ハワイから始まり、ポルトガル、オーストラリア、タヒチ、エルサルバドル、ブラジル、フィジーと巡った2024年のワールドツアー。
レギュラーシーズンのトップ5による『Lexus WSL Finals』が4年連続でカリフォルニアのローワー・トラッセルズで行われた。
今年はウェイティングピリオド初日の現地時間9月6日に開催。
多くのファンが見守り、各応援団が大声援を送る中、トップシードのケイトリン・シマーズ(USA)、ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)がタイトルを獲得。
トップシードがワールドタイトルを獲得するのは2021年のカリッサ・ムーア(HAW)、ガブリエル・メディナ(BRA)以来となる。
CT史上最年少のワールドチャンピオンが誕生
この日のローワー・トラッセルズはヘッドサイズのグラッシーコンディション。
タイトルマッチ後半には怪しい風が吹き始めていたが、恐らくウェイティングピリオドではベストと言えるハイパフォーマンスな波だった。
ウィメンズサイドは最初にタティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)がモリー・ピックラム(AUS)を倒し、次のヒートではタティアナがブリッサ・ヘネシー(CRI)とのクロスゲームを制したが、2023年のワールドチャンピオン、キャロライン・マークス(USA)とのグーフィーフッター対決で敗退。
キャロラインとケイトリンのタイトルマッチは『WSL Finals』で2度目となる3ヒート目までもつれ込み、ケイトリンが2勝で初のワールドタイトルを獲得した。
「とても大きな意味がある。今日はあらゆる感情が湧き上がっていて、信じられない気持ちよ。みんなから沢山の愛を感じてた。すべて自分自身のためだと捉えることもできるし、私を支えてくれた人たちのためだと考えることもできるわ」
2勝で決まるタイトルマッチはキャロラインが先行。
しかし、次のヒートではケイティーが覚醒。昨年カリッサを倒したキャロラインの強烈なバックハンドが単調に思えるようなバリエーションの豊かさ。レイバック、ラウンドハウスカットバックとZ世代の感性のまま止まらないサーフィンで9ポイントを2本出して圧勝。
次のヒートでも勢いは止まらず、黒と黄色のケイティ応援団の前でカリフォルニア出身の女子選手では1983/84のキム・メアリグ以来となるチャンピオンに輝いた。
更に18歳での優勝はカリッサと並ぶCT史上最年少記録、日数まで換算するとカリッサを上回る記録になる。
「自分が楽しんで、自分のやりたいようにサーフィンすることを目指したわ。プレッシャーを感じながらサーフィンするつもりはなかった。この舞台に立つみんなが素晴らしいサーフィンをする。私たちはただ波に乗っているだけよ」
2022年、16歳の時にクオリファイを決めたケイティーは、まだ学生ということなどを理由にCT入りを辞退。
全てのコンペティターが必死にCT入りを目指している中、極めて異例なケースとなった。
翌年、何事もなかったように再びクオリファイを決めて僅か3戦目で優勝、もう1勝も決めてルーキーイヤーにしてファイナル5入りとなった。
2024年、更に進化したケイティはまずパイプラインでの開幕戦で優勝。
「女性だってパイプでできるのよ!」と放送禁止用語を交えてつぶやいたことが話題になっていた。
ベルズ、ブラジルでの優勝、パリ五輪出場を経て最高の形でシーズンを終えた。
来年は更に若いエリン・ブルックスというカナダの天才がCT入りする可能性が高く、オーストラリアのシエラ・カーもすぐに追いつくだろう。
ステフは来年戻ってくるが、カリッサが引退して確実に世代交代が進んでいる。
そして、ウィメンズサーフィンの進化も止まらない勢いだ。
JJFが3x達成
2016年、2017年に連続でワールドタイトルを獲得したジョン・ジョンが長年の怪我を克服。
2度目のオリンピック出場、夫、父となって成長した31歳。
ライバルのガブリエル・メディナ(BRA)、ミック・ファニング(AUS)、トム・カレン(USA)
そして、今は亡きハワイの英雄、アンディ・アイアンズに並ぶ3xを達成した。
「涙が出そうだよ。信じられない。7年間、本当に辛かったんだ。怪我も多くて、ここに戻ってくるために戦い続けた。家族、妻、息子、チーム、みんながいたからこそ、この場に立てた。怪我や辛い日々もあったけど、この瞬間のために多くのことを乗り越えてきたよ」
ジョン・ジョンのワールドタイトルは前回のエイドリアーノ・デ・スーザ、ガブリエルのブラジリアン連続タイトル同様にガブリエル、イタロ、フィリッペが5年続けてきた記録をストップさせた。
ワールドタイトルの歴史
https://www.worldsurfleague.com/pages/history
ジョン・ジョンはファーストマッチから超人的な集中力とパワーでイーサン・ユーイング(AUS)、ジャック・ロビンソン(AUS)、グリフィン・コラピント(USA)を倒してきたイタロ・フェレイラ(BRA)とタイトルマッチを行なった。
イタロはジャックロボに仕掛けられたパリ五輪でのギャビーとの激しいパドルバトルを彷彿させる攻撃をかわし、僅差だったグリフィン(Lexusアンバサダーに就任した)とお互いを讃えるハグを交わしたり、そのグリフィンに勝った瞬間に感情を爆発させたり、様々な感情が交錯しながらのタイトルマッチ進出となった。
タイトルマッチは凄まじい情熱のイタロと冷静だったジョン・ジョンの対照的な勝負になった。
それは最初の選手紹介からビーチへのアプローチからして全く違うものだった。
イタロはバックサイドのエアーリバース、一発技に絞ってスコアを伸ばしていったが、ジョン・ジョンはじっくりと波を待ち、エアーとマニューバーのコンビネーションで美しいサーフィンを披露。
最初のヒートを逆転で勝利して次のヒートではこれぞジョン・ジョンと呼べる7年間の全てをこめた渾身のレイバックでギャラリーと黄色と迷彩のJJF応援団を熱狂させ、『WSL Finals』史上最高の9.70をスコア。イタロをニード9.96まで追い込んでストレートで2勝を決めてワールドタイトルを獲得した。
「なんて素晴らしい日だろう。ここに来るまで本当に険しい道のりだったけど、やり遂げて再び勝利できたことがすごく嬉しい。3度のワールドタイトルを持つ名前のリストは本当に素晴らしいし、その一員になれたことを誇りに思う。ガブと並べたことにも興奮しているよ。彼はとても激しい競争相手で、僕たちは同じタイミングでツアーに参戦したからね」
ジョン・ジョン31歳、ギャビー30歳。
グリフィンとロボが26歳で、ウィンメンズと比べるとケリー、ミックなどとの世代交代が終わったばかりのメンズサイドは年齢層が高い。
2025年は新たな才能が頭角を現すのかにも注目したい。
2024年CT最終ランキング
1位 ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)
2位 イタロ・フェレイラ(BRA)
3位 グリフィン・コラピント(USA)
4位 ジャック・ロビンソン(AUS)
5位 イーサン・ユーイング(AUS)
ウィメンズ
1位 ケイトリン・シマーズ(USA)
2位 キャロライン・マークス(USA)
3位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
4位 ブリッサ・ヘネシー(CRI)
5位 モリー・ピックラム(AUS)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(空海)