Photo Courtesy of Madman Films

女性の新しいサーフドキュメンタリー「Girls Can’t Surf」

昨年末にトレーラーが公開され、現在はオーストラリア全土で公開されている女性のサーフィンに関する新しい映画『Girls Can’t Surf』。本作は、1980年代から1990年代初頭にかけ、歴史的に男性が支配するサーフィン業界で、女性に対する対等な扱いを求めて戦い続けたウィメンズサーファーたちのドキュメンタリーだ。

性差別や同一賃金をめぐる長年の戦いに焦点を当て、世界中の女性アスリートが直面する課題を浮き彫りにする。エンターテイメント要素を持ちながら、ジェンダー問題の理解も深められる内容に仕上がっている。

Photo Courtesy of Madman Films

80年代と90年代初頭における女性のプロサーフィン。多くの男性の中で活躍する女性も増えていたが決して尊重されていたとは言えなかった時代。ウィメンズコンテストは、メンズの昼休憩中に悪条件の小波で開催されたり、露出度の高いビキニ着用の圧力をかけられたり、賞金もわずか半分から10分の1程度だったり。

当時はまだインターネットやSNSもなく、アスリート自身が自由な表現や主張によって共感を得られるような場所もなかった。

今日、多くの女性プロサーファーが活躍するワールドツアーは、純粋に「トップレベルでハイパフォーマンスを披露して正当な評価を得たい」という強い意思を持った女性たちを中心に、30年以上の長い間地道に積み重ねていった運動によって切り開かれた結果だ。

Photo Courtesy of Madman Films

自分たちが差別されたり軽蔑されることに我慢することをやめて、女性のためのプロフェッショナルスポーツを作るために、スポンサー、ボディイメージ、セクシュアリティ、平等、排外主義などと粘り強く戦い、痛みを伴いながらサーフカルチャーの流れを自らの手で変えていったのだ。

先日公開されたトレーラー映像にも垣間見ることができるが、映画本編には豊富なアーカイブ映像とともに、毒舌とユーモアあふれる先駆者たちへのインタビューが含まれている。

「80年代は多難だったわ。ゲイだと言えば病者扱いされる時代だった。大会の広報担当からは、女子選手はもっと痩せなければ大会が失敗するとさえ言われたの。ある年“今年はウィメンズの試合は実施しません”という手紙が届いて、ビキニコンテストは継続された。その時、私たちは立ち上がらなければいけないと思ったわ。」

南アフリカのウェンディ・ボサ。ノースショアのオフザウォールにて。 Photo: joliphotos.com

監督は、トウ・サーフィンのレジェンドであるロス・クラーク・ジョーンズと、2度のワールドチャンピオンであるトム・キャロルの2人をフィーチャーしたビッグウェーブ映画「Storm Surfers 3D」のクリストファー・ネリウス。

リサ・アンダーソンやレイン・ビーチリーのほか、ジョディ・クーパー、フリーダ・ザンバ、ポーリーン・メンツァー、パム・バリッジ、ウェンディ・ボサ等が出演している。

本編は、2021年1月にパースとシドニーのフィルムフェスティバルでプレミア上映され、その後2021年3月にオーストラリア全土の映画館で公開されている。

本作の配給会社Madman Filmsの担当者によれば、日本でのリリースは未定とのこと。早く日本から視聴できることを期待したい。

この映画の公開によって、スポーツ、産業、文化を問わず、社会のあらゆる分野で女性の権利をリスペクトし守るよう促されることを願っているという。サーファーだけでなく、より幅広いオーディエンスを集められるかに注目だ。

(THE SURF NEWS編集部)

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