F+031号の表紙を飾るパーコ(2018年)

「静か…でもパワフルなサーフィンがパーコのスタイル」-F+

波情報BCMの会員特典「BCM x F+ 2022年カレンダー」では2001年から2021年までのワールドチャンピオンを紹介。各月の採用写真について解説するF+つのだゆき編集長オリジナルコラム企画を、THE SURF NEWSでは特別に翌月公開します。今回は7月を飾ったジョエル・パーキンソンについて。

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F+(エフプラス)

好きだわ~、パーコちゃん。
藤子先生といえばドラえもんではなく、昭和のオバQ、パーマン世代なので、パーコと聞けばパーマン3号のパー子ちゃんで、どうしてもちゃんがついてしまう。
レール使い、カービングの帝王、何もやっていないようでものすごいことしているサーフィンスタイル、サーフィン以外でのライフスタイル、どれをとっても、好きだわ~。まさにいぶし銀だな。引退してから表舞台に全く出てこないってのも、山口百恵風で渋いとすら思ってしまう。
まぁ、半分以上は妄想なんだけど、その行動を見ていればその人となりは理解できるわけで、この人はサーファーとしても人間としても、実にカッコイイと思うのだよ。

1999年、Jベイでワイルドカードで優勝したときのもの Photo: snowy

CTのシーンに初めて存在をアピールしたのは1999年、ワイルドカードでJベイを優勝した時だ。ミック・ファニングがワイルドカードでベルズで優勝する2年前のこと。以前書いたが、Jベイのその日のコンディションはだんだん風が入ってきていて、2位になったロス・ウイリアムスのシャープでキレのあるサーフィンができなくなってきていた。そこにパーコのフローターの嵐。コンディションが変わらなければあの試合はロスだったと今でも思うけど、23年前、フローターはまだ若者の新しい技と言えたころで、オンショアで荒れたJベイのクローズセクションを面白いようにフローターで攻めていたのが記憶に残っている。当時18歳。

2003年、日本の新島でCTが行われたとき、それに先駆けて東京で開催されたビラボンのイベントの時。オッキーのコメントに大ウケしてるんだと思う。手前からタジ・バロウ、オッキー、カラニ・ロブ、パーコ、隠れて見えないけどアンディ、当時のアンディのGF。確かこの新島のあとにふたりは別れて、翌年には奥さんになるリンディとの交際が始まったんだったと思う Photo: snowy
2004年、トラッスルズで。この年のロウワーではケリーを破って優勝した Photo: snowy

1999、2001と2度のワールドジュニアのタイトルを取り、2001年にCTのルーキーイヤーを迎える。順風満帆のはずだったが、そこから12年もの長いワールドタイトルへの道がスタートすることになる。2012年に念願のタイトルを取るまで、2002、2004(アンディ)、2009(ミック)、2011(ケリー)に次いで2位を4回と、ずっと惜しいところでタイトルを逃し続けた。まぁ、タイミング的にちょうどケリーの第2次黄金期に当たっていて、アンディ・ケリー、ケリー・ミック間のタイトル往復をがっちり食らった感じだと思う。当時から、いつかはタイトルを取るべき選手だとずっと言われていたので、それは誰もが認め、祝福したタイトルだったといえる。

2006年のflow024号表紙

取れそうで取れなかったタイトルだったが、その力の入っていないスタイルがジャッジに、何もしていないと誤解されているのではないか、ともいわれていた。もっと一生懸命やってるように見せたらいいのに、みたいな。これは90年代にロブ・マチャドも同じように言われていたのだけど、なんだろうね、ガツガツ感というか、エイヤッ、って感じというか、力いっぱいやってる感がないスタイル。でもスプレーとかレールワークとかしっかり見ていれば、なまじゴリゴリやってる人よりずっとすごいサーフィンなのだ。ただ実際問題、けっこうジャッジはだまされてるかも、と思うことはあった。当時のインタビューでこのことを聞かれるとパーコは、自分的にはその瞬間その瞬間、これ以上ハードにできないところまでやってる、と答えていた。ロブも全く同じ答え。それが彼らのスタイルなのだ。昔のジョンジョンもそんな感じだったかな。

