着に間に合った。

モロッコは文化も言葉もにおいもすべてが新鮮。夜明けと共に現れたスウェルはダブルオーバーの永遠に続くライトのポイントブレイク。今までの人生の中で最高な波だ。一本の波のチューブタイムは凡人の一年分をはるかに超える。

モロッコで出会ったローカルと言葉がまともに通じなくても、笑顔とあいさつですぐに友達になり、家に案内してもらい、食事もごちそうになったりすることも旅の醍醐味。

Episode 3:至福の旅ライフ

スタートから6週間。モロッコでいくつものライトのポイントブレイクを味わいつつ、異色の街を探検する。最高の波をゆっくり満喫できるという幸せに浸り、そのストークが視聴者にとってうらやましさを通り越して、思わず一緒に喜んでしまう。

ここでもローカルに出会い、家に招待され、夕飯をごちそうになる。世界どこに行っても、サーフィン、そして海への愛を共有する人がいることを実感するシーンだ。

更に南下をするために一度海岸を離れて砂漠横断へ。近年西サハラは内乱状態で紛争中の領土では今も地雷がたくさん埋まっている。雰囲気が一変して、紛争がもたらす悲しみにも心を寄せる。これより先の陸路は危険が伴い、国境越えも難しいことから旅の続きは飛行機を選択。

Episode 4:熱帯のセネガルへ

飛行機が到着したセネガルで待ち構えていたのは熱帯ならではの彩りと陽気な雰囲気、そしてサイズが一段と下がりながらも、また永遠続くパーフェクトなライトハンダー。ゴールドコーストの全てのポイントをつないでも足りないぐらいの長さの波が全部貸し切り。イシュカもシングルフィンを取り出して、サーフィンの技を披露。

友人の紹介で小さな村に行き、ローカルの若者たちと海で楽しいひと時を過ごす。生まれ育った場所から真裏の世界でも、どこに行っても歓迎され、居心地の良さを実感する。焦らず、ゆっくり、親切な気持ちとオープンな心で旅をすれば、良い出会いは待っている。永遠に心に残る旅がいよいよ終わり、オーストラリアに帰国。

締めくくりはタスマニアのシップスターンズ、やはりミッドレングスのツインでチャージ。いくつものクレイジーなチューブをメイクして、ヘビーな波も乗りこなすことを証明。

3か月間、雨の日も風の日も狭い空間を共に過ごしても1度も喧嘩しなかったという親友イシュカとトレン Image from Lost Track Atlantic. Credit: Ishka Folkwell / needessentials

細かいことを気にせず、親切な心で旅先の人や場所に接すればきっと良い経験が待っている。旅は自分の視野を広げ、自分を豊かにしてくれるのだ。

最後は視聴者へのメッセージ。海を愛するサーファーとして、自然豊かで美しい海岸線を守る責任があることを伝える。何千代も続く先住民に学んで、自然とつながり、優しく暮らすことを勧める。

プロデューサーへのインタビュー

Lost Trackの動画シリーズを可能にしたのは豪ギアメーカーのNeedessentials。

ロゴ無しで宣伝もほとんどしなくても、すぐさま業績が上昇して、その利益の一部をサーフィンに還元するために大好きなサーフトリップの映画を作りたく、Lost Trackのシリーズを考案したと言う。創設者ライアン・スキャンロンがSurflineに対して制作への想いを語った。

“シンプルな手段で数か月かけて移動をしながら撮影するシリーズが旅するサーファーの生き方を祝福するものにしたかった。また、Needessentialsにとっては、実際世界でギアをテストする良い機会だ。すべてがリアルな旅をそのまま映画にしちゃうと言うわけだ。”

広告やブランディングは作成にお金がかかる割には使用期限が短い。その一方ではこのような作品はいつ見ても人をインスパイアし、ストークしてくれる。ショートクリップがあふれる今時、ゆったりと旅を楽しむ雰囲気が魅力的に感じる人が多いのではないだろうか。

トレンのサーフィンも一流だけれど、Lost Trackの場合は短く切ったアクションを詰め込んだクリップとは全く違う。スタイリッシュなライディングと一緒に、メイクしなかったチューブや失敗したテイクオフなど、サーフィン体験の全てが映っている感じがまたリアルで良い。

旅に出かけられない今だからこそ見たい、次の旅を夢見る材料としても見たい、そんな素敵な作品をぜひゆっくり楽しんで欲しいと思う。

Needessentialsについて

2013年にオーストラリアで設立されたneedessentialsは余計なものを省いた、必要なものだけを作ることに専念する会社。それも、環境や人権に配慮した、質の良いものだけ。植物由来のゴムやリサイクル素材を取り入れ、フェアトレード認証も受けていて、広告、余計な包装、仲介業者などを極力減らすことで商品を安く届ける事を目指している。Lost Track Atlanticを含む素敵な動画やこれらの旅で使用されたウエットスーツや旅関係のギアはneedessentialsサイトで見つかる。商品は日本へも発送しているのでぜひチェックしてみては。

ケン・ロウズ

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。