南アフリカの美しいライトのポイントブレイク「J-Bay」で開催中のCT第10戦『Corona Cero Open J-Bay』は現地時間7月12日に二日目を迎え、メンズのOpening Roundからスタート。
その後、メンズ、ウィメンズ共に敗者復活戦のElimination Roundが進行してメンズはベスト16、ウィメンズはベスト8が決定した。
この日のスーパーチューブスは新しいウネリが入り、公式4-6ftレンジ。
後半は風の影響が強まったが、前半はクラシックなコンディションに恵まれ、ビッグマニューバーだけではなく、バレルあり、エアーありの見応えある勝負となった。

カノアとコナーがベスト16入り

PHOTO: © WSL/Kody McGregor
今シーズン2度のファイナル進出と1度の3位でポイントを稼ぎ、ランキング3位の五十嵐カノアはOpening RoundのH2でルーキーのジョエル・ヴォーン(AUS)、ベテランのアレホ・ムニーツ(BRA)と対戦。
他選手が4ポイント止まりの中、カノアは序盤に5.83をスコア。中盤にはミスの後に6.50を出してトップに立ち、最後にはダメ押しの7.33で圧勝した。
勝利者インタビューでは、「カノア、本当に素晴らしいパフォーマンスだったね。ルーキーシーズンは2016年。あなたはその年にJ-Bayに来て、それ以来ずっとここに来ている。経験というのはどれくらいアドバンテージになる? 最初の波はアンダープライオリティで乗ったよね」と聞かれ、「うん、そうだね。最初の年、ルーキーとしてここに来た時のことをよく覚えてるよ。最初の2年間は、『もう二度とJ-Bayがツアーカレンダーに載りませんように』って本気で思っていた。だってこの波の乗り方が全然分からなかったんだ。ラインを下っていくことすらできなかったし、レールを入れることすらできなかった。本当に難しい波で、正直、1年の中でこのイベントだけは前の晩に眠れなかったんだよね。翌朝、ヒートで相手にボコボコにされるんじゃないかって不安で。とにかく、沢山苦しんだ思い出がある。海で不安を感じた数少ない場所の一つで、ここではそれが凄く強かった。というのも、この波はあまりにも完璧だから、サーファーの欠点が全部さらけ出されるんだ。良いカーヴィングができないとか、ポケットでのターンが甘いとか、そういうのが全部バレる。ハンティントンビーチでのサーフィンの癖も完全にバレバレで、ずっと恥をかいてたよ。でもありがたいことに、毎年ここに通って、オフシーズンにも沢山時間を過ごして、少しずつこの波に対応できるようになってきた。そして年を追うごとに、どんどんここが快適になっていった。今ではツアーの中でもお気に入りのイベントの一つだって言える。本当に感謝してるよ」と答えていた。


「とても興味深いお話だった。ありがとう、カノア。そして、経験に頼るという点で言えば、コーチのジェイク・パターソンはここで2度も優勝しているよね。彼の知識を得られるというのは、どれほど心強いことなの?」との問いには以下のコメントを残している。
「スネーク(ジェイク・パターソン)が自分の味方でいてくれるのは本当に心強いよ。彼はいろんな“小技”とか“ちょっとしたコツ”を持っていて、いつも沢山のアドバイスをくれる。今年もラインナップの位置取りとか、波の角度に関するアドバイスをくれたんだけど、『それ、前の大会のキャンプのときに教えてくれてたらよかったのに!』って感じさ。なんで一部のことは隠してるんだろうって思うこともあるよ。でも、今日みたいに波が完璧な日でも、一本一本の波には微妙な違いや細かい特徴があって、正しい波を選ぶことが本当に重要なんだ。ある波では『これ絶対いい波だな』って思ったんだけど、相手は気づかなくて見逃してて、自分だけが開けた状況で乗れたんだ。そういう細かい“見え方”の違いって、たぶんジェイクみたいなコーチがいるからこそ得られるものなんだと思う」
カノアは次のRound of 16でクロスビー・コラピント(USA)と対戦する。

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もう一人の日本人、コナー・オレアリーはOpening RoundのH3でヤゴ・ドラ(BRA)とワイルドカードのマシュー・マクギリブレイ(RSA)と対戦。
このヒートは特大のエアーで2番目のスコアとなる9.33を出したヤゴの一人舞台となり、コナーはElimination Round行きとなったが、アラン・クリーランド(MEX)とのElimination Roundは風の影響が強まった難しいコンディションで7.50を含むトータル13.50でラウンドアップを決めた。
Round of 16はランキング4位のイタロ・フェレイラ(BRA)とのカードになる。

