Photo:WSL/Marenelmar

サーフィン業界に迫る新型コロナ世界不況。大手ブランドで解雇相次ぐ

新型コロナウイルスの世界経済への影響は2008年のリーマンショックを大きく上回る中、サーフィン業界も大打撃を受けている。目に見えない脅威がもたらす終わりの見えない不安。大手サーフブランドも閉店や一時解雇を強いられている。


大手サーフブランドも苦渋の決断を迫られる

早い段階で対策に踏み切った「Volcom」は、アメリカのスタッフの75%に加え、ヨーロッパのほぼ全スタッフを一時解雇したことを、アクションスポーツのニュースサイトShop Eat Surfが報道した。状況が落ち着けば再度雇用する予定だが、会社の存続を守るために早めの対策を打った模様だ。多くのVolcomライダーも契約の見直しや解約を強いられているという話もある。

昨年、ニュージーランドに本社を置くアウトドアブランドKathmanduに買収された「Rip Curl」は世界中の販売店を閉鎖、スタッフの大半を一時解雇した。残った経営陣も20%減給に合意し、ネット販売を継続することで乗り切ろうとしている。

豪Stab誌によると、「Quiksilver」のヨーロッパ支社もスタッフの大半を解雇、残ったスタッフは大幅な減給もしくは当面無給で働くことに合意した。コストを削減して、状況が改善したらビジネスを再開できることを期待している。Quiksilverが本社を置くフランスでは失業給付がしっかりしていて、当面の間本来の給料の8割まで政府が保証するのだという。

長年CT初戦のメインスポンサーを飾ったQuiksilver、他の大手サーフブランド同様苦しい対策を強いられている PHOTO: WSL / KELLY CESTARI

「O’Neill」のアパレル子会社La Jolla Groupも、企業スタッフの大半を解雇もしくは一時解雇とした。販売店も閉鎖し、店員を一時解雇。残ったスタッフが減給で働き続けている。O’Neillのウェットスーツ部門は現在のところ営業を続けている模様だ。

一時的な対応とは言え、多くの人が雇用を失い、先行きが不透明ななか心配が絶えないだろう。各社も経費を削減し、経営を縮小するなどの対応に踏み切ったものの、近いうちに状況が改善しなければ立ち直れるかは分からない。

プロサーフィン界への影響

プロサーフィン界にも影響がみられている。世界のプロサーフィン組織WSLは5月末までのCTとQSを含めて全ツアーを休止し、大会の延期もしくは中止を発表。当面選手の賞金収入もなければ、組織のスポンサー収入、広告収入がなくなる見込みだ。

WSLによる大会延期のお知らせ

国内においてもJPSAが4月上旬に予定されていたショート・ロングボードの開幕戦の延期を発表し、新たな日程がまだ明らかになっていない。オリンピックに向けての強化合宿、ジャパンオープン、世界選手権もすべて延期が確定している。

サーフツーリズムへの影響

海外では外出禁止や渡航制限をする国が増えるなか、観光業も打撃をうけ、サーフポイント周辺の宿泊施設やレストランなどが閉店に追い込まれているところもある。なかでも収入の8割強が観光業から来ていると言われているバリでは影響はすさまじい。インドネシア政府が感染拡大を阻止しようと、入国ビザの発行を中止し、事実上観光客の入国禁止に踏み切った。

普段は激混みのバリ島Uluwatuは、コロナウイルスの影響でサーファーの数が激減。Photo: WSL

モルディブも観光ビザの発行を一時中止し、中米のパナマでも交通網が停止。外出禁止やビーチ閉鎖に違反して、サーフィンをした人が逮捕されるニュースも報道されている。

サーフショップへの影響

ネット販売の発展により、個人経営のサーフショップが経営の見直しを強いられているなか、新型コロナウイルスの影響で更なる打撃を受けている。米Surfer誌によると、アメリカでは家賃や人件費などの固定費を節約しようと、スタッフ数を大幅に減らしたり、経営スタッフも減収を強いられているところが多い。ネット販売にも活用することで、少しでも収入をキープしようとしているところもある。


日本国内はまだそこまでシビアに感じていない人が多いようだが、世界的に多くの人が解雇されたりしているなか、仕事と収入が安定しているのは当たり前なことではない。サーファーの多くにとって海に入ることは精神安定剤のような効果があるが、こんなにつらい時でもそれすらできない地域もある。苦しい状況の中、対策をしっかりとり、早い内にサーフィン業界にも明るい光が戻るように祈りたい。

(ケン・ロウズ)

≫各地域の連盟や自治体からの自粛要請、駐車場の閉鎖やイベント中止情報は「新型コロナウイルスによるサーフィン業界への影響まとめ」にて更新中

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