2X World Champion Jhon Jhon Frorence worldsurfleague.com 人気と実力を兼ね備えた元世界チャンピオン、ジョンジョン・フローレンス

メジャーリーグとフリーサーフ。世界で稼ぐプロサーファーたち

サーフィンで収入を得るのがプロサーファーだけど、プロになるためにあえてプロになる必要はない?

シリーズ「サーフィン新世紀」14

メジャーリーグ『CT』の賞金額

「サーフィンで食っていけるのか?」という質問を受けることがある。道は険しいが世界で認められれば、人がうらやむ収入も夢ではない、と私は答えるようにしている。しかし、そう答えていたものの、実際に彼らがどれくらい稼いでいるか具体的には知らなかった。そこで世界で活躍するプロサーファーたちの収入や、さらに自由にサーフィンだけをして稼ぐ『フリーサーファー』と呼ばれるサーファーたちのことも調べてみた。

まずサーフィンのコンテストには『WSL』(※1)というプロサーフィンを統括する世界的な組織がある。プロサーファーの世界チャンピオンを決める『WSL』は『CT』(※2)という世界ツアーを毎年運営している。『CT』はいわばメジャーリーグで、そこを目指すサーファーのために『QS』(※3)というマイナーリーグがある。

『WSL』のルーツは1976年にハワイで2人のサーファー(※4)が立ち上げた『IPS』(※5)がはじまりで、その後『ASP』(※6)に、さらに2012年、現在の『WSL』へと再編されていった。

他のメジャーなプロスポーツを組織する団体に比べれば、『WSL』はその歴史がまだ浅く一般社会に広く浸透しているわけではない。しかしその組織や運営そして賞金額も年々改善されてきていて、プロスポーツのイベントにふさわしい体制をとっている。

この『WSL』(前ASP)が運営した試合の優勝賞金で、いままで最高額だったコンテストは、2010年にニューヨークで行われた「Quicksilver Pro New York 」で賞金総額は30万ドル(約3400万円)だった。現在の『CT』で行われる各コンテストは、平均して10万ドルほど優勝賞金が掛けられている。

オーストラリアでサーフィンはメジャースポーツ
Rip Curl pro worldsurfleague.com

『WSL』の世界チャンピオンの獲得賞金額はどのくらいかというと、少し古い資料だが2016年に世界チャンピオンとなったジョンジョン・フローレンス(HWI)の賞金総額が40.6万ドル(約4600万円)。賞金額で2位になったのはマット・ウィルキンソン(AUS)で33万ドル(約3800万円)。3位がガブリエル・メディナ(BRA)の28万ドル(約3200万円)となっている。ウイメンズでは昨年の世界チャンピオンになったタイラー・ライト(AUS)が、4万ドル(約450万円)を賞金だけで稼いでいる。

昨年、2018年の世界チャンピオンはガブリエル・メディナが2度目の栄冠を手にし、賞金総額47.32万ドル(約5300万円)。ウイメンズはステファニー・ギルモア( AUS)で34.345万ドル(約3800万円、ウイメンズは賞金額が改正された)。

ちなみに日本人選手として唯一CTに参加しているカノア・五十嵐は総合10位で17.46万ドル(約2000万円)を獲得した。賞金額だけを他のメジャースポーツと比較すれば、ゼロの単位が少し足りないと感じるのは否めない。しかし世界のサーフリゾートやサーフシティを巡り、その地のパーフェクトウェーブでサーフィンをするという付加価値を考えると一般サーファーにとっては正に『ドリームツアー』という名にふさわしいゴージャスなものだ。

賞金よりも契約金

プロサーファーにとって格段に収入の額が大きいのは賞金額よりもメーカーとの契約金。ここでも一番はジョンジョン・フローレンスで、2014年には7つのメーカーと、一年で320万ドル(約3億6千200万円)の契約を結んだといわれる。イケメンで女性ファンの多いジュリアン・ウィルソン(AUS)は世界タイトルはまだだが、それでも広告塔としての価値が高く180万ドル(約2億円)。女性ではステファニー・ギルモアが、賞金を合わせて180万ドル(約2億円)を稼いだ。

