海外サーフメディアの変革続く、Stabが生き残りをかけて挑戦

最後にサーフィンの写真をゆっくり眺めたのはいつだろうか?

TSN読者の中には、雑誌からポスターを抜いて部屋の壁に貼ったりした世代の人が多いではないだろうか。筆者は若いころ、お小遣いで買った雑誌は表紙から背表紙まで何回も読んで、好きなサーファーの言葉や好きな写真のキャプションを暗記したことを思い出す。

あれからサーフメディアが変わったのなんのって。

近年はSNSやVlogの普及に伴い雑誌の需要が減り、多くの歴史あるサーフィン専門誌が廃刊に追い込まれた。海外の有名どころでは『Transworld Surf』や『Surfing』、そして2020年には『Surfer』がスタッフを解雇し事実上の廃刊となっている。

一方で生き残りをかけた大胆な策を取ったメディアもある。サーフィンウェブメディアの代表格『Stab』は12月に突然、有料のプレミアム購読を発表した。その理由と狙いを見てみよう。

Stabが有料購読に踏み切った背景

オーストラリアとカリフォルニアにオフィスがあるStabでは以前から有料購読の案が出ていたが、コロナの影響で前倒しになったという。Stabの創設者でありCEOのサム・マッキントッシュは有料購読に踏み切った理由を同サイト上で以下のように説明した。

「GoogleやFacebookがデジタル広告市場の収益の大半を独占するなか、一般の無料メディアにとって将来への展望が明るくない。広告収入に依存するビジネスモデルでは、シャークアタックやヌードサーフィンなどの過激な写真でクリック数を稼がざるを得ないのが現状だ。

お金を払って雑誌を買うのが当たり前だった時代は二度と戻らないだろう。WSLやRedBullのように財力がある企業は自分たちのアスリートを宣伝するために動画を無料で提供しているが、独立したメディアとして作るにはお金と労力がかかりすぎて、とても無料ではやっていられない。

一部のコンテンツを有料にし始めてから気づいたのは、質の高いコンテンツを見るためにならお金を惜しまないコアな層がいること。Stabはこの層に対象をシフトすることにした。有料購読の道はStabの存続をかけた大きな賭けだ。生き残るための実力があるのか。それとも自分たちの終わりを速めているだけなのか。時がたてばわかるだろう。」Here’s why Stab is going to a subscription modelより一部抜粋)

人気企画「Stab in the Dark」は次回からプレミアム購読者のみが視聴可となる

プレミアム購読の形

一般的なサーフニュースは今まで通り無料で提供される予定だ。プレミアムを購読したユーザーには「Stab in the Dark」 「Electric Acid Surfboard Test」「Stab High」 などオリジナルコンテンツが見放題。今まではこれらの動画は時間差で無料公開されてきたが、今後はプレミアムの購読者に限定されるようだ。

そして動画だけでなく、ジャーナリズムなどにも力を入れて、読み物コンテンツもより充実する。Surfer元編集長のテイラー・ポールなど実力あるライターやMayhemのマット・バイオロスなど著名人によるコンテンツ提供も予定しているらしい。

このニュースにがっかりして離れるユーザーも多いだろうが、より良いコンテンツを得るためになら喜んで購読してくれるユーザーもいるはず。そういう人たちの支えがあって、Stabでは独自の高品質なコンテンツを提供し続ようとしている。

サーフィンメディアの今後

コロナで良くも悪くも時間ができた人が増え、日々のストレスから解放される趣味としてサーフィンに興味をもった人が多いのではないだろうか。サーフボードなどハードウェアの需要が高まるなか、サーフィンメディアもピンチでありながらも形を変えてチャンスに変えられるかもしれない。

日本国内では発行頻度を減らすなどの対策を取りながら紙媒体を根気強く続けられているところもある。しかし、世界のサーフィン事情を知りたい、海外一流フォトグラファーの写真が見たい、違う視点の深い記事が読みたいなど海外メディアでしか得られないものもある。広告からの収入が減るなかで、質の高いサーフィンメディアを生かすも殺すも消費者の行動にかかっていると言っても過言ではないかもしれない。

ケン・ロウズ

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