2009年、キラでファイナルデーとなったGCで優勝 Photo: snowy
2009年、Jベイで優勝 Photo: snowy
2010年のベルズは仲良しのミックとのファイナルを征した Photo: snowy
2013年ベルズ。こういった止める系の技でも最後までレールなので、ラインに角がない。これってすごいことなんです Photo: snowy

90年代序盤からずっと、2010年ぐらいまで、ケリーが技術的には世界一サーフィンが上手かったといえるし、そこに疑問の余地はない。しかし、2011年ぐらいから、実はパーコのほうが上手いんじゃないか、と私は思い始めていた。身体のどこにも力が入っていないように見えるスタイルから繰り出す、パワフルで重たいカービング、絶妙なレールワーク、その技術の高さがようやく日の目を見たのが2012年のワールドタイトルだった。

2013年パイプで、親友のミックにワールドタイトルのカップを渡す Photo: snowy

タイトルは翌2013年に親友のミックに渡るのだけど、パイプの表彰台でカップを手渡す時に、「お前のモンだよ」と言っていたのをステージ下で聞いた。もうね、この辺もカッコイイ。

2011年、F+004号の表紙

私生活ではデビュー当時から付き合っていたモニカと結婚、子供にも恵まれ、ファミリーマンとの呼び声が高く、現在も幸せな家庭生活を送っている。
このモニカが長身でスラっとしててカッコいい。CT選手にはひたすらキレイなモデルルックのいわゆる美人っていうGFが多い中、モニカにはカラーがあるというか、派手な華は無いけどスタイル出してる感がすごくて、私は好きだったし、よく話もした。タバコをあんなにカッコ良く吸える女って、そうはいないと思う。サーフスターになるとルックスのいい女子を点々とする選手も多い中、パーコはずっとモニカ一筋だった。その辺もね、「男」。

2013年、バリ、クラマス優勝。本当にこういうオープンフェイスのいい波だとパーコのスタイルは映える Photo: snowy
2013年、F+009号の表紙

ガツガツやってる感出さないのもそうだけど、この人はクレイム(ガッツポーズ)もほとんどしないタイプ。クレイムはけっこうジャッジがごまかされたりして、ちょっと高い点出すことがあるので、それを利用してわざとする選手や、何でもかんでもクレイムする選手も多い。選手同士の世間話では、あんなのでクレイムしたんだぜ、って揶揄の対象になることも多いけど、この人のすごいのは、彼がクレイムしたらそれは間違いなく9点後半から10点が出る。内容が正確にわかってて、本当の意味でのクレイムしかしないのだ。しかも地味目に(笑)。
まぁ、2番だった年に最近の選手のようにもっともっとクレイムしてれば、勝ってたのかもな。私は個人的に派手なクレイムは好きになれないし、できればジャッジもクレイムにごまかされないでほしいといつも思う。
脱力スタイルといい、クレイムしないで淡々と、すごいことをさも簡単そうにやってしまうことといい、けっこう損してる感は否めない。でも見る人は見てるし、わかる人にはわかるわけで、男は黙って……なのだな。

2017年ベルズ。まさに、ザ・カーブ Photo: snowy
2018年ハワイのパイプで引退。オッキー、ミック、ディーン・モリソンのビーチキャリー。後ろでは板を持っているのはジャクソン・ドリアンでは?

今でもパーコちゃんのサーフィン見たいなぁ、と思う。ガブやジョンジョンの21世紀のテクニックもいいけど、昨今のバタついたうるさいサーフィンは、ちょっともういいかな。
あの優雅さ、継ぎ目のない滑らかなラインどり、スタイル、しっかり足でやってる正確なレールコントロール……静かな、でもパワフルなサーフィン、それを体現したのがパーコのスタイルだと思う。
サーフィンって優雅で美しくて激しいものであるべきだと私は思うし、そういうサーフィンこそ完成度が高いと思う。カドのない滑らかなラインって、作るの本当に難しいものだから、もっと評価されるべきだ。

とまぁ、こちら側の勝手な思い込みと美学の押し付けかもしれないけど、見てても話してても、ジョエル・パーキンソン、男、硬派。そういう風にしか感じられないので、好きだわ~、パーコちゃん。

カレンダーの写真はタイトルを取った年、2012年のベルズ。サブカットはパイプでのワールドタイトル表彰式のもの。

F+編集長つのだゆき

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