サーフィンの原点は波、サーフボード、サーファー。ウォールストリートからほど遠いインドネシアにて Photo: WSL

サーフブランドの売買続く:ボードライダーズ社をカナダの巨大投資会社が買収

2018年1月、TSNでも報道したように、クイックシルバー系列を擁するボードライダーズ社は、ビラボン・インターナショナル社の全株式取得に踏み切った。これにより、ビラボン系列のブランドが、ボードライダーズ社のブランド・ファミリーに加わることとなり、ボードライダーズ社は下記のブランドを扱うことになった。

■ボードライダーズ社傘下のブランド
Quiksilver (クイックシルバー)
Roxy(ロキシー)
DC Shoes(DC シューズ)
Billabong(ビラボン)
RVCA(ルーカ)
Element(エレメント)
VonZipper(ボンジッパー)
Xcel(エクセル)

この巨大な販売ネットワークを持つ、世界有数のアクション・スポーツ企業の誕生から1年余り、ボードライダーズ社の投資会社であるオークツリー・キャピタル・マネジメント(Oaktree Capital Management, L.P.)が、カナダ最大の代替資産運用会社ブルックフィールド・アセット・マネジメント社(Brookfield Asset Management)に買収されることが分かった。

今年3月の米紙L.A. Timesの報道によれば、47億ドルで62%の株を買収することで商談が成立し、2029年までにはオークツリーを完全に買収するオプションを残している。買収を受けて、ニューヨーク市場でのオークツリーの株価が12%も上昇し、49ドル超えで取引されていたという。

オークツリーの共同代表であるハワード・マークス氏は「互いの企業は文化的にも、商品のラインアップも競争せず、かぶらずに補い合える」とインタビューに答えている。

サーフィン大会の開催に巨額なお金を注ぎ込んでいる会社にとって、賢い経営は死活問題である Photo: WSL/KC

今回の買収後も、オークツリーは38%の株を保有し続け、それぞれのブランドは従来通りの運営を続けるという。そのため、M&Aの専門家の見立てでは、当面はボードライダーズ社の経営体制に直接的な影響はなく、消費者への影響も今すぐにはなさそうだ。しかし、長い目で見て母体が大きくなったことで、それぞれのブランドの展開がパワーアップされるのか、それとも収縮されていくのか現在のところは不透明だ。

一人のサーファーとして、サーフブランドのオーナーがサーフィンと何ら関係のない投資家や巨大企業であることは寂しく思う反面、サーフィンが発展するためにはサーフブランドの存続と発展が不可欠だとも思う。
“You’re no use to anyone if you’re dead”(死んでしまっては誰の役にも立たない)
これはよく海外で新人消防士が叩き込まれる言葉だが、それはサーフブランドにも当てはめることができるかもしれない。どんなに大きなサーフブランドでも、破綻してしまっては何の役にもたたない。

サーフィンが五輪種目として採用され、世界中からサーフィン市場への興味関心が集まってきているなか、サーフブランド企業の売買がただのマネーゲームではなく、より良いギアの開発やイベントやサーファーなどのスポンサーにつながることを期待したい。

(ケン・ロウズ)

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