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Sharpeyeが最多!?東京オリンピック出場サーファーの使用サーフボードは?

サーフィンを知らない人も含めて世界中の人が注目した東京オリンピックサーフィン競技で使用されたサーフボードについて興味がある方も多いと思う。

男子金メダルを獲得したイタロ・フェレイラはTimmy Patterson、女子金のカリッサ・ムーアはLostのサーフボードを使用。共にカリフォルニア発のブランドで、このブランドを使用した選手数は共に4名。

五輪出場選手40名(*)の使用サーフボード 【THE SURF NEWS調べ】

五輪に出場した40名(*)のうち最も多かったのは銀メダルを獲得した五十嵐カノアも使用したSharpeyeで、実に9名にも及ぶ。日本の海でもここ数年はSharpeyeのロゴを見かけるようになっており、世界のトップサーファーの動向が一般サーファーに与える影響は少なからずある。

今回はオリンピアンサーファーが五輪で使用したサーフボードにまつわるエピソードを紹介。

▼目次
1.オリンピアン使用者数最多のSharpeye
2.ガブリエルが乗る「CABIANCA」とは?
3.日本代表達の使用ボード
4.イタロがBillabongロゴを掲載できた理由
5.ジュリアンの板には愛の印
6.アメリカ代表だけ国旗が大きい?

オリンピアン使用者数最多のシャープアイ

Photo: THE SURF NEWS / Yasuma Miura

オリンピック出場サーファーでSharpeyeを使用していたのは、五十嵐カノアをはじめとする以下9名。その他にも、シャープアイチームにはフィリペ・トレドや村上舜が在籍している。

■Sharpeye使用オリンピアン
男子:五十嵐カノア、和井田理央、マヌエル・セルマン、ビリー・ステアマンド
女子:サリー・フィッツギボンズ、タティアナ・ウェストン-ウェブ、ジョアン・ディファイ、シルヴァナ・リマ、ダニエラ・ロサス

マルシオ・ゾウビ(左)とフィリペ・トレド(右) Photo: WSL

改めてSharpeye Surfboardsの歴史を振り返ると、ブラジルのリオ・デジャネイロで生まれ育ったMarcio Zouvi(マルシオ・ゾウビ)が1980年代後半にサンディエゴに移住したのが始まり。

当初はコンピューターエンジニアリングを学ぶために移住したが、副業として始めたグラッシングやサンディングに夢中になりRusty、Linden、Al Merrickなどカリフォルニア発デザインの影響を受けながら1988年に始まった。

1992年、正式にSharpeye Surfboardsとして創業。特に、ハイパフォーマンスなショートボードデザインにフォーカスし、過去25年間でグローバルビジネスに育て上げた。

WSLは「今シーズンSharpeyeに乗るサーファーが急増しており、板を変えた途端にその選手達は成績が伸びた」と評している。

ガブリエルが乗る「CABIANCA」とは?

ガブリエルのボードは今後日本でもブームになるか?
PHOTO: THE SURF NEWS/YasumaMiura

イタロと共にブラジル代表として東京オリンピックに参加。
9月に予定されているワールドタイトルを決める『WSLファイナル』にナンバーワンシードとして出場するガブリエル・メディナがどのブランドのサーフボードを乗っているかご存知だろうか?

それはSharpeyeでもChannel Islandsでもなく、スペインのバスク地方に拠点を持つ「CABIANCA(カビアンカ)」というブランドだ。CABIANCAはブラジリアンシェイパーのジョニー・カビアンカが2016年に友人と立ち上げた新しいブランドだが、ジョニー自身はガブリエルがサーフィンを始めた頃からの深い信頼関係を築いている。

ジョニーはヨーロッパ大手PUKASのシェイパーとしてのキャリアが長いが、カリフォルニアのMatt Biolos(Lost Surfboards)やオーストラリアのDarren Handley(DHD)とも親交があり、Mattは「ジョニーは誰よりも優れたシェイパーだ、誰も彼のことを知らないこと以外」との発言を残している。

しかしガブリエルの活躍でCABIANCAの名は世界に広まりつつある。日本からも公式サイトで複数モデルの購入が可能だ。
http://cabiancasurfboards.jp/

日本代表「波乗りジャパン」の使用ボード

先の通り、男子銀メダルを獲得した五十嵐カノアはSharpeyeを使用。以前はChannel Islandsを長年使用していたが、2018年からSharpeyeチームに加入した。

女子銅メダルを獲得した都筑有夢路の使用ボードはXanadu(ザナドゥ)。彼女のキャリアを大きく前進させた『ABANCA Galicia Classic Surf Pro』の頃からXanaduを使用している。

大原洋人はUSオープンも勝ち取ったJS、前田マヒナは五輪出場資格を獲得した2021WSGの前に変更したばかりのARAKAWAで今大会に挑んだ。

都筑有夢路 Photo: THE SURF NEWS / Kenji Iida
大原洋人 Photo: THE SURF NEWS / Yasuma Miura
前田マヒナ Photo: THE SURF NEWS / Kenji Iida

イタロは何故Billabongロゴを載せられたのか?