11度の世界タイトルを誇るケリー・スレーターは、サーフウェアのクイックシルバーや、サーフボードメーカーであるチャンネルアイランドと超高額の契約を結んでいたが、数年前に契約を解消し、自分のブランドを立ち上げ起業家として活躍している。というのも金額が高すぎて並の企業ではケリー・スレーターと契約できないという事情もあったようだ。ケリーの経歴や個人資産に興味のある方はコチラの記事に詳しいレポートがある。

2x world champion Gabriel Medina   worldsurfleague.com
ブラジル人で、初めて世界チャンピオンに輝いたガブリエル・メディーナは国民的英雄となり、国内のさまざまな企業からサポートを受けている

話題は少し逸れるが、コンテストの規模がしだいに大きくなるにつれてツアーを回るプロサーファーを取り巻く環境も変わってきた。『ASP』が運営していた90年代は、選手は一人でツアーを転戦するというのが普通だったが、現在のトッププロには、マネージャーやコーチ、トレーナーなど、選手を支援するサポーターが契約で帯同している。

最近特に注目を浴びるのが、プロテニスのような専属コーチの存在だ。例えば、プロサーファーだったグレン・ホールは、選手を引退後にすぐにコーチに転職しチームを結成。するとその選手たちが好成績を上げるようになり、その一人タイラー・ライトはウィメンズの世界チャンピオンを達成した。

またガブリエル・メディナは家族でツアーを転戦し、食事は母親が作りコーチやマネージメントは父親や兄弟が行うというスタイルでツアーを転戦している。年齢が若くしかも英語が苦手なガブリエルが、短期間で世界チャンピオンを達成できたのは、彼らのバックアップが大きかったのは言うまでもない。

コンテストで戦わないプロサーファー

さて、プロサーファーが試合に出場しないで収入を得るという道がサーフィンにはある。サーフィンは純粋な競技スポーツというよりも、サブカルチャーとしての側面も有るからだ。つまり試合で強い選手=ヒーローというわけでなく、試合に出なくてもサーフィンが上手くカッコイイサーファーは、それだけでヒーロー=広告塔としての価値があるために、自由にサーフィンをするだけで、サーフブランドなどの企業から契約金を受け取るというプロが存在する。それをプロフェショナル・フリーサーファーと呼ぶ。

Dane Reynolds vans.comsurfer.com
世界チャンプも認めるサーフィンの実力を持つデーン・レイノルズ

有名な例ではデーン・レイノルズがいる。デーンは少年のころからサーフィンが上手く、将来の世界チャンピオンとして有望視されていたが、CTでは良い結果が出せなかった。そこで彼は世界を旅しながら、好きな波でサーフィンをして、その映像を広告やサーフムービーとして発信するというスタイルで生計を立てている。それでもデーンは、その容姿やエキセントリックな性格、そしてもちろん抜群に上手いサーフィンで、若い世代からカリスマのような支持を受けている。彼の2014年の年収は390万ドル(約4億4000万円)、試合で勝たなくても、彼の影響力によってサーフボードやサーフウェアが売れてしまうから、関係する企業は彼を手放そうとしない。

Craig Anderson   surfersjournal.com   試合のクライテリアにはまらない自由なサーフスタイルでファンを獲得したクレイグ・アンダーソン はいまや最も注目されるフリーサーファーの一人

しかし、フリーサーファーはそんなに影響力を持っているのか、と疑問に思う人もいるかもしれない。その好例に、クレイグ・アンダーソンがいる。彼もコンテストでは全く芽が出なかったサーファーだが、そのスタイリッシュなサーフィンとルックスが認められて、大手サーフブランドと契約を結んだ。フォトジェニックな彼はさまざまなメディアで取り上げられ、広告に数多く露出し注目を浴びるようになった。その結果、彼の乗るサーフボードが世界的に大ブレイク。それをデザインしたヘイデン・シェープスサーフボードは、年間18,000本のサーフボードを製造するまでに急成長している。つまりプロになるために、あえてプロになる必要がないのも、サーフィン世界の不思議で面白いところではある。

(李リョウ)

※1 : WSL:ワールドサーフリーグ
※2: CT:チャンピオンズトーナメント
※3: QS:クオリファイシリーズ
※4: フレッド・ヘミングスと、ランディ・ラリック、ヘミングス氏は元世界チャンピオンで米国の下院議員。ラリック氏は著名なサーフボードビルダー/コンテストディレクター
※5: IPS:インターナショナルプロフェッショナルサーファーズ
※6: ASP:アソシエーションオブサーフィンプロフェッシュナルズ

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