公益社団法人日本サーフィン連盟(NSA)は7月31日、神奈川県茅ヶ崎市と包括連携協定を締結した。スポーツ振興や次世代育成、海岸環境の保全、地域活性化など幅広い分野で連携し、サーフィンを通じた持続可能な地域づくりを目指す。NSAが自治体と包括連携協定を締結するのは全国で初めてとなる。
茅ヶ崎のサーフィン文化を未来へつなぐ新たな一歩
締結式は茅ヶ崎市役所で行われ、佐藤光市長とNSA寺尾恵一理事長が協定書に署名。会場にはNSA湘南茅ヶ崎支部の三橋一巳支部長も出席したほか、市スポーツアンバサダーを務めるプロサーファー・松田詩野がビデオメッセージを寄せ、今回の協定締結を祝福した。
今回の協定では、茅ヶ崎市とNSAがそれぞれの強みを生かしながら、スポーツ振興や人材育成、健康増進、地域活性化、環境保全、企業との共創など7つの分野で連携を進める。
2027年に市制施行80周年を迎える茅ヶ崎市は、その先の100周年も見据え、海とともに育まれてきたサーフィン文化を次世代へ継承していく考えだ。

協定のきっかけは市長と理事長の対話
会見では、全国初となる包括連携協定が実現した経緯についても明かされた。
寺尾理事長によると、きっかけは今年初め、市長とのレセプションで交わした会話だったという。
「茅ヶ崎で行われているサーフィンに関わる活動と、NSAがこれから地域で進めていきたい環境・教育・スポーツの取り組みは非常に親和性が高い。行政と連携することで、競技団体という枠を超えた活動ができるのではないか」
その後、両者で協議を重ね、NSA理事会でも議論を重ねた結果、「双方にとって意義のある取り組みになる」と判断し、今回の締結に至ったという。

環境・教育・スポーツを柱に具体的な連携を推進
協定は理念だけにとどまらず、すでに具体的な取り組みも始まっている。
6月7日に開催された「クリーン茅ヶ崎」では、NSAが特別協力として参加。全国で展開する「BEACH CLEAN ACT」と連携し、市と合同でビーチクリーン活動を実施した。今後は海岸清掃だけでなく、海洋環境教育プログラムなども共同で検討していく予定だ。
また、8月29日には市内の屋内温水プールで子ども向けの「サーフィンスポーツチャレンジ」を開催予定。
波のないプールでサーフボードに立つ体験を通じ、海に対する恐怖心を和らげながら、サーフィンや海の安全教育へとつなげる内容となる。
さらに、トップアスリートによる学校訪問やキャリア教育なども今後調整を進めていく方針が示された。
松田詩野「サーフィンを始める子どもたちが増えてほしい」
会場では、茅ヶ崎市出身で市スポーツアンバサダーを務めるパリ五輪日本代表の松田詩野がビデオメッセージを寄せた。
現在はトレーニングのため出席できなかったものの、
「私が生まれ育った茅ヶ崎市と、小さい頃からお世話になってきたNSAが包括連携協定を結ぶことをとてもうれしく思っています」とコメント。
さらに、
「サーフィンを通じて海の大切さを知る人や、サーフィンを始める子どもたちがもっと増え、茅ヶ崎がさらに元気な街になっていくことを願っています」と期待を寄せた。

「サーフィン文化」は競技だけではない
会見では、「サーフィン文化とは何か」という質問も投げかけられた。
茅ヶ崎市は、「競技としてサーフィンがあるだけではなく、仕事の前に海へ行き、サーフィンの後にカフェへ立ち寄る。そうしたライフスタイルが街の日常に自然と溶け込んでいることこそが茅ヶ崎らしさ」と説明。
サーフショップやクラブも数多く存在し、海を中心としたライフスタイルそのものが地域文化として根付いていることが、他地域にはない魅力だと語った。

市長「サーファーへの理解も深めていきたい」
佐藤市長は、サーファーへの印象についても持論を語った。
「サーファーの皆さんは、人命救助やビーチクリーン、海辺のマナーなどを特別なことではなく当たり前のように実践している。あるプロサーファーが『家の中にゴミが落ちていたら拾うでしょう』と言っていたのが印象的だった」
その上で、
「市民にもサーファーへの理解を深めてもらい、お互いをリスペクトできる街にしていきたい。行政はサーファーが活動しやすい環境を整えることが役割だ」と協定への思いを語った。

他自治体への展開も視野に
寺尾理事長は、今回の取り組みを茅ヶ崎だけにとどめる考えはないという。
「まずは茅ヶ崎モデルをしっかり形にし、それをきっかけとして他の自治体とも、それぞれの地域に合った形で包括連携協定を進めていければと考えています」
全国初となる今回の協定が、各地のサーフタウンへ広がる新たなモデルケースとなる可能性もありそうだ。

主な質疑応答
Q. なぜ茅ヶ崎市が全国初の包括連携協定の相手になったのですか。
A. 今年初めに寺尾理事長と佐藤市長が意見交換したことがきっかけ。環境活動や教育、スポーツ振興など両者が目指す方向性が一致し、理事会などで協議を重ねた結果、締結に至った。
Q. 今後予定されている具体的な取り組みは。
A. すでに6月7日に合同ビーチクリーンを実施。8月29日には屋内温水プールで子ども向けサーフィン体験会を開催予定。学校訪問や環境教育プログラムなども今後協議を進める。
Q. 他自治体との協定も検討していますか。
A. 現時点で具体的な予定はないが、茅ヶ崎モデルを成功事例とし、地域ごとの特色に合わせた連携を全国へ広げていきたい考えを示した。
Q. 茅ヶ崎市が考える「サーフィン文化」とは。
A. 競技だけでなく、海へ行き、仕事や日常生活へ戻るというライフスタイルそのもの。サーフショップやコミュニティを含め、街の日常にサーフィンが自然に根付いていることが茅ヶ崎の文化だとしている。

(THE SURF NEWS編集部)






