ロゴ入りモデルというアイディアを思い付いたのはイタロのチームだけだった
PHOTO: THE SURF NEWS/YasumaMiura

東京オリンピックのサーフボードにまつわる話は他にもある。

例えば、「Rule50」と呼ばれるオリンピック独自のルールによって選手が使用したサーフボードはブランドロゴと自国を示すマーク以外入れることが禁止されていたが、イタロのボードには何故かサーフボードブランドではない「Billabong」のロゴが目立つ位置に載せられていた。

豪Stabによれば、これはイタロが2019年にワールドタイトルを獲得した時、Timmy PattersonとBillabongグローバル・マーケティング担当のエヴァン・スレーター(ケリーの兄弟ではない)が相談して、特別にBillabongのロゴが入ったシグネチャーモデル「Stoked-Edモデル」を販売したことで実現した。

IOCの規定を見ると“大会前の6ヶ月間にサーフショップなどの小売店で販売された製品には、製造者の一般的な識別情報の使用が認められる”と記してある。

Billabongの前にHurleyのマーケティング担当でもあったエヴァンは実にスマートにこの”法の抜け穴”を利用。
イタロのチームはブラジルオリンピック委員会に使用ギアの申請をして更にIOCにも提出したが、調整や変更は求められなかった。オリンピックというCTよりも注目度が高い大会での広告戦略に成功したのだ。

ちなみにイタロは今回の金メダル獲得でInstagramのフォロワーが100万人も増加し約2倍に増えた。
それほど大きな宣伝効果があるのにも関わらず、他のブランドがBillabongのようにシェイパーと提携してシグネチャーモデルを発売しなかったことにエヴァンは逆に驚いているそうだ…。

ジュリアン・ウィルソンのボードには家族の愛の印があった

ジュリアンのオリンピック使用ボードには愛の印 Photo: THE SURF NEWS / Kenji Iida

銅メダルを獲得したオーウェン・ライトと共にオーストリア代表として参加したジュリアン・ウィルソンはオーストラリアのJSのサーフボードを使用。
ボトムのグリーンに合わせて妻の手と二人の子供の足をグリーンのペンキでスタンプ化。
遠く離れた日本にいても常に家族の愛を感じられるようなジュリアンらしい施行を凝らした。

ちなみに東京オリンピック直前に引退発表をしたジュリアンはこの大会を最後に人生の新しい章を始める。

アメリカチームの国旗ステッカーだけ大きかったのはお国柄?

五輪金メダリストの2人。カリッサの国旗ステッカーはノーズの幅ぎりぎりまで使い尽くしている。 Photo: THE SURF NEWS / Yasuma Miura

先に紹介した「Rule50」では“ノーズ部分に4インチ(約10センチ)×6インチ(約15センチ)以上の自国を示すマーク貼ること”と記載されている。

多くの選手はその規定に近いサイズの国旗を貼っていたが、女子金メダルを獲得したカリッサを始めアメリカ代表選手が他国より一回り以上大きな国旗を貼っていたことに気付いた方はいるだろうか?

東京オリンピックの金メダル数39、合計でも113とメダル獲得数トップ。
過去、多くの五輪でもメダル獲得数トップを誇るオリンピック大国のアメリカは、国としてオリンピアン達への強力なバックアップ体制を整えている。アメリカンフラッグへの誇りも人一倍あるのだろう。

オリンピック出場選手 使用サーフボード一覧

■男子

イタロ・フェレイラTimmy Patterson
五十嵐カノアSharpeye
オーウェン・ライトDHD
ガブリエル・メディナCABIANCA
コロヘ・アンディーノlost
ミシェル・ボレーズFirewire
大原洋人JS
ルッカ・メシナスTimmy Patterson
和井田理央Sharpeye
ジョンジョン・フローレンスPYZEL
ラムジ・ブキアムJS
ジュリアン・ウィルソンJS
ビリー・ステアマンドSharpeye
ミグエル・トゥデラChannel Islands
レオナルド・フィオラヴァンティBradley
ジェレミー・フローレスJS
マヌエル・セルマンSharpeye
レオン・グラツァーChannel Islands
レアンドロ・ウスナDHD
フレデリコ・モライスJS

■女子

カリッサ・ムーアlost
ビアンカ・ブイテンダグChannel Islands
都筑有夢路Xanadu
キャロライン・マークスlost
サリー・フィッツギボンズSharpeye
ブリサ・ヘネシーT&C
シルヴァナ・リマSharpeye
ヨランダ・ホップキンスFATUM
ステファニー・ギルモアDHD
ジョアン・ディファイSharpeye
エラ・ウィリアムスByrne
前田マヒナARAKAWA
ソフィア・ムラノヴィッチTimmy Patterson
テレサ・ボンヴァロchilli
タティアナ・ウェストン-ウェブSharpeye
ポリーン・アドゥlost
レイラニ・マクゴナグルChannel Islands
アナト・レリオルTimmy Patterson
ドミニッチ・バロナMilano
ダニエラ・ロサスSharpeye

*男子はPCR陽性のため欠場したフレデリコ・モライスもカウントしている。なお、五輪大会での使用ブランドであり、普段は他のブランドを使用している場合もある。

その他、東京オリンピックのアーカイブ写真や記事は以下特設サイトより。

▼東京オリンピック サーフィン競技特設サイト

(空海)

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