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2024年パリ五輪サーフィン会場タヒチ・チョープーの地元住民が環境破壊を懸念

東京オリンピックの次の大会、2024年パリオリンピックでもサーフィンが種目として承認され、その会場がタヒチのチョープーに決定したが、ここにきてチョープーの住民がオリンピック開催に伴う、道路や橋、宿泊施設など多くのインフラ整備や観光開発について環境への影響を懸念し、意思決定段階に加わりたいと主張している。

住民は「MATA ARA IA TEAHUPOO 2024」というグループを結成、オリンピック開催について公的機関からの透明性の欠如、ゲーム開催に必要なインフラについて相談を受けていないことを主張している。

ISAと大統領の意見

2024年パリオリンピックのサーフィン競技会場として、数多くの質の高いビーチを抱えるフランス本土ではなく、タヒチのチョープを選んだ理由は、世界最高レベルのサーフィンを世界中に見せるため。

更に以下の国際サーフィン連盟(ISA)会長フェルナンド・アギーレ氏のコメントの通り、サーフィンの起源と言われているポリネシアを選んだのは、もっと深い意味があるのだ。

「私達にとってタヒチは、サーフィンというスポーツの真正性を表している。それはサーフィンのユニークな文化とライフスタイルを称えるISAの使命であると同時にポリネシアを起源としてサーフィンの長い歴史と遺産を思い起こさせてくれるのです。最終的に私達のコミットメントはアスリートとスポーツに対するものであり、チョープーが世界最高のアスリート達が輝くための素晴らしいプラットフォームを提供することに疑いの余地はありません」
ISA会長 フェルナンド・アギーレ

2020年3月、タヒチでの開催がIOCに正式承認された時、大統領はチョープーを“自然からの贈り物”と答え、以下のコメントをした。

「エコロジー、環境、持続可能な開発の原則はチョープープロジェクトの中心にある。2020年のオリンピックは持続可能な開発の推進を強化する絶好の機会となる。施設は大会後も役に立つだろう」
フランス領ポリネシア エドゥアール・フリッチ大統領

更に「ポリネシアの人々はこの贈り物を保存する義務がある。この保全には陸と海の生物多様性のサンゴ礁、ラグーン、川の保全を介して特に会場の生態系の尊重が含まれる。つまり、持続可能であるためには、2024年のオリンピック競技と組織はチョープーの会場に適応しなければいけない。チョープーの会場の自然は可能な限り維持されるだろう」 と話している。

「私達の小さな楽園が荒廃して欲しくない。母なる自然と調和した生活を続けたいんだ」
PHOTO:© WSL/Romuald Pliquet

もちろん、チョープに住む人々は、オリンピックのサーフィン会場であることを喜び、サポートもするだろうが、自分達の生活に与える影響も心配している。2024年のオリンピック終了後、自国にどのようが影響が出るのかを心配するのは当然のことだろう。

住民の懸念と対策

チョープーはこれまでにWSLによる毎年恒例のCTイベントを受け入れてきた。しかし、過去20年様々な人がこの海の経済的な活用を試みたように、住民の多くはこの大統領の声明の真の目的は「波を金儲けの道具に変えようとする政府の野心」だと感じている。

「タヒチの住民は私達の小さな楽園が荒廃して欲しくない。母なる自然と調和した生活を続けたいんだ」 と話すのは、チョープー出身でローカルサーファーのタフライ・ヘンリー。
「チョープーがオリンピック会場に選ばれたと聞いた時は誇りに思っていたけど、すぐにこのような大きなイベントが必要とする将来のインフラについて懸念したんだ」

彼はその懸念に対する策として、会場のインフラについての決定などに参加することを目的に「MATA ARA IA TEAHUPOO 2024」を立ち上げた。
10日間のオリンピックのために2車線道路、橋、一般客用の埋め立てビーチ、駐車場、オリンピック村、ヘリポートなどの開発が必要と報告されている。

特にチョープーはアウターリーフでCT開催時は特別に船での観戦体制をとっているて、五輪ではフローティング観客席の用意だけでなく、200名の関係者を収容するやぐらとそのやぐらに通ずる海底通路まで掘削する案もでていて、それによって環境が悪化することは必至だろう。

「私達は子供達のための素晴らしい遊び場を持っていて、その全てに触れて欲しくない。私達の綺麗な川がオリンピックの影響の変化することを恐れているんだ。ほんの数日間の競技の前後だけのためにね。ずっとこの場所に暮らすのは私達だけなんだから」

チョープーの住民の大多数は開発による都市化に反対している。観光客が訪れ続けるようになれば、この小さな村に広がる静けさを損なうことにも繋がりかねない。

「MATA ARA IA TEAHUPOO 2024」によるとローカルコミュニティはチョープーの魅力である環境保護の大切さを訴えている。
この村は大家族で構成されているため、住民は皆お互いを知っており、尊重して助け合う生活を送っている。
そして、チョープーを訪れる海外旅行者、サーファーは村民と同じような経験をして、自分たちも全ての人と地球の繋がりによって支えられていることを理解する。

何十年もの間、チョープーの人々はこのような精神で訪問者を歓迎してきたし、今でも自分の家を大切にしながらシンプルに同じように続けたいと思っている。
オリンピック開催による開発においてもチョープーの村はこの声が聞かれることを望んでいるのだ。

「何か問題があると思ったら、解決策を出したい。このチョープーの住民が第一にイベントに参加するのに値するのだから、私達は一緒に成し遂げたいんだ」
MATA ARA IA TEAHUPOO 2024代表 タフライ・ヘンリー

(空海)

参考記事:Teahupo’o Locals Are Voicing Environmental Concerns About Hosting Olympic Competition In 2024|World Surf League (Inertia)

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