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世界のプロサーファー、契約破棄や大幅減給が続出

新型コロナウイルスの影響で深刻な打撃を受けているサーフィン業界。 世界的な不況に加え、各国間の移動も制限されているなかサーフィン大会のほとんどが延期または中止を余儀なくされている。多くのプロサーファーをスポンサーする企業の収益は激減し、大会の賞金やボーナスも皆無となり、選手にとって苦境が続いている。

豪Stab誌の報道によると、ツアーのルーキーからワールドチャンピオンまで、海外ではプロサーファーと名乗る殆どすべての人がスポンサー契約を見直されたりしている。海外と国内で事情が異なる部分もあるが、今回はその海外での調査の一部を伝えよう。


世界のトップ選手らもすかさず減額

どうにかこの苦境を生き延びようとQuiksilver、Rip Curl、Billabong、Hurley、 RVCA、 Visslaを含む大手サーフブランドの多くが当面アスリートたちの契約金額を50%カットした。厳しい選択のようだが、企業の売り上げが50%以上減っていることを考えると、今後の関係を維持するにはやむを得ない決断だろう。

昨年CTトップ5入りしたコロヘ・アンディーノやフィリッペ・トレドはHurleyとの契約を再交渉し、コロヘは以前の年額75万米ドルから55万ドルに下げられ、来年は50万ドルへ。今年の頭に契約を更新したばかりのフィリッペも契約金が30万ドル台と、本来の半分以下にカットされている。

Hurleyとの契約を更新したばっかりだったフィリッペも交渉で契約金が半額以下に Photo: WSL/ Kelly Cestari

「オハナ」(家族)のようなチーム関係を築いているNIXONでは景気が悪化し始めた時点で契約金額を四分の一に切ることでチームライダーと合意していたが、状況がさらに深刻になり、少なくても年末まで支払いがゼロに。新契約はまだ交渉中だが、年内は物品のみの支給になるだろう。

ジョーディは痛手免れる

一方でO’Neillはトップ選手の契約を維持しようと最善を尽くしている。昨年のCTランクを3位に終えたジョーディー・スミスの契約を基本契約金の50万ドルを維持したまま2023年まで更新し、CTトップ5入りのボーナス等は分割で払われることにしている。

また、小規模ながら、オリンピックパートナーシップの一環として、Airbnbと新たなスポンサー契約も締結。

好条件で契約を更新できたジョーディはほっとしていることだろう Photo: WSL/ Jackson Van Kirk

ジョンジョンのメインスポンサーは?

今年Hurleyから離脱して現在メインスポンサー不在のジョンジョン・フローレンスはボブ・ハーレーとタイアップで新ブランドを立ち上げるといううわさも流れていたが、どうも企画倒れで終わったようだ。最近ではデンマークを本拠地とするアウトドアブランド「YETI」が新たなスポンサーについたが、板のノーズ部分はまだ空白。メインスポンサーの行方が気になるところ。

若手も早い内に路線変更

若手サーファーにとっても厳しい現実が突きつけられている。豪サーフィン・ライフ誌が発表したオーストラリアのトップ100人のジュニアを制したケイレブ・タンクレッドでさえHurleyとの交渉を目前に「プロサーファーをあきらめて、大学へ進学することにした」と発表した。

サーフィン以外で生計を立てようとしているサーファーが他にも。一時RVCAと100万ドル級の契約を結んでいたジェイ・デイビスは今年に入って契約が月額5千ドルに減らされ、収入を補うためにタグボートの操縦を始めたそうだ。景気がさらに悪化し、RVCAを完全に離れて最近は西オーストラリアのブランドWESTのウエットスーツでサーフィンしているようだ。

サーフィン業界外の可能性

サーフィン業界が干乾びる中、ガブリエル・メディナに習って業界外の企業と契約を結ぶサーファーが増える可能性もあるだろう。

今年リリース予定の新リズムゲームFuserのメーカーがメイソン・ホーやジャック・ロビンソンと契約の交渉をしているという報道も。来年リリース予定のサーフ・ムービーSnapt4の撮影でつながった両者の契約金額が一人あたり年額5万ドルと推定される。

2020年にCTデビューする予定だったジャック・ロビンソン Photo: WSL/ Nate Lawrence

ガブリエルと言えば、長年FCSのアクセサリーを使っていたが、2019年のJベイで優勝した時はCREATURESのデッキパッドを使っていることに気づいた人もいるだろう。

実はFCSの契約が更新された際、フィンのみの契約に変更して、リップカールのチームメイトでCREATURESの共同オーナーであるミック・ファニングの勧めでCREATURESを試したそうだ。ミックのシグネチャー・テールパッドが気に入ったらしく、それから無償で提供してもらっている。試合での実績に加え、インスタで800万以上のフォロワーがいるガブリエルがCREATURESとスポンサー契約を結んでも全く不思議ではないが、ガブからそのような話は全く出ていないらしく王者こその余裕なのかもしれない。

オリンピック新種目に決まって、これから大きく発展しようとしていた矢先のパンデミック誰もが一度は抱いたプロサーファーの夢だが、サーフィンのために人生を注いだ多くのプロサーファーが苦境に立たされている今、彼らがサーフィンに専念できるような手立てが早急に必要だろう。

ケン・ロウズ

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