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五十嵐カノアも反対した新ワイルドカードルール、選手達の嘆願でWSLが撤回

WSLファンならご存知の通り、今シーズンは新ルールとなり、QSとCTの間にCS(チャレンジャー・シリーズ)が入り、CSからクオリファイ出来る選手数も変更。
メンズは10位以内から12位以内に変更された。

ここまでは問題がなかったのだが、CTとCSランキングでダブルクオリファイした選手がいた場合、そのスポットは次点のCS選手ではなく、WSLが決めるワイルドカードになるという新ルールが波紋を呼んでいた。

この新ルールにCSに出場する多くの選手が反対。
CSに出場する日本選手達も不満を持ち、ダブルクオリファイする可能性が最も高い五十嵐カノアはこのルールに反対するメッセージも出していた。

選手会の署名活動がWSLを動かす

今回の騒動で渦中の人になった五十嵐カノア
PHOTO: © WSL/Masurel

そもそも撤回前の新ルールは「WPS(ワールド・プロフェッショナル・サーファーズ)」と呼ばれる選手会の承認を得たものだったが、CSの選手に発言権はなく、承認自体も投票で決まったため、全てのCS選手が納得していたルールではなかったそうだ。

今回のWSLのルール変更に選手はすぐに立ち上がり、CS選手達が「次点のCS選手がクオリファイ出来るように」という嘆願書を作成して署名活動を展開。それにはWPSの幹部なども協力し、すぐに100人以上の署名が集まった。

その中にはガブリエル・メディナ、フィリッペ・トレド、タティアナ・ウェストン・ウェブなどCTのトップ選手の名前もあり、WSLは動かざるを得ない状況になったのだ。

WSLはその嘆願を認め、2021年に関してはそれまでのワイルドカードルールを撤回して「CTとCSランキングでダブルクオリファイした選手がいた場合、WSLはワイルドカードを行使せず、そのスポットは次点のCS選手に与えられる」と変更する方向で動いていることを、選手に対しメールで伝えた。

そのメールでは、「毎年、ダブルクオリファイの状況は異なり、トップサーファーの怪我などにも柔軟に対応するため、翌シーズン以降はCTのWSLファイナル後に選手の代表とルールを見直し、CSの後半に向けて明確にする」との説明もしている。

過去にボビー・マルティネスがルール変更に耐えられず、暴言を吐いてツアーを去ったケースもあるが、当時と比べるとジェンダー平等を実現するなどWSLの体質は明らかに変わっている。
そして、今回の選手の意見を受け入れたWSLの柔軟な対応は称賛すべきことだと思う。

また、ダブルクオリファイした次点の選手としてクオリファイを果たしたモーガン・シビリックがルーキーイヤーにトップ5に入るという例もあり、このクオリファイに関するルールは非常にデリケートで慎重に判断しなければいけない。

なお、現在のCSランキングから考慮するとメンズは五十嵐カノア、グリフィン・コラピントの2名がダブルクオリファイしそうなので、クオリファイラインは2名分下がる可能性がある。

ウィメンズに関してはクオリファイラインの6位以内に現在CT選手がいないため、現状から変化はなさそうだ。

■WSLからCS選手宛に通知されたメール全文(和訳:TSN編集部)

皆さんこんにちは。

皆さんが元気で、ハレイワの前で休憩を楽しんでいることを願っています。

「ダブルクオリファイルール」に関して、CS選手の代表を通じて提起されたすべての問題に直接対処したいと思いました。具体的には、ツアー・コンペティションチームを代表して、意図していませんでしたが、このルールが今年参戦している選手にもたらした非常に現実的な結果とストレスを認めたいと思います。

今年初めてこのルールを制定したので、皆さんと同様私達もまだ学習している過程です。このルールがどれほど影響を与えるかは予想していませんでした。

2021年は、WSLがワイルドカードを使用しないことをお約束します。2021年は、ダブルクオリファイした選手はチャンピオンシップツアーに参加し、メンズの12枠、ウィメンズの6枠は、全てチャレンジャーシリーズに参戦する選手に提供されます。

今後、このルールを選手会と確認します。毎年ダブルクオリファイ選手を取り巻く状況は異なるため、チャレンジャーシーズンの後半を明確にすることを目的として、WSLファイナル後に選手会とダブルクオリファイルールを確認します。このルールはトップサーファーの怪我に柔軟に対応するために存在します。

最後に、これまでのツアーとシーズンへのご尽力に感謝いたします。チャレンジャーシリーズは私たちにとって重要な新しいツアーであり、私たちは皆さんが輝けるプラットフォームの構築に懸命に取り組んでいます。率直で正直なフィードバックをありがとうございました。今後も私たちの間で継続されることを願っています。

(空海)

※2021/11/12追記
現地時間11月11日、WSLは公式サイトでもダブルクオリファイルールの変更についてアナウンスした。選手達へのメール内容と同様、今年はワイルドカードを行使せず、ダブルクオリファイ選手の枠は次点のCS選手に充当されると説明した。

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