Photo: WSL / Thiago Diz

たった1日でワールドチャンピオンを決めることの賛否

F+(エフプラス)

2022ワールドチャンピオン、フィリッペ・トリードとステファニー・ギルモア。
何がびっくりって、あの波でピリオド初日にやっちゃうんだ、だったかな。
フィリッペはもう今シーズン最初から最後まで集中して安定した強さを誇っていたので、勝つべくして勝った感じだ。最後の相手は5位から上がってきたイタロ・フェレイラ。ブラジリアン同士のタイトル争い、どっちが勝っても4年連続ブラジリアンのワールドチャンピオンということだった。18年ガブ、19年イタロ、20年コロナで無し、21年ガブ、そして22年フィリッペ……来年はガブかイタロかフィリッペと言ってしまうのも、あながち間違いではないような気がするのが恐ろしい。現状ケガ以外にこのブラジリアンストームを押さえる手立てがなさそうな感じがする。
何回か前にファイナルズのちょっとした予想を書いたけど、イタロかカノアの勝ったほうは上まで行ける、と考えたときにスキップされたイーサン・ユーイングとジャック・ロビンソンは見事に今回下から来たイタロにやられたわけだけど、なぜそういう感じが予想できるかといえば、コンスタンシーとか勢いとかがちょっと足りないから。何となくですけど、そういうのって感じるんですよ。
女子だってロウワーという会場の波を考えれば、ステファニーの目は出てくる。

Photo: JPSA
Photo: JPSA

JPSAでは茨城で昨年のグラチャンの西慶司郎が優勝したけど、その前の2試合が終わった時点で優勝こそないものの、2位につけていて、あぁ、今年も慶司郎なんだな、と思っていた。そこでこの優勝なので、今年は優勝のおまけがついての2連覇か、と思った。
金沢呂偉とか安室丈とか伊藤李安琉とか若手も来てるけど、なんだろうな、慶司郎が持ってる絶対的な、ファイナルまで途切れない安定感とか、あの普通に、当たり前のように勝っていく感じのような、ある意味地味な強さのようなもの彼らにはがあまり感じられない。爆発はするんだけど燃え広がらない、みたいな、なんだろ、わかりにくいですね。でも私は感じるんですよ、そういう安定感。で、それはタイトルには絶対必要なものなんですね。
今年慶司郎が取れば、なんか以前の加藤嵐をほうふつとさせる2連覇かな、と思う。優勝無しで初タイトル、翌年優勝してのタイトル連覇、同じだもんな。まぁ、ノッてるってそういうことだろうし、そういうときしかやりたいことはできないので、ケガに気を付けて頑張ってください。

Photo: WSL / Thiago

話があちこち前後しますが、CTでその慶司郎の安定感(レベルはだいぶ違うけど)を持っているのは現状ブラジル勢の3人、ガブ、フィリッペ、イタロ。フィリッペとイタロはちょっと弱いけど、まぁ、チャンピオン候補には必ず上がるだろうと思う。そこと対抗するには、ジョンジョンはケガが多すぎるし、ジャックロボは壊れやすいし、イーサン・ユーイングは安定感がなさすぎ。オールラウンドという切り口で見れば、少なくともあと数年はブラジル強そうかな、と思う。そして奪還するとすれば、フルシーズンケガのない条件付きでのジョンジョン一択。実はこのブラジル対ジョンジョンの構図は2014年からすでに8年続いている。

Photo: WSL / Pat Nolan

女子のほうはもうこのシステムならではの結果と言えると思う。あの波はステの波だ。オープンフェイスのカービングの波。そしてステファニーはかなり攻めたカービングをしていたと思う。5位からのまくり、8度目のタイトル。まぁ、このファイナルズという上位5人だけが出られる試合で1発勝負システムでなければ、8度目のタイトルはなかったんじゃないのかな、と思う。最近のステファニーが思うように行ってなかったのは、早いラウンドでの取りこぼしの多さゆえ。安定感はなかった。
ま、何とか5位に滑り込めれば、誰にでもタイトルのチャンスがある、というこのシステムのいい見本になったと思う。

そしてたった1日でワールドチャンピオンを決める、だから注目される、というWSLの目論見は過去最多の830万回というライブストリーム再生総回数を記録した。WSLからのリリースはかなり興奮気味にこのことを語っているけど、これを多いと見るか少ないと見るかはスポーツの中のどの辺のカテゴリーにサーフィンを置くかで変わってくるだろう。全世界のスケールで830万回ってどうなんだろうね。
まぁ、この1日の興奮に集中させるために、そこまでの経過の注目度はどうしたって薄くなってしまうと思う。でも一極集中で商売的に成り立つなら、それで正解なんだろうな。
ただ、何度も書いているけど、私はこのシステムは好きじゃないです。年間で決めるなら、自分が負けても追う人が届かなければタイトルっていう、他力タイトルシナリオがあったけど、もうないもんね、それ。理由はそれだけじゃないけど、タイトルにはいろんなシナリオがあったほうが面白いと思うし、今回のように、たまたまこの日がステの大得意な波だった、ということで取られちゃったカリッサは、今年一年間の努力をどう消化すればいいのかな、と思う。ルールだから、と言えばそこまでではあるけど。

F+編集長つのだゆき

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