Image: Sud Ouest (YouTube)

WSLが採用したトランスジェンダーサーファーの方針にベサニー・ハミルトンが反対を表明

スポーツ界におけるトランスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が異なる人)の規定はオリンピックでさえ、まだ明確なものがなく、IOCは各競技団体の判断に任せるという見解を示している。

サーフィンの大会では2022年春にウエスタンオーストラリアで開催されたロングボードの大会『 WA Longboard championships』でトランスジェンダーのサーシャ・ジェーン・ローワーソン(写真最上部)が優勝
サーフィンの大会で優勝した初のトランスジェンダーとなった。

VIDEO: Trans surfer Sasha Jane Lowerson after her state title win in Western Australia

このトランスジェンダーの問題は複雑ではあるが、実際に競技に参加しているアスリートにとっては重要な問題だ。
透明性を高めるためにも、各競技の団体が独断で判断するものではなく、アスリートの意見も取り入れるべきと考える。
事実、サーフィン界ではWSLの方針に早くも反対の声が上がっている。

ISAのトランスジェンダーサーファーの方針

事の発端は2022年秋にISAがトランスジェンダーサーファーの方針を発表したこと。

主な方針では、出生時に男性として割り当てられていた選手が女性の大会に出場するには、男性ホルモンの基準となるテストステロン値が過去12ヶ月間継続して5nmol/L未満等の場合。
公平性と機会の平等という基本原則にコミットしているため、この方針はより多くの研究、情報、フィードバックによって毎年再評価されることになるとも発表された。

WSLがISAの方針に賛同

(ジェシー・マイリー・ダイヤ)
PHOTO: © WSL

ISAがトランスジェンダーサーファーの方針を発表した後、WSLが同じ方針を全ツアーで採用することを発表した。

2023年からWSLのチーフとなったジェシー・マイリー・ダイヤは彼女を含むWSL幹部とWSL最高医療責任者のアラン・マッキロップ氏が共同でこの方針に賛同することを決定したそうだ。

実際にこのトランスジェンダーに関するテストは各アスリートに任せ、WSLが検査をすることは無く、選手は自分で検査を手配、その後に最高医療責任者と内密に話をして医療文書を見せる流れになる。

オリンピックの多くの競技がトランスジェンダーに関する方針を公式に発表していない中、ISAとWSLが定めたテストステロンの基準値は世界ボート連盟と国際テニス連盟が作成した比較的規制が緩い方の方針に類似している。

逆に規制が厳しい競技は世界トライアスロンと国際自転車競技連合で、トランスジェンダーのアスリートが資格を得るために24ヶ月間2.5nmol/L以下の検査をすることを要求。
世界陸上も同じ方針を提案しており、国際水泳連盟とワールドラグビーに関してはトランスジェンダーが女子競技に出場することを実質的に禁止する方針だ。

男性ホルモンの基準となるテストステロン値について説明すると、平均的に男性は10〜35nmol/L、女性で0.5〜2.4nmol/Lの範囲だそうだ。

オリンピックサーフィンの選手選考はWSLとISAが全て行なっており、今回のトランスジェンダーサーファーの方針はイコール、オリンピックサーフィンの競技にも当てはまることになる。
但し、まだ公式に発表はされていない。

ベサニー・ハミルトンがWSLのトランスジェンダーの方針に反対を表明

今回のWSLのトランスジェンダーの方針について実際にツアーに参加している現役選手はまだ明確な意見を出していないが、世界トップレベルのサーファーであり、映画『ソウルサーファー』の大ヒットによってサーファー以外にも影響力が大きいベサニー・ハミルトンは自身のInstagramで自分の考えを述べた。

今日はWSLが発表したニュースについて取り上げたいと思う。

WSLはトランスジェンダーと呼ばれる男性の体を持つ選手を女子部門で正式に競技させることを決定したのです。WSLはオリンピックのガイドラインに従っていると言っています。
この問題に取り組む一方で、まず明確にしておきたいのは、私はどんな違いも関係なく、すべての人を愛するように努力しています。しかし、今回の件については、過去15年以上に渡ってWSLで戦ってきたプロのアスリートとして、私自身に関係しています。

このことについて意見を言いづらい立場の人達のために私は声を上げ、立ち向かわなければならないと感じているのです。現在ツアーに参加している多くの女子選手は、この新しいルールに賛成していないと思います。
そして、もし声をあげたら仲間外れにされるのではないかと恐れているのです。ということで、皆さんと一緒に考えてみたいことがあります。

このルールは、水泳や陸上など他のスポーツではどうなっているのでしょうか?
WSLの現役サーファーは、この新しいルールが可決される前に、意見、感想など自分の考えを聞かれたことがありますか?このようなホルモンに関係するルール変更の前に、CTに参加する17人の女性選手とツアーの男性選手のすべてとの話し合いを行うべきでしょう。

誰かが本当に男性または女性であることを示すべきですか?
シンプルに考えて誰がこの大きな変化を推進しているのでしょうか?
スポーツとしてのサーフィンを向上させるために行うのですか?
ウィメンズサーフィンのためになるのですか?
もし、そうならどのように?
ホルモン規則を決めた人は、どのようにテストステロン値の12ヶ月のテストが公正で合法的な基準になるという結論に至ったのでしょうか?

今回のWSLの声明ではトランスジェンダーの男性が女性と競い合うことについてだけ言及しており、トランスジェンダーの女性が男性と競い合うことには言及していません。個人的に考える最善の解決策は、すべてのケースに公正な機会を持つことができるように、別の部門を作成することだと思います。

この大きな変化を許し、基準が受け入れられたまま進んだとして、15年後、20年後にレディースサーフィンの未来がどうなっているのかを想像するのはとても難しいことだと思うのです。
ランニングや水泳などの女性スポーツでは、男性の身体が優位であることを垣間見ることができます。

もし、私の娘がサーフィンやその他のスポーツで競技をするようになったら。そして、すべての若い世代の女性たちが、そのスポーツで最高の女性になるために、明るく有望な機会を得られるように願っています。

もしこのルールが制定されるなら、今後私がWSLの大会に参戦することもサポートすることもありません。ご視聴ありがとうございました。

このべサニーの投稿は大きな反響を呼び、ケリー・スレーター、シェーン・ドリアンを始め、多くの著名人がべサニーの意見に賛同している。
今後、波紋が広がる可能性もあるだろう。

世界を目指す日本人サーファーにも関係するこの問題をあなたはどう考える?

(空海)

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