31歳で芸能デビュー。南美沙、遅咲き女優が見たサーフィンの“リアル”

起業家の傍ら、モデル・女優を兼業し、エンタメ業界で活躍の場を広げる南美沙さん。その躍進ぶりに輝かしい経歴を想像してしまうが、美沙さんのモデルデビューは28歳。女優デビューにいたっては31歳と業界では遅咲きと言っていい。
そんな彼女が出合ったサーフィンは、人生を大きく変えるほどのパワーを持っていた。
「人生は海と似ている」という美沙さんに、波乗りのきっかけや、そのあと出演することになったサーフィン映画について聞いてみた。


やってみて気づいた、「思ってたのと違う!」サーフィン

「名前の由来は、“南の美しい砂”です」

そう言うと美沙さんは「いかにもサーフィンしそうな名前ですよね」と笑った。

小さい頃、父に連れられてよく素潜りやSUPをしていた、という美沙さん。海好きな父のおかげで、家族旅行の行き先は決まって沖縄かハワイだったという。

「サーフィンはしたことがなかったのですが、ハワイのビーチにいたサーフガールに憧れてました。可愛いビキニを着た小麦色の肌の子たちを見て、かっこいいなぁ〜って」

そんな美沙さんが憧れのサーフィンを始めたのは28歳。ちょうどモデル業をスタートさせた時期と重なる。

「『今まで我慢してできなかったことをやろう』と一念発起した歳です。じつは私、24歳で一度結婚してるんですよ。『養うから仕事はしないで』とパートナーに言われて家庭に入ったのですが、『人生これでよかったのかな』という思いが年々、自分の中で大きくなっていって。結局、その彼とはお別れしてしまったんですけど」

あやふやだった進路が、スッパリと定まったタイミングだった。

「そのあと湘南の海でサーフィンを始めました。友人のロングボードを借りて、後ろから押してもらって、すぐに立てるようになったんですけど……」

しかしそれは、思い描いていた理想とはかけ離れていたという。

「想像していたよりぜんぜん距離が乗れなくて。生意気にも『あれ、思ってたのと違う!』と(笑)。私の中のサーフィンのイメージは、幼い頃に見たハワイだったんです」

とはいえ波に乗っているときの高揚感は、美沙さんにとって忘れがたい経験になった。その後も波乗りを続けた彼女が、ようやく念願を叶えたのは3年後。旅行で訪れたハワイのアラモアナ・ボウルズだった。

「沖から岸まで、友だちと波をシェアしながらロングライディングできて。そこでようやく、理想と現実がカチッとはまりました」

これだ! と思った美沙さんは、毎年のようにハワイを訪れ、サーフィンに没頭するようになる。日本でも仕事の合間を縫っては海に入り、めきめきとその腕前を上達させていった。でも、モデル業とサーフィンの両立ってかなり大変だったのでは?

「たしかにそうですね。どこの海へ行くにも日焼け止めは必須でした。結んだ髪にオーガニックのコンディショナーを塗って、その上にキャップを被って、海上がりのアフターケアも万全にしてました」

サーフィンのためにそこまでするのか。偏見で大変恐縮だが、海辺のリゾートホテルに泊まり、サーフボードをわきに置き、ビーチで写真を撮る“キラキラ美女”のイメージしかなかったのだが……。

言葉を選びつつ、恐る恐るその旨を伝えると「インスタグラムはそういう写真ばかりですけど、リアルでは違って……」とサーファーらしい生態を包み隠さず語ってくれた。

「海辺というところは合ってますけど、泊まるのは安いゲストハウスがほとんど。そっちのほうがすぐビーチにアクセスできるので、朝イチに波チェックしやすいでしょう。それがリアルです。海の中でワイプアウトして海藻まみれになることだってあるし、波に揉まれてるときの私の顔なんて、すごいことになってるはず(笑)」

人生は海と似ている?

サーフィンデビューの3年後、映画『ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave』で役を射止めた美沙さん。出演のきっかけは何だったのだろうか。

「監督が主催するワークショップに入って、演技を学びながらアピールしていたんです。『私、サーフィンできます!』って。そうしたらサーファーガールのカフェ店員役はどうだ、という話になって。その瞬間に人生が大きく開けました」

同作の主人公は、サーフィンの腕前はあるがちゃらんぽらんなサーファー・梅原光太郎(吉沢悠)。ふらりと訪れた種子島で、サーフィンを通して人とつながり、梅原が自分自身を見つめ直していくヒューマンドラマだ。美沙さんは作中、サーファーのカフェ店員として、主人公をサポートする重要な役目を演じた。

当時の撮影を「いい経験をさせてもらえました」と振り返る美沙さんだが、モデルとして人前に出る仕事をしていたとはいえ、初の映画出演に緊張はなかったのだろうか。

「ガチガチではありませんが、緊張感はありました。決められたスケジュールの中で思うように演技できなかったこともありますし。サーフィンのシーンは水中カメラで撮影したのですが、海が荒れていてなかなかライディングがうまくいかず、OKが出るまで何本も波に乗りました。でも今となってはつらかったことも楽しかったことも、全部いい思い出なんです」

モデル・女優業を経て、現在はPR会社の代表として裏方仕事にも精を出す美沙さん。『ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave』に出演していた時期と比べると海に行く機会も少なくなったが、それでも仕事の疲れを癒すルーティンに、今でもサーフィンは欠かせないという。

「『人生は海と似ている』なんていうと本当かよ、と返ってきそうですが、本当にそうなんです。サーフィンでも、仕事でも、プライベートでも、自分の力ではどうにもならないことが起こったときは『今はまだ耐えるときなんだな』と気持ちを鎮めるようにしていて。それでもまだ落ち着かなければ、海に入って、波にグルグル〜と揉まれればスッキリしますから。『お洗濯、完了!』って感じです」

取材前に抱いていた“キラキラ”としたイメージはそのままに、リアルサーファーな一面も垣間見せてくれた美沙さん。そのタフな人生観は、サーフィンと旅の中で育まれたといってもいいだろう。

PROFILE

南美沙
1987年、神奈川県出身。28歳でフリーランスモデルとして活動をスタート。31歳で映画『ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave』に出演し、女優デビューを飾る。現在は株式会社MCLOUDの代表として、エンタメ業界を盛り上げている。
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(Ryoma Sato)

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