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サーフィン界の帝王ケリー・スレーターのトレーニングの秘密とは?

1990年のデビューから11度のワールドタイトル、CT通算55勝、7度のパイプマスターなど数々の驚異的な記録を持っているケリー・スレーター、47歳。

30年近いキャリアの中で彼がどのようなトレーニングや準備をしているのかは、 Instagramなどで断片的に公開される程度で、大々的に公表されたことはない。

しかし、怪我に悩まされていた近年、昨年の『Billabong Pipe Masters』で本格的な復帰を目指していた際にオーストラリアのビッグウェーバーで、コーチとしても有名なマーク・ヴィサーとエフカイの自宅で過ごし、一緒にトレーニングをして大舞台に戻る自信を取り戻すことに成功した話がWSLで公開された。

マーク・ヴィサーと出会うきっかけは、『Momentum Generation』のメンバーでもあるシェーン・ドリアンだった。

シェーンを通し、マークが行なっていた『Ocean Warrior Course』のトレーニングプログラムや、過去数年間に開発してきたコースに興味を持ったそうだ。

シェーンが電話で’マークと一緒にトレーニングをしている最中なんだ’と言っていたんだ。それからマークのトレーニングの映像を見て彼が軍人とも一緒にやっていたと聞き、何か学ぶものがあると興味を持ったのさ。マークのトレーニングの大半はサーフィンの世界では注目されない部分、舞台裏にあったんだ。水中で何をするかによっての相互作用を考えているようだった。かなり興味深い考え方だなと思ったのさ。
ケリー・スレーター

2018年『Billabong Pipe Masters』の舞台裏
PHOTO: © WSL/Cestari

ケリーとマークは9月に話し合いを始め、コンテスト直前の12月にププケアの丘の上のプールで『Ocean Warrior Course』というトレーニングを行なった。
水中で息を止めることや、心理学、生理学の基本、基本的な救助や応急処置を学んだ。
時にシェーンや、柔術のワールドチャンピオン、マーカル・アルメイダも一緒にトレーニングを行なったそうだ。

一回のトレーニングでも自信が高まることに気付いたよ。この2年間、怪我で冬にビッグウェーブを追い求めることさえしなかった。しかし、このトレーニングの後、ビッグウェーブに対しての自信を取り戻すことが出来たんだ。
ケリー・スレーター

『Ocean Warrior Course』

ケリーはこのトレーニングの後、『Billabong Pipe Masters』に参加して素晴らしいパフォーマンスを披露。
コンテストの最中、トレーニングの効果が絶大だったために興奮し過ぎていたケリーは、落ち着く必要があると言い続けたほどだった。

パイプラインの大きな日は、凄いけど決してビッグウェーブの類には入らないと思う。あの波でサーフィンするには落ち着くことが必要。落ち着くために自信をつけること。それで心配が一つ減ることにもなる。サーフボードに自分のフィンが入っているようなもので、もう何も心配する必要がなくなるんだ。
ケリー・スレーター

トレーニングをしている間、凄い混雑している海を想像したんだ。ビッグウェーブについてはあまり考えていなかったね。パイプラインを本当に混雑しているラインナップの観点から考えると世界で最もフラストレーションが溜まる波だよね。10代や20代前半の頃は欲しい波の多くに乗ることが出来た。単に波を取り合うほど混雑がなかったし、自信を持ってあのラインナップに頻繁に入り、他の人が居場所を与えてくれるようになれば、それを利用してビーチから見ているような波に乗ることが出来たのさ。でも、今は多くのサーファーが誰でもチャージしている。もし、アウトに出ても波になんか乗れないよ。
ケリー・スレーター

ケリーが他の選手と比べて優れている部分の一つとして彼のスポーツに対する精神的なアプローチがあげられる。
対戦相手の頭の中にするりと入り込む術に長けているのは昔から言われていることで、心理戦が多くの勝利に結び付いている。

今回の『Ocean Warrior Course』はパイプライン以外にもあらゆる場所で有益であると考えている。

スモールウェーブでサーフィンする場合でも具体的に適用可能な部分がある。スモールウェーブでサーフィンする時の考えとしては、波をキャッチする場所や、パドルバックの方法が大切。パドルバックや、波を待つ時の呼吸法に注意するようにしたい。そうすれば、全てのことについてオープンに考えられるようになるんだ。
ケリー・スレーター

2018年『Billabong Pipe Masters』では3位に入ったケリー
PHOTO: © WSL/Cestari

『Billabong Pipe Masters』が終わり、ケリーはオフシーズンを2019年のCTシーズンに向けて準備を整えるために費やすと話していた。
1月の『Volcom Pipe Pro』をスキップして身体と心を調整することに集中、冬にマーク・ヴィサーから学んだこともその準備に織り込まれていたのだろう。

海に入った時に自信を与え、落ち着いてラインナップにいることに役立つのであれば何でも良いと思う。もし、ビッグウェーブでサーフィンするのなら、無駄にはならないと思うよ。別にビッグウェーブかどうかは関係なく、どんな波にでも適用出来るんだ。
ケリー・スレーター

WSLは2018年12月にマーク・ヴィサーと提携して通常400ドルの『Ocean Warrior Course』のフルトレーニングを99ドルでセール。
それは世界トップのサーファーと同じトレーニングを利用出来る絶好の機会だった。

『Ocean Warrior Course』はオンラインのコースもあるので、興味がある方はぜひアクセスして欲しい。

『Ocean Warrior Course』公式サイト:https://www.theoceanwarrior.com/

参考記事:「Slater’s Pipeline Training Secret|World Surf League

(空海)

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