(優勝したタイラーとイーサン) PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

タイラー・ライトが2連覇&イーサン・ユーイングがベルズ初優勝!『Rip Curl Pro Bells Beach』最終日

今年で60周年を迎えた伝統のベルズ戦、CT第4戦『Rip Curl Pro Bells Beach』が現地時間4月11日に終了。

毎年イースターホリデーに合わせて開催される今イベント。残念ながら最後まで本来のベルズの波は姿を現さなかったが、ファイナリストが全てオージーとなり、10年以上ぶりにメンズ・ウィメンズ共にオージーが優勝してベルを鳴らすというローカルには嬉しい大会となった。

イーサンが母親ヘレンの偉業を継ぐ

(イーサンの美しいターン)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane

ファイナルデイは前日までの強い南よりの風がおさまり、ダウンジャケットにニット帽からTシャツ一枚で観戦する人の姿も目立つほどの天候に回復していた。
舞台は公式2-3ftのウィンキーポップ。メンズはRound of 16のH2、ウィメンズはQF以降と多くのヒートが残っていたが、2つのヒートを同時進行するオーバーラッピングヒートを利用して一気にファイナルまで行われた。

(最終日は一転して暖かい日となった)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

メンズサイドはカレントリーダーのジャック・ロビンソン(AUS)がRound of 32、2位のジョアン・チアンカ(BRA)がRound of 16ですでに姿を消していたため、3位以下の選手にとっては差を縮めるチャンスとなった。
特に3位のフィリッペ・トレド(BRA)はSFまで進出して二人との差を縮め、次のマーガレットリバーでは逆転する可能性も出てきた。

ファイナルはSFで昨年のリベンジマッチとなるフィリッペを倒したイーサン・ユーイング(AUS)がライアン・カリナン(AUS)と対戦。ライアンはジョン・ジョン・フローレンス(HAW)を抑える勢いでCT優勝まであと一勝まで迫ったが、最後はイーサンが完璧に主導権を握り、トータル14.50で初めてのベルを鳴らすことに成功した。
実はイーサンの母、ヘレン・ランバートは1983年にベルズで優勝経験があり、その母が早くに亡くなったこともあり、特別な思いでベルズ戦に臨んでいたそうだ。

(亡き母に捧げる勝利となったイーサン)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane

「本当に凄い。最高の1週間だったよ。この大会は特別で、一番勝ちたかったんだ。ツアーに入って以来、ずっと考えていたのさ。母を誇りに思いながら、自分の大きな目標にしていた。母の名前と共に自分の名前をベルズの階段に刻むのを夢見ながら、トロフィーをベッドの横に置いていたのさ。人生は何が起こるか分からない。だから、あなたも母に感謝の気持ちを伝えてください」

2022年のJ-Bay戦以来、2度目のCT優勝を決めたイーサン。
今回の優勝でランキング4位に浮上。昨年に引き続き、ファイナル5進出への道を確実に歩んでいる。

「今年はスロースタートだったけど、この大会で自分の感じをつかめた。全ての大会が楽しみであり、美しい場所に行けることを楽しみにしているよ」

(父と喜びを分かち合うイーサン、きっと母も誇らしく思っているだろう)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane
(ベルを鳴らす前の儀式)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane

11名がシーズン後半戦進出を確定させる

(ミッドシーズンカットの危機にあるライアンにとって大きな2位だった)
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次のマーガレットリバー戦がツアーの折り返し地点となり、ランキング下位の選手はCS落ちになるミッドシーズンカットが遂行される。

ベルズ戦開催前にすでにメンズのトップ5はシーズン後半戦進出を確定させていたが、今回の結果によって新たに6名が後半戦進出を確定。
今回2位になったライアンもその一人。見事に7位もランキングをジャンプアップさせ、6位に浮上した。

「正直、どうやって勝ち進んできたか覚えていないんだ。ベルズで戦うことは名誉であり、お気に入りのイベントの一つさ。この場所は沢山のサポートをいつも感じるし、大好きなんだ。自分の祖父と祖母も応援に来ている。グーフィー代表としてオッキーと参加できるなんて、信じられないことだよ。コーチにも感謝したい。ステージに上がる機会が少ない自分を成長させ、最善を尽くせるように励ましてくれたことに感謝したい

Men’s CT: Made the Mid-season Cut

Joao Chianca (BRA)
Jack Robinson (AUS)
Filipe Toledo (BRA)
Ethan Ewing (AUS)
Griffin Colapinto (USA)
Ryan Callinan (AUS)
Caio Ibelli (BRA)
John John Florence (HAW)
Yago Dora (BRA)
Leonardo Fioravanti (ITA)
Gabriel Medina (BRA)

