モロッコ、アンカーポイントの波。銅像はポルトガルにあるサーファーの守護神

開かれた国のサーファーは、世界を目指す(サーフトリップのすすめ)

サーフトリップのすすめ(ソロトリップ編)
長期で海外を渡り歩く:佐藤海斗

良い波と出会える確率

君に残されたサーフィンの時間はあとどのくらいだろう?これから先の人生でグッドウェーブに出会うのは何回だろうって考えたことあるかな?そもそも何才までサーフィンを続けられるのだろうか?

未来のことは誰にも分からないけれど確実なことは、サーフィンをしたくてもできなくなる日がいつか誰にでも訪れるということだ。

スーパーロングのレフトとして知られるコスタリカのパボネス。海斗の報告によるとバックサイドでもリップに当て込みやすい最高の波。なんと一本の波で2回チューブメイク!

さて、グッドウェーブとの出会はサーファーにとって最高の喜びだ。ところで、グッドウェーブって何だろう? もちろんホームでもグッドウェーブがブレイクするときはあるだろうが、ここで言いたいグッドウェーブとは、君にとってファイナルディスティネーションとなるような理想の波のこと。例えればサーフムービーに登場するようなすばらしいブレイクか、もしくはいつか訪れてみたい秘境の波のことかもしれない。君はその夢の波でサーフしたことはある?それともそこへ行く具体的な計画は?そんなこと夢のまた夢と思っていないだろうか?

日本でグッドウェーブに出会うチャンスは少ない。それは気象学や地勢学でも証明できる。波の少ない日本に住み、グッドウェーブにたくさん出会いたいと思ったら、自ら波の豊富な地域へ向かうのが最善だ。悲しいことだけど、日本で波が来るのを待っているだけではタイムアウトかもしれない。君に許された時間には限りがある。その時間は、まだ若い君が予想するよりも、ずっと短いと思ってまちがいない。

エルサルバドルのエル・スンザル、ISA世界大会の試合会場となった。ここでは一泊7ドルのサーファーズインに1週間ステイしたという佐藤海斗。エル・スンザルにはポイントブレイクもあり、そこは長めのボードが合い初中級サーファーでも楽しむことができる

だから今すぐに旅立つべき、とは言わないまでも、夢物語とは思わないで一歩を踏みだそう。君の理想の波へと照準を合わせ、準備をはじめよう。コロナウイルスによるパンデミックもいずれ収束するときがくる。だから今なにをなすべきかを考えて実行しよう。そうすれば世界のグッドウェーブは、君が思っているよりも意外と身近なところにあることに気づくはず。

パナマのサンタカタリナも良い波だった。1週間滞在してずっとこんなコンデション、ハイタイドになるとレフトも出現する。海斗のホームブレイクにも似ている波だという

さて、この記事では、半年を掛けて世界のグッドウェーブを乗りまくってきたサーファーを紹介したい。
湘南の逗子をホームとする佐藤海斗君だ。彼はプロサーファーでもなければ、サーフィン業界に関わっているわけでもないし、コンテストにも出場しない。

彼はサーフィンが大好きなだけで、波があれば海へ向かい、自分のスタイルでサーフィンを楽しんでいるいわばソウル系サーファーだ。筆者とは逗子にあるリーフブレイクでよく会うことがあり、自然と話をするようになった。しばらく顔を見ていないなと思ったら半年も海外へトリップに行っていたという。しかも中南米や北アフリカというサーフマニアックな場所にも行ってきたという。

そこで今回の『サーフトリップのすすめ』に登場してもらうことになった。サーファーとしての夢を実現するために、彼が行なった準備とその旅の思い出をインタビューと写真で語ってもらう。一読すれば、世界の波は君を待っていると実感するはず。海外でのサーフトリップを夢見ている人には良いヒントになると思う。「よーし俺も私も、コロナが終わったら行ってやる!」なんて風になったら筆者もうれしい。開かれた国に住んでいるのだから世界をめざそう!

エルサルバドルのプンタロカ、南米のジェフリーズベイと言われている波。見た目よりもずっと良い波
佐藤海斗のセルフポートレイト。逗子のリーフブレイクがホームで筆者とはそこでよく顔を合わせるサーファーつながり。スタンスはレギュラーで、コンテストは興味ないという

インタビュー:6ヶ月でカリフォルニア ― 中南米 ― ヨーロッパ ― アフリカをサーフトリップ
(カリフォルニア/コスタリカ/パナマ/エルサルバドル/フランス/ポルトガル/スペイン/モロッコ)

語り手:佐藤海斗(神奈川県逗子市在住、28才、ホームブレイクは逗子大崎)
インタビュアー:李リョウ

– サーフィンは何歳で始めたの?

中学生のときに中古のサーフボードを手に入れて、それで本格的に始めました。逗子海岸で練習しました

– 海外の波に興味が湧いたのは?

