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「ケリー・スレーターのインターフェアを分析、全盛期との違いとは」- F+

F+(エフプラス)

サメもコロナもあったけど、何事もなかったかのように2021ツアーの初戦が終了した。
この後サンセット、サンタクルーズとアメリカ行脚が続くので、アメリカ以外の選手たちは年末年始はハワイでってことになるんだろう。
国内外の行き来が原則的に禁じられているオーストラリアの選手たちは、政府から許可を得ての出場で、その許可の条件の中に3か月は帰らない、みたいなことが含まれているらしいので、どんなに帰りたくても帰れないらしい。可哀そう。

近所のワンワンコミュニティの人が、あのケリーの最後のバックドアは10点にはならないですかね、と聞いてきたので、みんな見てるんだなぁ、と思った。
私はプライオリティがジョンジョンだったので、どのみちノーカウントなので、点をつける、という目線では見ていなかったけど、そうね、限りなく10点に近かったかもしれない。逆転させてもいいし、0.01足りなくてもいい。
ケリーのプライオリティで終了間際、ビーチのギャラリー大興奮、という空気感が後押しすれば、ドラマになったかもしれない、とは思う。
ガブを引き合いに出して、万事休すのこういう時に何をするか考えた、とかケリーがコメントしてたけど、あそこで相手にプライオリティを握られていた、という現実が、悲しいかな全盛期のケリーとは違う、というところなんだろうな、と思う。
まぁ、あのバックドア1本で話題は持ってったので、負けず嫌いのケリーちゃんとしてはちょっと気が済んだだろうけど、あの波はジョンジョンが乗っても同じように10点に近いライディングになるので、その波が来た時に自分がプライオリティを持っている、ということも勝つための条件になる。技術や実力だけじゃない、何か。
まぁ、あの波を10点にできるのはケリー、ジョンジョン、ガブの次元違いの3人限定ではあるけど。


全く同じ状況で、ケリーがプライオリティ、ラストウエイブで逆転勝利、ビーチ大興奮、という光景を今まで何度見ただろう。わざと負けてそういう状況を作ってるんじゃないか、と疑うぐらい、ケリー全盛期の頃は何度も何度も見た。5年連続6度目のタイトルの頃だ。奇跡の波は必ずケリーに入ってきた。本当に嫌になるぐらい同じ場面を見せられた。
今思えば、選手のピークってそういうことなんだろうな、と思う。実力や技術以外の何か。それが全盛期のケリーにあって、今はないものかもしれない。その「何か」、はセミリタイアのあと消えたように思う。でもそれが消えた分、フィジカルやテクニックが向上していて、第2次のピークとしての7-11のタイトルだと思う。
そして今、フィジカルやテクニックは第3次ピークのように見えるけど、何かが足りない。 その何かを神様以外、と限定するなら、勝っているときのケリーなら、あのヒート終盤に相手にプライオリティを渡すことなどなかった。それはイコールひとつ前のプライオリティの波でミスをすることなどなかった、ということだ。
マンオンマンヒートというのは最初のプライオリティエクスチェンジからずっと続いているサドンデスゲームだ。自分のプライオリティの時にミスをすれば、それはすぐに負けにつながる。冷徹な計算、マシンのように実行する正確さ、人知を超えたコンペマシン。その辺がセミリタイア後、薄くなったのかな、と思う。年齢や経験を重ねて、人間に深みが出た。その分冷徹なマシンではなくなった……そう思えばそれも悪いことではない。どっちにしてもまだまだ人の目をひきつけてやまないスターではある。

F+編集長つのだゆき

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