タイラー・ライトが2連覇

(タイラーのパワーが炸裂した)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

ウィメンズサイドは昨年念願のベルを初めて鳴らしたタイラー・ライト(AUS)と今シーズン驚異的な強さを見せている20歳のモリー・ピックラム(AUS)がファイナリストに選ばれ、十八番のパワーサーフィンで8.17を含むトータル16.00で圧勝。
文句なしのベルズ戦2連覇でランキング2位に浮上している。

「最初のベルを鳴らすのに12年かかった。今年のベルは違う感覚だけど、同じように嬉しいわ。この場所でサーフィンすることは名誉であり、特権。私のフルチームとサポーターがここにいるのは素晴らしいことね。私にとって、こんな瞬間が世界で一番大切で価値がある。自分が望んでいたように実行できたことを本当に誇りに感じている」

今年のベルズ戦は兄オーウェンの引退試合という特別な一戦だった。
弟のマイキーも含め、3人がCTに揃う時期もあったほどのサーフィン一家だが、華やかな舞台の裏には様々な葛藤がある。
それを乗り越えて戦っているタイラーの強さに感銘を受ける人も多いだろう。

(嬉しそうに妹を担ぐオーウェン) PHOTO:© WSL/Ed Sloane
(盛大にベルを鳴らすタイラー)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane
(イエロージャージが定着してきたモリー)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane

今シーズン2度目のファイナル進出を決めたモリーは次のマーガレットリバー戦でもイエロージャージを着ることになる。
ミッドシーズンカットでCS落ちとなった昨年とは一転して強いサーファーに成長したモリーがウェスタンオーストラリアでどんなサーフィンを披露するのかにも注目したい。

「オーストラリアに戻ってきた今、家族や友人の前で優勝したい。それが全てよ。母国でこれまでで最高のパフォーマンスをすることができたことは、本当に嬉しい。タイラーとは一緒に多くの旅をして話し合ってきた仲間よ。彼女はいつも私をサポートしてくれて、良いアスリートに成長させてくれたの。タイラーから多くのインスピレーションを受けている。本当にそれは素晴らしいことよ」

なお、ベルズ戦終了時点でウィメンズは3名がシーズン後半戦進出を確定させている。

Women’s CT: Made the Mid-season Cut

Molly Picklum (AUS)
Tyler Wright (AUS)
Carissa Moore (HAW)

五十嵐カノアが24位から17位に浮上

(ヒート前に集中するカノア)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

ファイナル5に進んだ昨年とは一転、ミッドシーズンカットのライン下、24位にいた日本の五十嵐カノア。
ベルズ戦ではシーズン2度目の9位でランキング17位まで浮上しているが、7年のキャリアでマーガレットリバーとの相性は良くなく、まだ油断はできない。

なお、今回5位のコナー・オレアリー(AUS)は12位に浮上。
最下位の和井田理央(IND)は16位に転落している。

(9位でランキングを上げたカノア)
PHOTO:© WSL/Ed Sloane

次は運命のマーガレットリバー戦。
4月20日〜30日に第5戦『Western Australia Margaret River Pro』が開催される。
メンズはジョアン・チアンカ(BRA)が初めてのイエロージャージを着ることになる。

『Rip Curl Pro Bells Beach』結果
1位 イーサン・ユーイング(AUS)
2位 ライアン・カリナン(AUS)
3位 フィリッペ・トレド(BRA)、ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)
5位 マシュー・マクギリヴレイ(ZAF)、ジャクソン・ベーカー(AUS)、コナー・オレアリー(AUS)、グリフィン・コラピント(USA)

ウィメンズ
1位 タイラー・ライト(AUS)
2位 モリー・ピックラム(AUS)
3位 イザベラ・ニコルス(AUS)、ステファニー・ギルモア(AUS)
5位 キャロライン・マークス(USA)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)、カリッサ・ムーア(HAW)、タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)

2023年CT『Rip Curl Pro Bells Beach』終了後のランキング
1位 ジョアオ・チアンカ(BRA) 25,400pt
2位 ジャック・ロビンソン(AUS) 25,215pt
3位 フィリッペ・トレド(BRA) 22,160pt
4位 イーサン・ユーイング(AUS) 19,395pt
5位 グリフィン・コラピント(USA) 18,620pt

ウィメンズ
1位 モリー・ピックラム(AUS) 27,290pt
2位 タイラー・ライト(AUS) 24,930pt
3位 カリッサ・ムーア(HAW) 22,100pt
4位 ケイトリン・シマーズ(USA) 19,965pt
5位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA) 18,185pt

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(空海)

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