コンテストで競うのが嫌で、むしろサーフィンを純粋に楽しむ方が好きなんです。海外の波はサーフィンを始めた頃からサーフムービーや雑誌で憧れていて、いつか行ってみたいとずっと思ってました。それが実現した感じです

– 6ヶ月間、ずっと海外にいたの?その間は日本に帰ってない?

そうです。2019年の7月に日本を出発して12月に帰ってきました。だから約半年くらいです。帰ってきたらコロナのパンデミックが起こったんです

– じゃあラッキーだったね

そうですね。でも海外にいたときにコロナが起きたら帰れなくなってずっといたかもしれません、むしろその方が良かったかも、笑

ポルトガルのカリフォルニアと呼ばれるエリセイラのリベイラディラス、洗練された町でカノア五十嵐も拠点にしているようだ。波は長くてパワフルだった。ポルトガルは言葉が通じるからブラジリアンが多い。
リベイラディス、波がパワフルで短いボードでは通用しない。大西洋のグランドスゥエルをダイレクトに受けるポルトガル、同じ波がマイルドになってモロッコへ届く

– 旅行はどんな計画だったの?

中南米とヨーロッパ、それとアフリカにも行こうと思っていて、まずコスタリカへ行くチケットを捜しました。ロサンジェルス経由でコスタリカへ行くチケットを手に入れて入国したんです。行き先は決めてあっても滞在するところは行き当たりばったりでずっと通しました

– 行き先に知り合いとか、あてはあったの?

いえありません。宿は現地に着いてから探しました。エルサルバドルのサーファーズインという宿では宿代をタダにしてもらって、その代わりに留守番を頼まれました。それから、現地のロコのとこに泊まらせてもらったりもしました。一人旅だとそういうハプニングがよく起こって楽しいですよ

– 移動手段は?

基本バスで、ユーロ圏は飛行機が激安なので飛行機を使いました。
旅先ではサーフスポットに近いところに宿を取って、歩いてサーフィンに行くようにしていました。同じ宿に泊まっていた人に車に乗せてもらったり、エルサルバドルではショーツに小銭を入れて、水とサーフボードだけでバスに乗ったりもしました。

– 旅はカリフォルニアからスタートして、後半のヨーロッパへは中南米から渡ったの?

いえ、日本でLA-パリのチケットを買って持っていたんです。とにかくコスタリカに入国して90日間滞在できますから、その間にパナマやエルサルバドルへも行き、ヨーロッパはその後ですね。LAに戻ってそこからパリに向かいました。中南米の明るい人たちに囲まれて暮らしていたから、パリに行ったら人がみんな冷たく感じてこれはヤバイな、と思って、国内線に乗って南フランスへ飛びました

エルサルバドルのプンタロカでボトムターンを決める佐藤海斗 撮影はホアンというロコサーファー

– サーフボードは日本から持っていったの?

いえ、カリフォルニアに3日間滞在して、そのときにベンチュラまでレンタカーで行ってベンチュラ・サーフショップというところでフィッシュを買って、それを持ってコスタリカに入国したんです

中南米を訪れると必ず遭遇するのがトルティーヤを使った料理。ムール貝のワイン蒸しは万国共通でどこにでもある。口に合わない味でも積極的にトライするのが海外のトリップでは必要だ。海斗はモロッコでラクダの脳味噌を食べたという。味は本人に聞いてくれ

– 長期滞在のサーフトリップを計画したのはなにかきっかけがあるの?

オーストラリアにワーホリで一年ほど住んだことがあって、少し英語ができるようになって海外にも慣れて、それで日本に帰ってから金を作って中南米やヨーロッパに行こうと計画したんです

– 旅行資金はどうやって作ったの?

働いて貯めました

– いくら貯めたの?

4~5年で150万円くらいです

コスタリカ、タマリンドのロコ、フランシスコと出会い彼の家に数日居候をした海斗。一人旅は困ったときには大変だが、こういうラッキーなハプニングにもたくさん出会える。エルサルバドルでは宿で留守番をしてタダで寝泊まりしたという

– どうやって?

飲食関係の仕事をしました。飲食の仕事はまかないが出るから食事代があまり掛からないんです。それに父親と住んでいますから、衣食住の食と住は金が掛からないから貯められたんです。スネでもなんでも頼れるところはなんでも頼ったりかじったり笑

– なるほど、飲食の仕事って飯がタダだね

サーファーが集まる店で働いたり、小笠原や種子島にも行ってそこでサーフィンをしながら仕事をして稼いだこともありました。飲食関係の仕事は、大金は稼げないけど金を貯めるには都合良いんです。サーフトリップを計画している話をすると、アドバイスもいろいろしてもらいましたね。飲食関係は世界を旅してきた人が多いんですよ

自然は国の財産と考えて積極的に保護を進めるコスタリカ。政府が国民に支持されているのもうなずける

– 現在も飲食の仕事をしているの?

