生々しい傷跡が残るトンガ、ハアタフ・ビーチ Photo courtesy of Burling Family

トンガのサーフリゾートが壊滅。海底火山噴火による津波被害の全貌明らかに

1月15日に起きた海底火山の巨大噴火による津波が日本やペルーまで被害を及ぼしたことで一夜にして世界の注目を集めたトンガ。フィジーの南東に位置し、タバルアやクラウドブレイク、それにタヒチのチョープーと同じうねりを受けるのに、ここまで知られていないのはなぜだろうか?トンガのサーフシーンと、海底噴火による被害の現状を追った。

南太平洋の島国トンガ

トンガと言えば…まず「?」を思い浮かべる人が多いだろう。

ニュージーランドの北東およそ1800キロに位置するトンガは南北約800キロの海域に、大小170もの島が点在する。首都ヌクアロファがある最大の島、トンガタプ島は日本の西表島と同じぐらいの面積で、人口10万人の内約7割がトンガタプ島に住んでいる。

大きな産業はなく、国外に駐在する親戚からの送金でこの国の経済が支えられている。北部のヴァヴァウ群島を中心にホエールウォッチングやゲームフィッシングを目的に年間約9万人の観光客が訪れるが、観光業は決して盛んとは言えない。1770年代に訪れたキャプテン・クックが“Friendly Islands”と名付けるほど、人々はおおらかな性格で知られている。

トンガには手つかずの青い海と、白い砂浜がたくさん残っている Photo: K. Rhodes

トンガのサーフィン事情

近くに大陸がないためトンガの島々は四方からのうねりを受ける。南半球の冬にはニュージーランドの下を通る低気圧の力強い南うねりを受け、北半球の冬には日本を離れた低気圧の北うねりが届く。

トンガの一番メジャーなサーフポイント、ハアタフ・ビーチ Photo courtesy of Burling Family

こんな立地にも関わらず、サーフィンがまだまだ盛んではないのは単純に知られていないことに尽きるだろう。国内で一番メジャーなポイントはトンガタプ島北西部、首都ヌクアロファから車で30分ほどのハアタフビーチ。ビーチとは言え、島全体がサンゴ礁に囲まれているため、砂浜は穏やかなラグーンに面していて、サーフィンができるポイントは100メートルほど沖のリーフ。名前がついているポイントは少なくとも5箇所あり、波が浅いサンゴ礁に砕けるため、サーフィンができるのは潮が満ちている時間帯だけだ。ハアタフ周辺のポイントはうねりの向きによって表情を変え、サイズがある南うねりが入れば100メートル超えのロングライドが可能なポイントもある。

海岸線に小さなリゾートが数件あり、ヤシの木に囲まれた小さなバンガローが点在している。多くのリゾートはサーフィンを積極的に押しているわけでもなく、穏やかなラグーンでSUPやシュノーケリングを楽しむのが最大の売り。そのため、サーフポイントが混雑することはほとんどなく、サーフィン文化もまだまだ発展していない。サーフボードのレンタルやサーフグッズの販売はほとんどなく、自分で持っていく必要がある。リーフが浅いため、リペアキットも必須だ。リゾートの設備やサービスはベーシックながらもフレンドリーなため、昔ながらののんびりした雰囲気が楽しめて、一度訪れて虜になったリピーターのお客さんも多いそうだ。

海底噴火でリゾートに壊滅的な被害

2022年1月15日、トンガタプ島から65キロ離れた海底火山が大規模噴火し、首都ヌクアロファには1.2メートルの津波が押し寄せ、海岸沿いの家や道路の多くが浸水し、少なくとも3人が亡くなった。ニュースで報道される現地の映像からは津波の被害は限定的なように見えるが、サーフポイントがあるトンガタプ島北西部を襲った津波は桁違いに大きかった模様だ。傷跡を検証したトンガ政府の見解だと、その高さは15メートルにも上る可能性があると言う。

津波で建物が流され、基礎だけが残るハアタフ・ビーチ・リゾート Photo courtesy of Burling Family

海岸沿いに並ぶリゾートも甚大な被害を受け、中でもサーファーに人気のHa’atafu Beach Resortは跡形もなく津波に飲み込まれた。Surflineがリゾートを経営するバーリング家の息子アランの証言を伝えた。

「ヌクアロファの津波の映像はみんな見ていると思うけれど、北西部の海岸沿いは比べ物にならないほど大きな津波だったんだ。ハアタフでは、最初の津波は噴火の前に届いていた(大噴火の前に起こった小さな噴火によるものと思われる)。気づいたらリゾートが水浸しになっていて、その直後に噴火の巨大な爆発音が聞こえた。慌ててお客さんを避難させたけれど、逃げながらも後ろから大きな津波が押し寄せ、身一つで逃げるのが精いっぱいだった。」

また、同じくこのリゾートを経営するモアナ・バーリングはFacebookで当時の状況を振り返っている。

「お客さんを避難させた後、私達家族は波から逃げるためにマンゴーの木に登っていた。そのあと運よく家族の車に乗って、内陸に逃げることが出来たの。」

Ha’atafu Beach Resortの跡地に集まるスタッフと関係者。再建できるか、まだ未定。Photo courtesy of Burling Family

トンガの保険は自然災害が対象外のため、リゾート再建できるか未定だと言う。2020年に襲撃したカテゴリー5の台風から復興したばかりだったため、今回被害を受けた多くのリゾートは再建を諦めているそうだ。ハアタフ・ビーチ・リゾートも20人ほどの従業員を雇っていて、リゾートがなくなることで地域の雇用への影響も懸念される。

かつてのハアタフ・リゾート。噴火と津波からの復興を願っている。

ハアタフ・ビーチ・リゾートでは、経営者やスタッフを支援するためのクラウドファンディングをGoFundMeで立ち上げた。UNICEF日本赤十字社もトンガの支援を行っている。これがトンガのことを少しでも知るきっかけになれば嬉しい。

ケン・ロウズ

Ha’atafu Beach Resort Facebook:https://www.facebook.com/Haatafu-Beach-Resort-203040206393980/

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