PHOTO: © WSL/Alan van Gysen
イエロージャージのジョーディ・スミスが躍進

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ツアー最年長の37歳にしてイエロージャージを着る南アフリカのジョーディ・スミスは、Opening RoundのH4でワイルドカードの若き南アフリカ人、ルーク・トンプソン、クロスビー・コラピント(USA)と対戦。
このカードはクロスビーがトップ通過を果たしてジョーディは2位となり、Elimination Roundで再びルークと対戦することになった。
南アフリカ人同士のヒートは、ある意味大会二日目のハイライトになり、会場は大いに盛り上がっていた。
最初のマッチアップはジョーディが7.00、ルークが7.83と先行されたが、これで火が付いたジョーディは次の波で巨大なターンを繰り返し、ビッグフローターまで披露。フィニッシュ後に会心のガッツポーズまで出たこのライディングにジャッジは9.43のハイエストスコアをコール。ベテランの意地を見せて見事にトップを奪った。
ルークも後半にビッグターンで8.13を返したが、この勝負は僅差でジョーディに軍配が上がった。




PHOTO: © WSL/Kody McGregor

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「お互いに良いスタートを切れたと思う。とにかく“ボム”を見つけて一気にヒートを終わらせたかったんだ。そしたらあの波が来て、リビングルームまで乗り継げるくらいのロングライドができたよ! この南アフリカの応援、本当に素晴らしい。それが全てさ。南アフリカ、そして次世代のサーファーたちにインスピレーションを与えること。それが自分の使命だと思ってる。ルークには『また12ヶ月後にここで会おう』って言ったんだ。彼の夢が叶うことを心から願ってるよ」
南アフリカでのCS第2戦で優勝したルークはまだ21歳。
残り7戦もあるので、まだ分からないが、来年CT入りを果たす可能性は十分にある。
なお、ジョーディとルークの間の世代となる中堅のマシュー・マクギリブレイは今回ツアー&コンペティション枠として出場。
趣味のスカイダイビングを活かし、オリンピックさながらに空から登場する派手な演出をしたが、Elimination Roundで敗退して早くもイベントから姿を消した。

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ベスト8が決定したウィメンズ

PHOTO: © WSL/Alan van Gysen
一足先にQFを戦うベスト8が決まったウィメンズサイド。
この日行われたElimination Roundを勝ち上がったのは、ケイトリン・シマーズ(USA)、キャロライン・マークス(USA)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)、タイラー・ライト(AUS)の4名。
ルアーナ・シルヴァ(BRA)、エリン・ブルックス(CAN)とワイルドカードのサラ・バウム(RSA)、フランシスカ・ヴェセルコ(POR)はこのラウンドで敗退した。
エリンはタイラーを相手に中盤までリードしていたが、7.07を出したタイラーに逆転された。
ちなみに二人のスポンサーであるRip Curlは往年のウィルコを彷彿させるような奇抜なデザインのウェットスーツを用意。
ヒョウ柄(チーター?)とシマウマ?柄の2パターンをサポートされている選手はメンズも含めて選べるようにしている。


