ポリエステルレジンをグラッシング中のサーフボード。ファクトリーOZにて photo:Ri Ryo

新品のサーフボードはしばらく使わない方がいいの?

レジンが完全硬化するには数週間は必要という波乗伝説に迫る。

シリーズ「おいらはサーファーの味方」No.29

「サーフボードが完成しても、しばらくは海で使わないほうが良い。グラッシングしたレジンが内部でゆっくりと硬化しているから」私は先輩からそう言われて信じてきた。デッキに残ったフットマークを発見すると「もう少し寝かすべきだったかな」と反省したこともあった。

世界中にこの伝説は深く浸透している。しかしサーフラインの記事によると、この伝説には科学的根拠は無いという、その真偽はどうなんだろうかととにかく読んでみた。


やったね。ついにニューボードを手に入れたのか!
立会いシェープも済ませて、グラッサーの職人技で巻いてもらい、ついに今、君の両手にそのボードがある。さて、よだれを流すのはそのくらいで止めて、次のお決まりのステップは、どんな乗り味か早く試してみたいというところだろう。
しかし、忘れないで欲しいのは先輩たちから教えられた助言だ。新品のサーフボードはグラッシングされたレジンがまだ硬化中だから、しばらく放置して使わないで硬化を待った方が良い。でもそれって真実なのか?せっかくのサーフボードにダメージが起きてお金を無駄にしてしまう?

じゃあ正解を言おう。熟練のボードビルダーで元プロツアーのコンペティターそして尊敬されるサーフライターでもあるデーブ・パーメンターによれば、このレジンの硬化時間の伝説はサーフィン界にもっとも浸透している迷信だという。

完成したばかりのサーフボードはまだ柔らかくサーフィンに十分な準備が整っていないから、しばらく時間を置いたほうがいい。もし、その掟を破ってしまうと、そのサーフボードはバラバラに分解してしまうか、もしくは夜になると、かぼちゃか何かに変身してしまう。1週間は、いや2ヶ月は必要だと意見は様々。

ファクトリー、ウォータマンズギルドのオーナー、グレッグ・マーツはそれにまつわる笑い話をしてくれた。サーフボードの仕上がりにうるさい客がサーフボードの苦情を言ってきた。

そのボトムにはわずかな気泡と、フィンボックスの周囲には少しの剥離が見られたが、問題になるほどの事ではなかった。しかしその客は、まだボードは未使用で太陽にもまだ晒していないのにと文句を言った。

そこでグレッグはその客に何か変わったことをボードにしてはいないかと、問い詰めた(おそらくグレッグは、その客の顔をアセトンの容器に突っ込みたかったに違いない)。
すると、その客はきまり悪そうにそのボードを暖かいウォーターベッドに3日間、寝かせてしまったと白状した。それが原因で硬化が正常に進まなくなったのだと、客は早とちりして苦情を取り下げたという。

レジン硬化時間内に複雑な工程を済ませなければならない。ファクトリーOZで作業中の高橋名人 photo:Ri Ryo

さて本題に戻ろう。サーフボードは硬化のためにどれくらい時間がかかるのだろうか。科学的に考えると、ポリエステルレジンはさまざまな化学成分が結合し長鎖分子となり、硬質なプラスチックを構成している。さらにサーフボードに使用されるポリエステルレジンは熱硬化性のレジンである。これは化学的熱反応を加えないと硬化しない。

レジンの硬化の仕組みを考えるにはハシゴをイメージしてほしい、長鎖分子のレジンがハシゴの両柱、そして成分の一つスチレン単量体分子がハシゴの段。さて、レジンに正しい量の硬化剤(メチルエーチルケトン過酸化物、略してMEKP)を添加すると熱反応を誘発し重合もしくは硬化を始め、水飴のような状態から石のように硬いプラスティックに変化する。レジンが硬化を始めるとスチレンが揮発しそのハシゴ段がしだいに収縮を始める。

サーフボードから揮発した気体は、危険で揮発性有機化合物(VOCs)と呼ばれ、環境汚染のニュースでよく登場する悪役でもある。さて、基本的にレジンの硬化はスチレンの揮発によって起きる。結合力の弱い分子が取り除かれハシゴの段と段を結合させ硬く強くなる。このプロセスは熱にも反応するために、工場内の気温を上げると硬化時間に大きな影響を与える。

さて、このややこしい化学の教室で何を学んだかというと、1~1.5%の触媒比率、気温が摂氏25度だとサーフボードにグラッシングされたレジンの98%は約30分で硬化するということだ。強調したいことは、気温の変化による硬化速度だ。もし気温が摂氏20度だとしたら硬化時間は2日から7日となる。

つまり君が手にする新しいサーフボードはサンディングの工程も考えるとレジンは十分に硬化しているとうことだ。私はサンディングの工程を終えて18時間後に最初の波に乗った1987年製のボードを持っているが、今だにコンデションは良い。

もちろん市場にはさまざまなブランドのレジンが出回りその品質も違う、ファイバーグラスクロスもブランクスも多種ある。その全ての要素がサーフボードを構成し、かつ硬度と耐久性に関わっている。それらの重要性はレジンの硬化時間以上だ。だがそれを語るにはまた別のストーリーが必要だろう。とにかく友達の肩を叩いてあげて、そんなに心配をしなくても良いんだよと、ウォーターベットからサーフボードをひっぱり出してあげよう。

(李リョウ)

この記事は下記ブログより構成いたしました。
Do Surfboards Need to Cure Before You Ride Them?
https://www.surfline.com/surf-news/surfboards-need-cure-ride/42207

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