(c) Jacob Szekely

非行少年から天才エアリアリストへ。トニーホークも認めたジェイコブ・シークリーとは?

このコロナ禍でにわかに注目されている一人のフリーサーファーがいる。

カリフォルニアのラホーヤ出身の25歳。
2018年のNSSAナショナルチャンピオンでもあるジェイコブ・シークリー。
a.k.a “ジーク”

自身のYouTubeチャンネルや、InstagramなどのSNSを通してウェーブプールでの画期的なエアリアルを公開。
この数ヶ月の間に世界初のエアリアルを二つメイクしてサーフィン界だけではなく、スケートボード界からも称賛の声が上がっている。

サーフィンだけではなく、スケートボード、モトクロスなどのエクストリームスポーツも愛している一見するとカリフォルニアに良くいるタイプの若者だが、その人生は波乱万丈だった…。

ジェイコブ・シークリーって誰?

過去に殺害事件が発生するなど異常に強いローカリズムがあることで知られているラホーヤで育った若い頃のジークは端的に言えば不良だった。

16歳でプロサーファーを目指したものの、アルコール、喧嘩、窃盗などで5年間の保護観察処分を受け、刑務所に入った経験もある。

出所した後はアルコールを断ち、本気でプロサーファーへの道を歩もうとQSを本格的に回ったが、インドネシアでの長期滞在後、ちょっとした気の緩みからアルコールに手を出してしまい、酔っ払った勢いで喧嘩となり、暴行の末に逮捕。
弁護士と医師のおかげで刑務所よりもアルコールや薬物中毒の回復センターでの治療が優先され、そこで半年間過ごすことになった。

22歳、回復センターから退院後、学校に復帰。
GPSモニターを付けて監視下に置かれ、裁判所の許可なしにサンディエゴ群を離れたり、アルコールを一口でも飲んだ場合は逮捕されるという厳しい状況の中、2018年にNSSAナショナルチャンピオンを獲得した。

水温が高かったためにスプリングのウェットスーツを着用していたジークは足首に付けていたGPSモニターが周囲にバレてしまったが、それ以上に新しい人生の一歩を踏み出した喜びが大きかったそうだ。
それからは完璧にアルコールを断ち、早朝からヨガをしてジェイク・マーシャルなどの模範的なサーファーとトレーニングをするなど、新しい扉を開け続けた。

そして、もう一つの転機となるウェーブプールと出会う。
テキサス州のBSRサーフリゾート、5,000ドルのプライベートセッションを友人の助けを借りて予約。
全ての波がエアリアルのランプセクションになるこの波はジークにとって思い描いていた以上の理想的な夢のような波だった。

世界初の「クライストエアー」をメイク

その後、何度もBSRサーフリゾートに足を運んだジークはオリジナルのエアリアルに没頭。

2020年7月にはエアリアル中にボードを離すスーパーマンとボードを一回転させるフィンガーフリップを掛け合わせたスーパーマンフィンガーフリップを完成。

ケリー・スレーター、ジョシュ・カー、グレイソン・フレッチャーなどのビッグネームが見守る中、3本のサーフボードを壊しながらも世界初の大技メイクを成し遂げたのだ。

そして、2020年11月、ジークはBSRサーフリゾートで新たな世界初の大技をメイク。
キリストが十字架にかけられたような姿の「クライストエアー」は2018年のStab主催のエアーコンテストでメイソン・ホーがトライしたことで有名となり、それを今回ジークが着地まで完成させたのだ。

この偉業にスケートボード界のケリー・スレーターのような存在、トニーホークを始め、グレイソン・フレッチャーなどが称賛の声を上げた。

韓国のWavegardenにも登場!

BSRサーフリゾートでのエアリアルで注目を集めたジークはオープンしたばかりの韓国の「Wavegarden」にエアリアルのスペシャリストとして招待された。

BSRサーフリゾートと異なり、バレル、エアリアル、ターン、ロングボード、ビギナー向けなど様々な波を生み出すことが可能なこの施設。
ジークはスーパーマンエアー、アーリーウープ、インディグラブを軽々とメイク。
このウェーブプールのランプセクションが完璧であることを証明した。

ちなみにジークは帰国後にケリー・スレーターのウェーブプール「サーフランチ」にも招待され、バレルとエアーのコンビネーションを披露。
コロナ禍でコンペティターの仕事が激減する中、世界トップレベルのフリーサーファーとして文字通り忙しく飛び回っている。

(空海)

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