PHOTO: © WSL/Alan van Gysen


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H1でローカルで昨年のWSL特別戦『J-Bay Classic』を制した強敵のサラを倒してQF進出を果たしたケイティは今回家族で南アフリカ入り。
ブラジルでの第9戦ではこのラウンドで敗退して最下位となったため、ファイナル5を固めるために良い結果を残したい場面だ。
J-Bay戦は2023年に一度だけ経験があるが、最下位に終わっている。
ステフを彷彿させるケイティのスタイリッシュなサーフィンはJ-Bayとの相性も良さそうだが、それだけでは勝てないこの波の難しさがある。
「この波とはちょっと変な関係なの。でもそれは一度忘れて、楽しむことだけを意識してサーフィンしたわ。家族が全員ここにいてくれるのは、気持ちをリセットするのに本当に助かる。アメリカにいる時に弟が全米選手権で優勝したのを見ることができた。今は彼も一緒にここにいるの。正直、こっちでは私より彼の方がいいサーフィンしてるし、おかげで私ももっと頑張らなきゃって思えるわ」
ネクストコールは現地時間7月13日の朝7時15分(日本時間同日午後2時15分)で、18分後に再開予定。
Corona Cero Open J-Bay Men’s Opening Round Results:
HEAT 1: Jake Marshall (USA) 9.23 DEF. Italo Ferreira (BRA) 6.10, Seth Moniz (HAW) 3.94
HEAT 2: Kanoa Igarashi (JPN) 13.83 DEF. Alejo Muniz (BRA) 8.83, Joel Vaughan (AUS) 8.00
HEAT 3: Yago Dora (BRA) 15.83 DEF. Matthew McGillivray (RSA) 8.70, Connor O’Leary (JPN) 7.64
HEAT 4: Crosby Colapinto (USA) 13.36 DEF. Jordy Smith (RSA) 12.00, Luke Thompson (RSA) 8.74
HEAT 5: Ethan Ewing (AUS) 11.53 DEF. Marco Mignot (FRA) 11.43, Cole Houshmand (USA) 8.00
HEAT 6: Leonardo Fioravanti (ITA) 16.13 DEF. Griffin Colapinto (USA) 15.67, Rio Waida (INA) 12.50
HEAT 7: Jack Robinson (AUS) 14.83 DEF. Joao Chianca (BRA) 12.90, Miguel Pupo (BRA) 12.06
HEAT 8: Filipe Toledo (BRA) 13.50 DEF. Barron Mamiya (HAW) 11.26, Alan Cleland (MEX) 10.46
Corona Cero Open J-Bay Women’s Elimination Round Results:
HEAT 1: Caitlin Simmers (USA) 13.00 DEF. Sarah Baum (RSA) 7.83
HEAT 2: Caroline Marks (USA) 11.16 DEF. Luana Silva (BRA) 10.10
HEAT 3: Bettylou Sakura Johnson (HAW) 10.50 DEF. Francisca Veselko (POR) 9.30
HEAT 4: Tyler Wright (AUS) 12.57 DEF. Erin Brooks (CAN) 12.44
Corona Cero Open J-Bay Men’s Elimination Round Results:
HEAT 1: Jordy Smith (RSA) 16.43 DEF. Luke Thompson (RSA) 15.96
HEAT 2: Marco Mignot (FRA) 12.23 DEF. Miguel Pupo (BRA) 8.80
HEAT 3: Italo Ferreira (BRA) 13.53 DEF. Matthew McGillivray (RSA) 9.20
HEAT 4: Cole Houshmand (USA) 12.86 DEF. Rio Waida (INA) 12.57
HEAT 5: Griffin Colapinto (USA) 11.83 DEF. Alejo Muniz (BRA) 9.20
HEAT 6: Joao Chianca (BRA) 11.00 DEF. Joel Vaughan (AUS) 10.77
HEAT 7: Barron Mamiya (HAW) 12.30 DEF. Seth Moniz (HAW) 7.76
HEAT 8: Connor O’Leary (JPN) 13.50 DEF. Alan Cleland (MEX) 8.66
Corona Cero Open J-Bay Women’s Quarterfinal Matchups:
HEAT 1: Gabriela Bryan (HAW) vs. Tyler Wright (AUS)
HEAT 2: Caitlin Simmers (USA) vs. Caroline Marks (USA)
HEAT 3: Molly Picklum (AUS) vs. Lakey Peterson (USA)
HEAT 4: Bettylou Sakura Johnson (HAW) vs. Isabella Nichols (AUS)
Corona Cero Open J-Bay Men’s Round of 16 Matchups:
HEAT 1: Yago Dora (BRA) vs. Joao Chianca (BRA)
HEAT 2: Jack Robinson (AUS) vs. Leonardo Fioravanti (ITA)
HEAT 3: Kanoa Igarashi (JPN) vs. Crosby Colapinto (USA)
HEAT 4: Griffin Colapinto (USA) vs. Cole Houshmand (USA)
HEAT 5: Jordy Smith (RSA) vs. Marco Mignot (FRA)
HEAT 6: Barron Mamiya (HAW) vs. Filipe Toledo (BRA)
HEAT 7: Italo Ferreira (BRA) vs. Connor O’Leary (JPN)
HEAT 8: Ethan Ewing (AUS) vs. Jake Marshall (USA)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)