【中国サーフィン最新事情 第1回】突如出現した人工サーフィン施設の全貌

2019年1月末、中国で建設しているとみられる人工サーフィン施設の動画が突如公開された。その様相はまるで“赤いサーフランチ”。

このプールについて、当初殆ど情報がなかったが、夏頃にSurflineが一部概要を報道した。THE SURF NEWSでは、中国ナショナルチームの元コーチであり、Surflineにプールの情報を伝えていたNik Zanella氏に独占取材を決行。徐々にその全容が見えてきた。

サーフィンが五輪に採用されたことにより、国を挙げてサーフィンの選手育成に力を入れている中国。実は、このウェーブプールもその国家戦略の一つとして建設されていた。

独占取材により分かったウェーブプールの概要や、国家戦略としてのサーフィン選手育成など、中国の最新サーフィン事情について全3回にわたってお届けする。

Photo: Nik Zanella

河南ウェーブプールの概要

所在地は、北京から車で6時間ほど南下した内陸部にある、河南省濮陽市の清豊県という町。

このウェーブプールは、中国政府が建設した「The Xing Feng Extreme Sports Center wave pool 」という巨大なエクストリームスポーツトレーニングセンター内にあり、プールのほかに、ワールドクラスのスケートパークやクライミングウォールなどが併設されている。Surflineによれば、その総工費は2600万ドル(約28億円)超にものぼるという。

プールの大きさ、ケリー・スレーターのウェーブプール「サーフランチ」と全く同じ全長700m、幅150m。水深は一番深いところで2m。縦長のプールの中央に造波装置があり、現在使用できるのは右側だけだが、左側も建設中。波は3セクションあり、メローなロングウォールの波から、バレルまで生成できる。

造波システムは独自に開発され、世界のいくつかのプールと似たような原理で、電気機関車で水中翼を動かしている。上海マグレブトレイン(上海市内を走るリニアモーターカー)のような電磁力システムを使用しており、とても費用対効果がよく、オペレーション時の電気代はかなり安く済むが、内陸の乾燥地であるために水にかかるコストが大きいという。

世界中で注目を集めた動画は、2019年1月25日に初めて波を起こした際に撮影されたもの。その約1年前となる2018年2月に建設開始しており、現在も改良が続けられている。

初めて波を起こした際の映像

施設は一般公開されているわけではなく、ナショナルチームのトレーニングや試合に使用されている。

現在中国国内には、このほかに政府主導で5つのプール建設計画を進めていると噂があり、そのうちの1つは広東省の可能性があるという。

これまで世界のサーフシーンで、中国出身選手の名前を聞いたことは全くと言っていいほど無かったが、サーフィンが五輪競技となったことで、国として選手育成やそのための設備投資にかなり本腰を入れてきている模様だ。

第2回では、ウェーブプールの波の詳細やそこでのトレーニング効果、サーフランチとの比較についてお届けする。(2020年1月2日公開予定)

≫第2回:河南ウェーブプールの波、サーフランチとの比較
≫第3回:中国のプロサーファー育成戦略

執筆:THE SURF NEWS編集部
取材協力:Nik Zanella


Nik Zanella
イタリア人サーファー。2000年代はイタリアのサーフィン雑誌『Surf News』の編集を手掛ける。2010年より中国でISAコースプレゼンター及びレベル2コーチとして指導。2019年までナショナルチームのコーチを務め、現在は中国国内の様々なレベルのサーフィン強化プロジェクトに携わる。2019年5月、9世紀から13世紀まで中国で行われていた波乗りの歴史を紐解く『Children of the Tide』を出版。

Nik Zanella氏の著書『Children of the Tide : an exploration of surfing in dynastic China(直訳:潮汐の子どもたち)』はKindle版またはペーパーバック版で購入できる。

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