はい、寿司屋で働いています。寿司が握れれば世界のどこでも生きていけると思って、もう2年になります。調理師の資格と河豚の調理免許も取りました。まだ一人前ではありませんが、握れるようにはなっています。オーナーにも自分の夢を話してあります

エルサルバドル、エルスンザルのポイントブレイクへパドルアウトするサーファーたち

– じゃあ外国なら、もう寿司職人で働けるね。海外だとバーテンをしながらサーフトリップしているサーファーもけっこういる。

料理人としては日本ではぜんぜん通用しませんけれど、海外なら大丈夫かもしれないですね。海外だと、素人同然の人が板前をしていることがよくありますからね

– 旅行中に出会った波で良かったところは?

コスタリカのパボネスが超長いレフトで良かったです。一本の波で2回チューブをメイクしました。モロッコのアンカーポイントも乗りやすい波でした。チューブに入りやすくてテイクオフして待っていれば巻いてくる波です。セクションもいっぱいあるから混まないんですよ。コスタリカやパナマ、エルサルバドルでも良い波にたくさん乗りました。ポルトガルも良かったけどパワフル過ぎて荒々しい波が多かったです

コスタリカのタバコン、火山の地熱で川の水が温かい。この2人はメキシコとドイツから来たツーリストで海斗とは特になにもなかったと言っているが…

– 写真に出てくるボンザはカリフォルニアで買ったの?

あれは、ポルトガルでヤフオクみたいなサイトがあってそこで見つけました。出品者が宿の近くで、それで直接会って買ったんです

海斗が旅の途中にネットオークションで落札したボンザ。波予想や緊急時の連絡など、世界のどこにいてもインターネットが繋がれば便利だが、でも最も重要なことは君が『そのときそこにいる』こと

– ボードが壊れたときはどやって修理したの?

ソーラーレジンで小さな傷は直しましたが、フィンボックスをやっちゃったときはリペアしてもらいました

– モロッコへはどうやって行ったの?

スペインの最南端まで行ってそこからフェリーに乗ってモロッコに渡りました。その船にも乗ってみたいと以前から思っていたんです

– サーフィン以外に旅の思い出はある?

ヨーロッパの文化や歴史に興味があったからスペインのザグラダファミリアや他の大聖堂を見学しました。中南米では山をトレッキングしたり、パリでもいろいろ見物して周りました。中南米では先住民族の村に行ってガスも電気もないところに泊まったりもしましたね

– サーフィンばっかりしていると飽きちゃうからね。日本ではありえないけど、波の多い海外だとそういうことが起きる

今はインターネットで波が予想できますから、しばらく小さいなと思ったら観光や別のことで計画を立てます。海でずっと波を待たなくていいから、気分転換になりますね。良い波もずっと続くとダラけるんですよね。日本では考えられませんけど

スペインのセビーリャ大聖堂。サグラダファミリアへも行ったという。南の島でサーフィン三昧もいいけれど、ヨーロッパには魅力的な文化や歴史がある。波が小さくなったときに訪れて教養を深めるのもいい

– ニカラグアとかは治安は大丈夫だったの?

治安は驚くほど良かったですよ。みんな優しくてヤバイと思ったことはありませんでした。ラテン系の人は明るくて優しいし、私物が盗まれることもありませんでした

– ハプニングとかは?

コスタリカの銀行のATMで、出金したときにカードを抜き忘れました。パナマに入国した日で、気がついたのは数日経ってからでした

– どうなったの?

真っ青になって、どうしたら良いかわからなくて、とにかくATMを利用した銀行の支店のサイトを探してメールで事情を説明しました。そしたら奇跡的に誰かがカードを届けてくれていて、大きなトラブルにはならなかったんです

– 冷や汗ものだったね

カードを写メしてあったから、それを送ってすぐ確認がとれたのも幸いしました。あのとき紛失していたらどうなっただろうと思うとぞっとします

– 新たな計画は立てているの?

特に決めてはいないけど、南米や南アフリカそれからモルジブにも行ってみたいです。年が明けたら仕事を辞める予定なので、モロッコにショートトリップでもう一度行こうかなと思っています。コロナがそれまでにどうなっているかですけれど…

– 今日はどうもありがとうございました

モロッコの有名なアンカーポイント、ファーストブレイクにはイケイケのサーファーたちが集まっているが、手前にたくさんのセクションがあり、そこで待っても十分に波があるという。波質が超エクセレントなのでサーフボードが両足に吸い付くような不思議な感覚に海斗は襲われたという

インターネットでサーフィンの映像を見て、それが自分だったらと想像してみたらどうだろう。海外の波が別世界の話と思ってはいないだろうか?

サーフィンで大切なことは『そのときそこにいること』。理想とする波はどこにあるだろうか?そろそろ、次のセットが君に回ってきているかもしれないぞ。

文・構成:李リョウ
写真:佐藤海斗

(李リョウ)

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